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第301話 強欲王ゴスベージャスと奴隷アマノ

 ガシラ先生が一つ目の壁画を見上げて、古代文字を読み上げていく。


「これを読みし者、幾年経ったか分からぬが我の時代をここに記そう」

「我はフォックスグリードの王、ゴスベージャスによって生まれながらの奴隷なり」

「我の名はクサナギ、一町の奴隷だった者なり」

「世は強欲王ゴスべージャスによって統一された」

「世の全て、人も、財宝も、食料も、強欲王が独占した」

「我と世に生きる者は奪われ無くし貧しくなった」

「強欲王の力は強大過ぎた」

「誰も逆らえず、人は生きる為に強欲王に従わなくてはならなかった」

「奴隷時代が始まった」

「全てを手にした強欲王ではあったが」

「手に入れた物に一切の愛はなく」

「それら手にした者は人であろうと財宝であろうと食料であろうと粗末に扱い、捨て去り、失われていった」


「酷い……」


 スワンが口にする。


「その捨てた物をめぐり」

「自らの物とせんと人々は争うようになった」

「強欲王がするならば……それがこの世の掟かの様に」

「人々は他者の物を奪い、時に他者から奪われるようになっていった」

「そうしてことが続くうち、ある者たちは他者から隠れ、物を隠せるような場所を求め、探すようになる」

「その場所に仕掛けを施し、自分だけが出入りできるように隠れ家、隠し場所を作る」

「こうして出来た場所はダンジョンと呼ばれた」


「なるほどな」


 リョウが納得する。


「一方、世の全てを手にした強欲王ゴスベージャスは自らの手にした世界さえ手放してしまう」

「あるとき、強欲王は異界の存在を知り、旅に出ていくことになった」

「その際、世界の大半を強欲王に持って行かれてしまった」

「食料も、財宝も、土地も、多くの物が異界へ持って行かれ、この世界から永遠に失われていった」

「以前よりも貧しさに見舞われた世界を残し、強欲王は我の知ること50年未だに戻っては来ていない」

「そして強欲王の消失により各地で新たな独裁者が強欲王を習い、同じことをしているが」

「反乱を起こし成功した奴隷たちもいる」

「その奴隷は大半が自由に生きる為、盗賊に身を投じている」


「これがこの世界の歴史」


 スワンが驚愕する。


「欲深き溝って言うのは、もしかして強欲王が持ち去ったってことなのか?」


 ハズレが推測する。


「つまり、その強欲王が全ての原因か……」


 ロードが訊いてみる。


「そう言うことになるな」


 ガシラ先生はそう言う。


((((途中から意味わかんねぇ))))


 リョウ、マテヨ、オテダシ、フセルは意味がわかってなかった。


「この世界の貧しさを解決するには強欲王を探し出さないと……」


 ロードが言う。


「異界、オレたちのように異世界に行ったのか。千年も前の話だろ、無理だ、探し出せるわけがない」


 ハズレが答える。


「何とかならないものか」


「待て、まだこのクサナギという者の文は続いておるぞ」


 ガシラ先生が一呼吸おいて、


「そしてこれより記すことは、我クサナギが成しえなかったこと」

「これを読む者よ。どうか、我の代わりに成す者として読んでほしい」

「この世界を救うであろう、その役目を果たして欲しい」


「――――!!!?」


 ロードは驚いた。


「そんな手が本当に?」


 スワンが訊く。


「先生続きを……」


「喋り疲れて来たが止むおえん」


 ゴホゴホッと咳をして続きを読む。


「まず、我、クサナギの友である。アマノについて書き記す」

「彼は我と同じくある町で奴隷として生まれてきた男だった」

「他よりも強い身体を有していた彼だが、トラブルは起こさず、奴隷という束縛からは抜け出せない性格だった」

「しかし、ある時、地中より掘り当てた宝石を手にし、その意志は覚醒する」

「これは自分の物を誰にも渡さないと強欲王ゴスベージャスに反旗の意を見せた」

「それからというもの、アマノには不思議の力が芽生えた」

「その力はまるで天がアマノに強欲王と戦えと運命づけられたかのように強力なものだった」

「彼の親、友は強欲王に酷使され死んでしまう」

「恋人までも失うわけにはいかないという恐れにも似た闘志がアマノを決意させる」

「彼は強欲王に戦いを挑んだ」

「その戦いの末、世界を奪った強欲王からほんの少しの世界の希望を取り戻したのだ」

「しかし強欲王を葬り去ることは出来ず、それどころか瀕死の重傷を受けた」

「アマノは奪ったソレを持ち逃げ去った」

「二度と、我の元へも恋人の元へも帰らなかったが、強欲王から持ち去った物はある場所、アマノが作ったダンジョンに隠された」

「これを読みし者よ我は果たせなかった」

「アマノが強欲王から持ち去った希望の物を手にすれば人々は奪い合いをやめることだろう」

「さすれば世界が変わることだろう」

「唯一の手掛かりである地図を我の子に託そう」

「何年かかるか分からないが、どうか今だ世界が貧困に見舞われているのなら」

「その地図を見つけ世界のどこかにある希望のダンジョンを探して欲しい」

「そして強欲王なきこの世界を貧しさから救ってほしい」

「我、アマノと恋人、亡き友、家族の無念を晴らして欲しい」

「どうか、どうか、我らの悲願を、これを読みし者に託したい、世界を強欲王から取り戻してくれ」


 長い長い古代文はここまでだった。


「これでおしまいだ」


 ガシラ先生はそう言って長い文を読み終えた。 


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