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第286話 グラスへのしつけ

 ざわざわと人だかりができていた。


「オイ! 道を開けろ! オレだオレのお通りだ!」


 ツルバシセン団の団長リョウが通る。あとに続くロードたち。


「――――!!」


 広場の中心部には二人の男がいた。


「誰でもいいさっさとしろ! 馬だ! 馬を持って来い! こいつをぶっ殺すぞ!」


 そこに居たのはグラスと盗賊団の一員だった。状況は男が膝をついたまま、グラスがそこに足でガッチリと胴体にしがみつき、足の指に挟んだ瓶の破片で男の喉元を狙っていた。


「やめろグラス、うちのもんを離せ!」


 団長が言う。


「だ、団長すまねぇーー食事を持って行ったらしくじった!」


「黙れ殺すぞ!! オイ! 団長さんよ!! さっさと馬を持って来いよ!!」

「どうした動け!! こいつを殺して別の奴も殺してやろーか!?」


 グラスが叫ぶ。


「このやろー調子に乗りやがって! 皆ちれーー、家に入れ……巻き込まれるぞ!!」

「オイ誰か馬を用意しろ」


 団長が野次馬たちに言い、団員の一人に馬を頼んだ。


「今取りに行ってます」


「グラスやめろ!! その人を離せ!!」


 叫んだのはロードだった。


「――!! ちっテメーか……」


 食べさせるためだったんだろう。口のマスクが外されていた。


「丁度いい、もうテメーらともおさらばだ。この鬱陶しい腕の拘束具を外せ!! 拒否したらこいつを殺す!! その辺の奴も殺す!!」


 グラスは要求を言った。


「ロードどうする?」


 ハズレが訊く。


「鍵……外すしか……」


 スワンが囁く。


「グラス――やめろ」


 あくまでロードは態度を変えない。


「聞こえてんだろ!! 鍵を外せつってんだろーが!!」


 男の喉元に刃を食い込ませる。


「ひぃーーーー!!」


「ロード鍵を――」


 ハズレの意見をロードは手で制した。


「グラスやめるんだ」


 テクテクと男とグラスの元へ歩いていく。


「舐めやがってかかしがぁーーーー!! やってやるぶっ殺してやる!!」


「どうする気だロード!!」


 ハズレが叫ぶ。


「こうなったら私が……」


 精霊の術を発動させようとするスワン。


 その時、バカラッバカラッと馬の足音が聞こえて来た。


「馬持って来ました」


「待て……」


 団長は様子を見ていた。


「オレだ。オレを殺せばお前は自由だ」


 ロードは両腕を広げてみせた。


 グラスの表情が怒りに満ちていく。


「鬱陶しい!! 気色わりーー!! 指図しやがって!! テメーだけはこのオレがぶっ殺す!!」


 その時グラスは人質を解放してロードの元まで一直線に走って来た。


『『『――――!?』』』


 盗賊たちは唖然と見ていた。


 ドッと鈍い音が炸裂した。ロードがグラスを押し倒して取り押さえたのだった。


 足をじたばたとばたつかせるグラス。


「くそやろーー!! 殺す!! ぶっ殺す!! 離せ―どけー!!」


「離さない!! どかない!!」


「死ねーーーーーー!!」


 グラスは叫び続ける。まるで敵に向かって吠える狂犬の様に、


「死なない」


「何なんだよ!! テメーは!! 何でオレを追いかけてくんだぁぁぁ!! 何で助けに来やがるんだぁぁ!!」


「当たり前だ。お前の命はオレが預かってる。その命見捨てるわけがない」


 ロードは落ち着いて口にした。


「ありがとうグラス……」


「ハァアア!!」


「オレを殺しに来てくれてありがとう……」


 ロードが自分の元へ戻って来たグラスにお礼を言った。まるでイヌに褒美を上げるように


「踏みとどまってくれてありがとう」


 人質にされていた男は無事保護された。


「くっ、くそがあああああああああ!!」


 グラスの咆哮が町中に響き渡る。


 そしてロードはグラスの上半身に馬乗りに跨ったまま、


「今日はもう寝ろ」


 ドガッと渾身の拳を打ち込み気絶させた。もうそれは夜の出来事だった。



 ▼ ▼ ▼



 チュードオリ広場。


「野次馬共戻れ! 終わりだ終わり!!」


 スワリオ副団長が仕切る。そうするとたまっていた団員たちがその場から去って行く。


「オイ、アイツはあれでいいのか?」


 リョウ団長がハズレに訊く。


「ああ、ロードなら大丈夫さ」


「ハズレせめて私たちだけでもついていた方が……」


「いや、今グラスを刺激するようなことは避けたい。ロードを信じて任せよう」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 チュードオリ・牢獄の中。

 気絶して横たわるグラスの姿があった。その身体に緑色のマントを掛けられていた。


 ▽ ▽ ▽



 手を見る。左腕の手だ。


 複数人の人が武器を持って殴りにかかってくる。


 うあああああああああああああああっと叫び声が聞こえてくる。


 一人の緑色の髪を乱雑に切った少年が膝を抱える。


「オレは……悪くねーー」


 少年は涙を流す。



 ▼ ▼ ▼



 スースーと寝息を立てるグラス。牢獄の中で大人しく眠っているようだった。


 その傍らにはロードがいた。ロードも牢獄の中で共に夜を過ごす気でいた。


 ロードは毛布を持って、眠るグラスに近づいていった。


 バサッと毛布を掛けてあげるロード。グラスに優しく接してあげた。


 ロードは牢獄の中でこう思った。


(グラスはきっと悪くない)

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