第296話 魔王フリフライとグラスの因縁
ロッカーライがドリドリム団戦かっている時、グラスとロードも一戦交えていた。
その剣の柄を咥えたままのグラス、その剣の刃を咥えたままのロード。
グラスは片方の足の靴を脱ぎ捨て、足元に落ちていた剣を足の指に挟む。
サッと剣を振って来るとロードは後ろへ下がっていく。
「グラス、これだけは言わせてくれ」
「言うな、黙って死ね」
剣を咥え直し、指から剣を離すグラス。
「ありがとう」
唐突にロードはお礼を言った。
「ハァア!!」
「お前の悪態を何度も聞いたおかげで……オレは盗賊団の気を引き、ここまで来られた。今頃ハズレとスワンたちは皆を連れて脱出している頃だろう。お前のおかげだ。ありがとう」
「礼を言うな!! 気分が悪いんだよ!!」
発言と同時に咥えていた剣をロードに飛ばす。
ロードは両手で飛んできた剣の刃をバシッと受け止めた。
「いや、最後まで言わせてくれ」
「くどい!!」
グラスが走り込んでくる。そしてロードに頭突きを叩き込む。
「ぐう……」
両者額から血を流す。
「テメーだけは、殺さなきゃ治まんねー!!」
グラスが吠える。その時――
ダンダンと足を音を鳴らしてこちらにやって来るロッカーライ。
「見つけたぞ!! グラス!!」
ズダンと前足でグラスを潰して来る。
そして後方に下がり避けるグラス。
「邪魔すんじゃねー爆音やろー!!」
グラスが唾を吐く。
「黙れ!! お前が燃やした地図、アレを失ったことで魔王さまはお怒りなのだ!!」
ロッカーライが吠える。
「地図?」
ロードは引っ掛かった。
「知るかー元々オレが見つけたもんだろーが!! どうしようがオレの自由だ!!」
「黙れと言ってる!! お前たち人間に何の自由もないのだぁ!! たかが燃料風情が!! 燃やすならトロイアのエネルギー以外許さん!! それもフリフライ様がお求めの物が記されているあの地図を!! やっと見つけたダンジョンの地図を!! お前はトロイアの永久機関と成れ!! 燃え尽きたくとも燃え尽きないよう配慮して、永遠に燃料として魔王様に貢献するのだぁ!!」
「成るか!! ふざけんなぁ!!」
グラスが吠える。
「なるのだぁ!! ロックスター!!」
ロッカーライは岩のたてがみを、顔を覆うように折りたたんで鋭いトゲを作り出した。
そのトゲがグラスに向かって地面ごと抉っていく。
「グラス!!」
ロードが叫ぶ。
「くそが!!」
グラスはトゲを避けていた。
(まだ持つか? この手で行けるか? グラスも狙われているのなら錠を解くしかない)
その時、見張りが落とした物だろう。ロードは手錠の鍵を見つけた。
ズドドドドドと岩壁に突っ込んで行ったロッカーライ。
天井がその地響きを受けて崩れていく。瓦礫の雨が盗賊たちを襲う。
ロッカーライはトゲのたてがみを元に戻し、手足を使って岩壁を登っていく。
「アァ!!」
グラスが唸る。
「何してんだアレ」「降りてこいコラ!!」「登ってやがる」
盗賊たちがざわめく。すると一定の位置まで登ったロッカーライは岩壁から前足を離し、
「ロッククライミング!!」
上から下へと突撃した。
ズダァーーーーンと地面が割れて行き、天井からも瓦礫が降り注ぐ。
ワーーーー!! ワーーーー!! ワーーーー!! と吹っ飛んでいく盗賊たち。
ロードは手錠を外した。グラスは落ちてくる瓦礫を避けた。
「逃れおってグラス」
「――――!!」
「ロックバンド!!」
グラスに向かて咆哮が飛ぶ。
「ぐ、ぐぞが!!」
膝を折って衝撃に耐える。近くにいた盗賊たちは吹き飛ばされていく。
「オオオ!!」
ズダンと前足を地面にたたきつけ地盤を割り、地盤を飛ばすロッカーライ。
「――――!!」
その時、ロードが剣を持って瓦礫を払い退けた。
「グラスめ……運の強い」
「余計なことしやがって!!」
ロードに向かって叫ぶ。
「う、うう」
しかしグラスはうずくまった。
「グラス!!」
ロードは異変に気が付いた。
「左足を折ったのか!?」
「るせーー」
ロードがグラスを抱える。
「やめろ!!」
「言ってる場合か!! すぐここを離れろ!!」
タタタタっと安全な場所へ走り去っていくロードだった。
「待てグラス!!」
走り出そうとしたその時、ズガガガガガガガッと矢がロッカーライに振ってきた。
「どこへ行こうとしてんだ!!」
テンロウ率いる盗賊たちがまだ戦いを続けようとしていた。
「まだ命が響きを求めるか!!」
「ウオラアーーーー!!」
螺旋拳を全開にして竜巻を起こすテンロウ。
「ぬう……」
竜巻に足を取られるロッカーライだった。
▼ ▼ ▼
岩穴。
抱えていたグラスを降ろすロード。
「少しだけここで待っていてくれ……奴を先に倒して来る。その後すぐに足を治してやる。すぐに終わらせるから待ってるんだぞグラス」
タタタッとその場を後に戦場に戻っていくロードだった。
「ちっ」
舌打ちするグラスだった。




