第295話 ロードvsグラス
「テメーら何してる!! さっさと立て!!」
ダイシンが盗賊団員を焚きつけた。
「けどダイシンさん」「こんなデケェ魔物なんて」「かなわねーよ」「こ、腰が抜けちまった」
ドリドリム団は獅子の魔物を前に怯えていた。
そこで螺旋拳をギュインとドリル回転させ地面を割るテンロウ。
「立て!! 魔物ごときにしりすぐみしやがって!! そんな奴らはドリドリム団にいらねー!! 今すぐ命を渡せ!! オレがぶっ殺してやる!!」
テンロウの発言で震えあがっていた100人ぐらいの団員がムク、スクっと立ち上がっていく。
この時、
(立ち上がるか……並大抵の魔物さえ臆してしまえば動けなくなるほどの効果を持つ。我が咆哮ロックバンド。それがあの男の咆哮で全員戦う意思を見せた。野獣の王のような人間だ)
ロッカーライは思っていた。
「吠えろ!! ドリドリム団!! ヤツの命を奪い殺せ!!」
テンロウがまた吠える。
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』』』
盗賊たちは一斉にロッカーライに襲い掛かった。
「良いぞ!!」
ロッカーライは前足で盗賊たちを払い退ける。
ロッカーライの後ろからも襲い掛かっていく。
「良いぞ!!」
後ろ足で払い退ける。そしてガオンと咆哮を上げるロックバンドという技を出す。それでも盗賊たちはひるまない。
「恐れなき、熱き命がこれほどに……我が命も奮い立つ!! いきり立つ!! そそり立つ!! 立つ!!」
地盤を叩くロッカーライだった。
倒れていた団員に向かって瓦礫が飛んで来る。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「――――」
ロードが掴んでその場から連れ出した。こうして瓦礫にぶつかることを回避できた。
「無事か」
ロードは男に言う。
「テメークソガキ触んなぁ!! あの魔物やろーぶっ殺してやる」
男は戦場へと戻っていった。
「やめろ!! 死ぬぞ!!」
ロードの言葉に耳を傾けない。
タタタタタタッとロードの耳に走ってくる音が聞こえた。
ロードは瞬間的に足元にあった剣を蹴り上げ、口で咥えた。
ガキンッという音が響き渡る。走って来た者の正体はグラスで口に剣を咥えている。
両者は剣を咥えてつばぜり合いをしていた。
グラスが剣を落とす。そうすると膝で剣の柄を押し込みロードに刺突しようとする。
ロードは下にもぐって躱す。グラスは押し込んだ剣を再び口に咥える。
ロードはすぐに振り返るが、その瞬間グラスは足を振り上げて地面の土を顔面に食らわせる。
目つぶしが成功したと思い込んだグラスが口に咥えた剣で攻撃するが、ロードは上にジャンプして躱す。
「――――!!」
負けずとグラスも空中へ跳ぶ。グルンと前回りして足による蹴りを放つ。
ロードはグラスの足を枷のついた両手で受け止める。そしてグラスが下の状態になりそのまま、空中でもう一方の足をロードの腹目がけて押し込む。
ロードはこれを膝を使ってガードする。その時見た。
グラスは口に咥えた剣の柄を喉の奥にして刃をロードに突き付けた。
その刃はロードの顔面を狙っていた。ロードの口元から剣が零れる。
そして、グラスは地面に背中をつけ、ロードはその上で態勢を取る。
グラスは見た。ロードが剣の刃を歯で噛み殺し抑え込んでいるのを。
ギリギリのところで攻撃を止め、両者は足を下げて地面の上に立ち上がる。
グラスの片方の足は、ロードの両手に掴まれたままだ。
ガオウとロッカーライの雄叫びが聞こえてくる。
ロードとグラスにらみ合うこと十数秒。
「あんな盗賊共まで、気に掛けるたぁ……本物の大馬鹿野郎だな。助けには行かせねぇー、どの道、剣も手も使えねーテメーはあの魔物には勝てねー。それに邪魔のいねー今こそオレにとって決着をつける時だ。ぶっ殺して返してもらうぜ。オレの命を」
グラスは柄を、ロードは刃を、口に咥えていた。
ズドンズドンっとロッカーライと盗賊団の戦いは続いている。
「やろーーーーがぁぁ!!」
テンロウが叫ぶ。
ガオンと吠えるロッカーライ。
「熱きぶつかりを感じる!!」
ロッカーライは視線を熱い戦いをしている方向へと見やる。そして知る。
「――――!?」
視界にグラスの姿を捉えた。
「奴はあの時の――」
ロッカーライはグラスを見て行動を起こそうとしていた。




