第288話 ドリドリム団のヤバさ
茂みに隠れるロードたちと盗賊団一同。
真上を通る空飛ぶ巨大木馬を見ていた。
「魔王もついにこのフォックスグリードに来やがったか……あの方角へ行くならチュードオリから離れているな」
団長リョウが真上を通り過ぎる木馬を見て言う。
「魔王フリフライ」
ロードが呟く。
「ロード今はやめておこう……あんなに空高く飛んでるし、勝ち目があるとは思えない」
スワンがロードの肩に手を置いて抑える。
「けど、放っておいたら、また何人もの人が犠牲になる」
「耐えろロード。あんな馬鹿でけーもんでも、かなりのスピードだ。追いつけねー、それに追いつけたとしても空を飛んでいてなすすべがねーーここで戦っても何一つ勝算はねーだろ」
団長リョウも矛を収めるように言う。
「人が死ぬのを耐えろというのか……」
「そうは言ってねーだが、使命感を押さえろって意味だ。この先のアリバレーにいる盗賊も魔王に好き勝手されるのはいけ好かねーはずだ。うまくすりゃー共闘して皆で奴らを叩ける。今は戦力を整えたほうがいい……確実に魔王を倒すためにもな」
「一緒に戦ってくれるのか?」
ロードが確認する。
「あったりまえだ! オレたちもエミさんに危害を加えた魔王は許せねー、必ず引導を渡してやるぜ」
リョウたち盗賊団は立ち上がった。魔王の木馬はもう去って行ったところだった。
「わかった。アリバレーに急ごう」
◆ ◆ ◆ ◆
岩穴の盗賊アジト・アリバレー。
木で作られた門を前に一人の男が馬に乗って現れた。
「――――!?」
門で見張っていた男たちが馬に乗った男に気づく。
「オレはツルバシセン団団長リョウだ! お前たちの頭に用がある! 通してくれ!」
名乗り出るリョウ。
「ダメだ! 用があるならここで言え!」「頭には会えん、おれたちが伝える!」
男たちの形相は険しかった。
「団の長同士としての話がしたいだけだ! 通せ!」
リョウは引き下がらない。
「やめときなリョウちゃん」
その時開きっぱなしの門の奥から酒瓶を持った一人の男が現れた。
「ノロシさん」
門の男たちにとってノロシは立場が上の存在だったようだ。
「どうしても会えねーか」
リョウは確認する。
「会えなくはねーよ、ただ話は出来ねーな。俺たちの頭は他人から奪うだけだ~~」
衣服の前がはだけている男だった。
「悪いことは言わねー頭の視界に入る前に消えな……今なら見なかったこと位してやるからよ」
ノロシという男が忠告する。
「分かった出直してくる」
リョウはその場から立ち去って行った。
◆ ◆ ◆ ◆
アリバレー近くの森の中。
盗賊団とロードたちは待機していた。
空はいつも通りの鉛色だった。
「奴らの頭はテンロウだ」
地べたに座るリョウが言った。
「テンロウ?」
地べたに座るロードが訊き返す。
「ああ、ドリドリム団の頭テンロウ、おそらく今の時代こいつよりヤバい盗賊はいねーー」
「どうヤバいんだ?」
地べたに腰を下ろすハズレが訊く。
「血も涙もねー鬼だ」
「もっと具体的に説明して」
三角座りのスワンが言う。
「ドリドリム団はアリバレーに拠点を構えた。何十年も盗賊を張ってる本物の荒くれ者たちだ。村を襲い、国を襲い、ありとあらゆるものを持ち去って行く。最大規模の盗賊団」
「本物の盗賊」
ハズレが呟く。
「ああ、やつらは殺人、誘拐、強奪、何でもありだ。修羅場をくぐった数、駆け引きの数、殺しの数は俺たちの比じゃねー」
リョウが語る。
「人を襲うのはあなた達も変わらない」
スワンが意見を述べる。
「私たちは生きる為に奪うだけだ……だが、ヤツらは見境なく殺す。交渉も逃走も許さず奪っていくだけ……」
マテヨが自分たちと違うということを教える。
「奴らから見らばオレたちはガキだ……オレたちなりのルールを決めている」
「だが、ヤツらにルールはない……それでやりたい放題だ」
「そいつらをまとめるテンロウは他人を一切受け付けない」
「その性格から団員以外は殺害対象だ……まともに話が出来ない」
「場合によっては団員まで殺す危険度だ」
リョウが言う。
「それに奴には団長の剱山刀のような特別な武器がある。戦いになればタダでは済まねー」
オテダシが言う。
この時、
(人が人を殺す)
スワンは怯えていた。
「戦わなければアリバレーに入れないということか?」
ロードが訊く。
「いや……入る方法ならまだある。潜入だ!」
リョウの出した提案だった。




