第305話 奴隷たちの住まうアンダートピア
ある民家の机の下・隠し扉の中。
ロードたちは床の隠し扉から梯子を下りて、篝火の灯った廊下を歩いていく。
「ありがとうさっきは助かった」
ロードがお礼を言う。
「礼なんかいらねーよ。好きでやってんだから、捕まんなくて良かったな。お前ら見たことないツラだけど新人か? いやよく見れば首輪がついてない奴隷じゃないのか?」
青年が先頭を歩きながら振り返る。
「ああ……オレはロード、勇者だ」
「オレはハズレ、この娘はスワン」
「ロード、ハズレ、スワン覚えてられっかなー、オレはオハバリだ」
「オハバリこの街の名前を聞いてもいいか?」
「この街の名前か確かハラパだったはず」
「ハラパか」
「にしても旅人なんて珍しいな……こんなところに何しに来たんだよ」
「人探しだ」
「ああ、誰か奴隷にされて助けに来たってことか?」
「そうじゃないけど……」
「オハバリ、この廊下は何だ? キミが掘ったのか?」
「ここはオレたちのような、地上の生活に耐えられなくなって逃げて来た奴らが隠れる場所アンダートピアだ。大昔からあったところをたまたまオレが掘り進んでいたら見つけた」
「地上から逃げて来た?」
ロードが確認する。
「オハバリ、キミはまさか……」
ハズレがそのガッチリとはめられた首輪を見つめる。
「ああ……奴隷だよ」
軽い調子で言うオハバリ。
▼ ▼ ▼
アンダートピア・奴隷たちのたまり場。
隅っこで座る者、横になって眠る者、談義している者たちが集まった場所に着いた。
「この人達も皆……」
ロードがポツリと呟く。
「ここにいる奴らは皆奴隷だよ」
「こんなにいるのか?」
ハズレが数百人にも及ぶ数を見て驚愕する。
「何言ってんの……地上はもっといるぜこれの何百倍も……ハラパって街はフォックスグリードの奴隷収容所になっている……人身売買はもちろん強制労働も日常茶飯事さ……上にでっけー建物があったろ、あれに何万人もの奴隷が自由を奪われ、物の様に扱われている」
「物……」
ロードが言う。
「ここにいる者たちはその運命から助かった訳か、キミの功績だな」
ハズレが褒める。
「そうでもねーよ、最近奴隷が消えてるのが気付かれ出して王都からゲロベルデが大軍を率いて捜索に来やがった。見つかるのも時間の問題さ」
オハバリは奴隷広場の中央に立つ。
「う……う……」
「――!!」
ロードが呻く男に気づく。
「大丈夫か?」
ロードは男に近づいていく。
この時、
(この世界に来て何度目だ? こういうロードを見るのは……)
ハズレは思っていた。
ロードは男の怪我を治療した。
「い、痛くなくなった。ありがとう」
「他に怪我人はいないか?」
ロードは男に訊く。
「あ、あっちに……」
男が指さすとロードはすぐに駆け寄っていく。
「何だアイツ……何したんだ?」
「えっとロードは医者なんだよ」
ハズレが適当に答える。
「そうか……初めて見た……ああやってやるのかさっぱり分からん」
目を輝かせるオハバリ。
「生命力を分けてるだけだよ」
ハズレが答える。
「ところでオハバリ、キミはこれからどうする?
「ゲロベルデが来たからな……ほとぼりが冷めるのを待つか、何とかして脱出するか」
「だったらオレたちが来た抜け道を使ってくれ」
「何!? そんなのがあるのか!?」
「でなきゃ入って来られないだろ」
ハズレがスワンを毛布の上に寝かす。
「皆!! 聞いてくれこの人たちのおかげでハラパから出られるぞ!! オレたちは自由になれるんだ!!」
「オハバリ」「ホ、ホントか」「やった自由だ」
ざわめく奴隷たち。
「いつ出られる!! 今から出られるかハズレ!?」
「待ってくれ、こっちもまだ用がある。夜にならないと動けないし」
ハズレは興奮するオハバリを抑える。
「1日2日なら待てるから良いぞ!!」
「どうせならこの街の奴隷を全員――」
ロードは夢物語を言おうとする。
「ロード、それはやめた方がいい。この街の警備は見たろ、全員は無理だ、もし脱獄させたら多くに人間が血を流すことになるかもしれない。今回は欲張らないでくれ」
「……………………」
ロードは無力感に打ちのめされた。
「大丈夫だぜロード!! いつの日かオレが皆を自由にしてやるさ!! 何てったってオレは革命家の末裔だからな!!」
「革命家の末裔?」
「要するに弱い者の味方だ。いつかオレはそれになる」
「オハバリ、ぜひオレも革命家になりたい!!」
ロードは食い付いた。
「おう! いいな、悪い人間から弱い人間を救おうな!!」
オハバリはベシベシとロードの肩を叩く。
「ロード魔王は?」
ハズレが訊いてくる。
「ダメだ! 革命家になれない!」
ロードが即座に言う。
「えーーならねーのか!? 何だよ魔王って!?」
「魔物の王だ。噂は聞いたことないか?」
「噂?」
オハバリに魔王フリフライの説明をするロードたちであった。




