第303話 警備の厳重なハラパの街
森の茂み。
ツルバシセン団に馬を借りてやって来た場所は大きな門の前で、ロードとハズレは森の茂みから様子を伺っていた。
東に行ったというグラスを追いかけてここまで来た。
そしてスワンは眠っていた。水雲鳥になって飛び回っていた疲れがここに来て出てきたのである。
「このお姫様やっぱり無理してたな。一日中、鳥になった挙句ずっとグラスを追跡してたんだからな倒れても無理はないか」
ハズレはその腕にスワンを抱えている。
「大丈夫なのか? オレの生命力を分けるべきか?」
ロードがその穏やかな寝顔を見て言う。
「いいさ、好きなだけ寝かしておこうこの寝顔もう少し見ていたいし……それよりグラスはどうやってあの中へ入ったんだ? 関所もあるし、バリケードまで、おまけに街全体が壁に覆われてるし、警備が万全だぞ」
ハズレが疑問を述べる。
「強行突破したんじゃないのか?」
ロードが呟く。
「そんなリスクの高いことするかなぁ」
「地図はあるが、肝心の地名が読めない」
ロードが現在地を確認する。
「またロードの金貨に任せて通行するしかないか?」
「ハズレこれを見てくれ……」
ロードが地図のある地点を指差す。
「ああ、リョウさんから受け取った地図か……何を見ればいい?」
ハズレは地図を覗き込む。
「この地のバツ印だ。ハズレ何かわかるか?」
地図に表示されたその街にはバツ印がついていた。正確にはそのすぐ真横。
「手書きのバツ印か、なんだろ……盗賊の考えることだから、宝が埋まってるとか……これ宝の地図の使いまわしだったりするかもな」
「ダンジョンってことか?」
「――いや待て、この街の厳重な警備……盗賊の地図から考えると、ここは抜け道じゃないか?」
ハズレが推測する。
「抜け道? まさかグラスはここを知っていてこの街に……?」
「可能性はあるな……リョウさんたちの世話になっていたらしいし、何の用があってここに来たのかは知らないが……とにかく、このバツ印の場所に行ってみよう」
▼ ▼ ▼
バツ印の場所。
ハズレの推測通り、そこには木でできた扉があった。いわゆる抜け道だ。
「大人しく待っていてくれよ。ほらニンジン置いとくからお腹が減ったら食べるんだぞ」
ロードが借りて来た馬に話しかけていた。
「ロード行こう」
扉を前にハズレが言う。
「ああ」
ガチャリとドアノブを回すハズレ。 中は洞窟のような通路が続いていた。
「暗いな、グラスはここを通ったのか?」
「暗くても見えてるんだろ、夜行性動物みたいなやつだったし」
「ハズレ、火」
「分かった」
ハズレは松明を作ってロードに持たせる。ロードを先頭に洞窟の奥へと進んで行く。
そしてある程度進むと壁にぶち当たった。
「何だこの壁は?」
「何か仕掛けがありそうだ。調べてみる」
ハズレがコンコンと壁を叩き、触って感触を確かめる。そして壁を押し込むと――
ブロック状の壁が奥に進んで行く。それが抜け道だった。
「そうか、家屋か。うまい隠れ家だ」
ロードが先に抜け道を通り、ハズレが後に続く。ハズレはブロックを壁に戻して抜け道を隠す。
ロードたちは家屋から外へ出た。
そこは見張り台の多い街だった。そして中央にはひと際高い壁があり、中が見えないようになっていた。
「街に入ったはいいが、中の警備も厳重だな。一体何なんだここは……」
ロードが見上げて言う。
「見張りのいる塔か、街の中央に巨大な城のような施設があるがなんだ?」
ハズレも見上げて言う。
「オレたちがグラスを探してるとここの人たちに知られればどうなる?」
「間違いなく捕まります。夜スワンが起きるまで待機した方がいい。それかグラスがここの抜け道まで戻って来るのを待ち伏せするか」
「一体何しにこんな厳重な街に来たのか、ますます分からないそもそもあの足で――」
ロードが疑問を口にする中――
「ああ!!」
男性の叫びが聞こえてきた。
ロードたちはすぐさま様子を見に行く。




