第283話 誤解するツルバシセン団
エミさんから貰ったバッチを見てざわめく盗賊たち。
「ロード!! 何故名前を出した!」
ハズレがロードの肩に腕を回してくる。
「何かいけないか」
「軽率だ! こいつらは盗賊! 狙われる理由になるかもしれないエミさんが」
「――――!!」
「エミさんと言ったな」
団長が話しかけてくる。
「ち、違うエビさんだ! エビ!」
ロードが慌てて訂正する。
「エビって……」
ハズレは冷や汗をかく。
「お前ら! エミさんに何をした!」
「「えっ?」」
ロードとハズレは怒られた。
「フセル! 交代だこいつらは俺がやる! エミさんに変わってな!」
「仕方ねーいいぜ団長やっちまえーー!」
「笑って死ねると思うなよ! メイン共!」
団長と呼ばれる男が前に出て咆哮する。その手には見慣れない剣が握られていた。鎌の刃が刀身にいくつも連なった剣を構えた。
「メインになった……」
ロードが呟く。
「オイ、何か勘違いしてないか?」
ハズレがロードから離れる。
「骨まで食らってやるーーーー!! 剱山刀!!」
ダッとロードに飛び掛かる団長。そして見たこともない剣を振り下ろしてきた。
ブンと振られてきた一撃を横に移動して回避する。そのまま剱山刀とやらの刃が地面に食い込むが――――
そこから剱山刀はズドドドドドと前方に向かって無数の斬撃を荒々しく地面から攻撃をぶっ放した。
「――!! (ただの剣じゃない)」
「驚いて死ねると思うなよ!」
団長は剱山刀を横なぎにしたすると斬撃がズドドドドドドドドと荒々しく岩の壁からぶち抜いてきた。
ハズレとロードは腰を落としてその斬撃を避けた。これにはさすがのロードも鞘に引っ込めたままだったが剣を右手に持った。
「ま、待て! 急になんだ!?」
ロードは腰と足に力を入れ剱山刀と鍔ぜり合う。
「テメーらがエミさんから奪ったもんはどうでもいい、だがエミさんに危害を加えたことは許さん!」
団長と呼ばれる男が吠える。
「待て!! エミさんには何もしていない!!」
ロードは潔白を訴えた。そして数歩後ろへ下がる。
「信じられるか! 何かしなきゃそのバッチをエミさんから取れるはずがねーんだ!」
団長は剱山刀を振るう。
「エミさんの仇!」
「待て! エミさんは死んでないぞ!」
剱山刀の荒々しい一撃を避ける。
「やれ――団長!」「ぶっ殺せーー」「いや、ぶっ殺すだけじゃ足りねーよ」「犬の餌にしてやる」
この時ハズレは、
(何なんだあの無茶苦茶な武器は……)
そう思っていた。
(こんな争いより今は誤解を解かないと……)
「グラスの仲間だ! 信用ならねー!」
団長が吠えたその時――
「いい加減に――――しろ!!」
水雲鳥を解いたスワンが団長の後頭部からドロップキックをお見舞いした。
「うぐ!!」
ドサッと倒れる団長。
「――――!!」
驚くロード。
「団長!」「何だアイツは!」「き、綺麗な人だ」「くっそ、加勢するぞ」
ざわつく盗賊団たち。
「動くな!!」
団長を足蹴にするスワン。
『『『――――!!』』』
団員たちの足が止まる。
「まともに話も出来ないのか! 盗賊は!」
スワンが足蹴にする団長を叱咤する。
「お、女? 一体どこから」
団長は疑問を口にする。
「さっきから大人しく聞いていれば、勝手に話をどんどん進めて……勝手なことばかり言って、勝手に盛り上がって、私の仲間の声も聞かないで、これだから盗賊はキライだ!」
しーーーーんと話を聞く盗賊団一同。
「私の仲間はエミさんを命がけで守った! 凄い二人なんだ! そんな二人にエミさんの仇だ何だ言う連中は私が許さない! まとめてその汚れた心諸共下水に流し込んでやる!」
珍しくスワンが怒る。
ざわめく盗賊団たち。
「お嬢さん、エミさんを守ったってのは本当か?」
顔だけを上げて伏せる団長。
「どうせ盗賊は信じないだろ!」
「いや、女は別だ。信じる」
団長がきっぱり言う。
「団長!?」「出たよ団長の悪い癖」「アレで何人の女に騙されたか」「エミさんを守ったのが本当なら」「手は出せねーなー」
ざわめく外野たち。
「よし」
スワンの足を気にせず立ち上がる団長。
「こいつらは客だ! しかもエミさんの友人だ歓迎の準備をするぞ!」
「「「おおーーーー」」」
満場一致する盗賊団だった。
「何だこいつら……手のひら返しやがって」
スワンは苦い顔をする。
「スワンよくやった」
ロードが笑顔になる。
「ああ、最高だよキミは」
ハズレが褒める。
「えっ? 褒められた何で?」
スワンはきょとんとしていた。
とりあえず無事誤解は解けたのだった。




