第284話 ツルバシセン団の町、チュードオリ
ツルバシセン団の町。
両側を壁に挟まれた町並み。壁に家を建てたりして何階もの建物もある。
左右の家を繋ぐロープも垂れ下がっている。梯子で壁の家に辿り着いたり、吊り橋の数も多い町だった。
「いや~~~~悪かったな~~お前ら……エミさんの友人とは知らなくてよ。危うくやっちまうところだったぜ!」
大笑いする団長はロードたちに町を案内していた。
「何笑ってんだこいつ……」
スワンが怖い顔をしている。
「もういいよスワン」
ハズレがなだめる。
「グラスを任せて本当に大丈夫か?」
ロードが尋ねる。
「ああ、お前らがここにいる間はこっちで預かっとくから、逃がしゃしねーよ」
グラスは檻に入れられているのだった。
「アイツはお前らにくれてやる。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ホントか? もうグラスから手を引くか?」
「ああ、エミさんを守った奴らだ。お前らに譲る。それに元々捕まえたのはお前らだからな」
団長は背中越しに答える。
「だったら最初っからそうしろよ」
スワンがガルルと唸る。
「スワンも悪態着くんだなーー微笑ましいーー」
ハズレはとっても笑顔になった。
「おお、団長さん! また何かしたか?」
土木作業をする男が話しかけてくる。
「おう! ひと暴れだ!」
「色々壊すんじゃねーぞ、今度やったら町から出てけよ」
「壊すな? それは無理だ! そして出て行かん断じて!」
そして町を進んで行く。
「おや団長、元気かい?」
パンを運ぶおばさんに呼び止められた。
「あったりまえよー」
「団長、今日もいい男だねー」
「そうか! アンタも美人だぜおばさん!」
そして町を進んで行く。
「団長だ、かっけーなー」
少年が憧れる。
「遊んで団長」
「悪いな今日はダメだ、また明日、誘ってくれな」
団長は子供の頭に手を置く。
「随分慕われてるな」
「うちの団長は親しみやすいからな。誰とでも対等に話してくれる。あんたたちはホント不運だったな」
髪型がオールバックの男が話しかける。
「とはいえ分かってくれ……アレでも町を仕切る人だ。簡単に他人を信じてはこの世界ですぐに食われてしまう。この町チュードリオを守るには必要なんだ……他人を疑うことが」
「守るためか……」
ロードは難しい問題だと思った。
▼ ▼ ▼
チュードリオ・酒場。
この異世界に来て初めて食事らしい食事が出て来た。肉やスープがある。
「何日ぶりだろうな。こんな料理はこの味に感動」
ハズレが涙目になる。
「どうしたスワンん食べないのか?」
ロードが訊いてみる。
「食べない……」
「何故?」
「盗賊の恵みなんていらない」
スワンがそっぽを向いて言う。
周りの席には様々な人が座っていて昼間から酒を飲んでいた。
「そんなに意地にならなくてもいいだろ」
ハズレが言う。
「スワン、またいつ食べられるか分からない……食べておくんだ」
「……………………た、食べない」
料理に顔を近づけてじーーーーっと見て涎を垂らすスワンだった。
この時、
(食べたそうに言うなよ)
ハズレは思った。
(お腹空いてないのかなぁ)
ロードは思った。
「どうしたお嬢さん食べないのか?」
対面の席に座る団長が訊いてきた。
「!!」
目が合うスワン。
「ハハハ、まぁいい、オレは好きだぜ! そういうの……意志の強い女、強情な女はな」
「さーーて食べるか……」
スワンが食事を始める。
(何だ食べるのか)
この時、
(そういう手もあったか、覚えておこう)
ハズレは考えていた。
「さぁーーーーエミさんの友人に乾杯だ! ヤロー共!」
席の上に立ち上がって周りに乾杯の音頭を取る団長。
『『『かんぱーい』』』
ツルバシセン団が団長に合わせて盛大に盛り上げる。




