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第282話 盗むな取るな奪うな

 ロードたちは明らかな盗賊団の集まりを見ていた。


「……フリスビ、何だアイツらは……」


 オールバックの男が口にする。


「すみません撒けませんでした」


 たれ耳のような髪形をしたフリスビが答える。


「オマエここがどこか分かっているのか? オレたちの隠れ家だぞ。それが他人に知られたということがどれほど危険か――」


「ダイジョブっすよ皆でボコれば」


「オマエは後で罰を受けろ、食事待ちの刑だ」


「どうします団長」


 青かった髪を後ろで縛った男が言う。


「ここを知られたからには手を打たないとなぁ、それよりお前に仲間がいたとはなぁ、信じらんねーぞグラス」


 団長と呼ばれた男が一歩踏み出す。


「……ちっ(仲間じゃねーよ)」


「踏み込みすぎだなオマケ共」

「ここがツルバシセン団のアジトって知って乗り込んできたのなら」

「勇ましき最後にしてやろう」

「知らずに来たなら不運だったな」

「牢にぶち込んでやるよ」


 バサバサの赤い長髪に、頭にバンドを撒いたワイルドな格好の、団長と呼ばれた男が答えた。


「ツルバシセン団?」


 ロードが口にする。


「盗賊だろうな……」


 ハズレが答える。


「最後も牢屋も勘弁だ……そこにいる男を返して欲しい」


 ロードはグラスに向かって歩きながら言う。


「そりゃダメだ」


 団長は冷徹に告げる。


「ここはオレたちの町でなぁ」

「オレたちなりのルールってのがある」

「こいつも昔はここの住人でな、そのルールを破った」

「多くの財宝、多くの食料をくすねて消えやがった」

「その返済をしてもらわなきゃいけねー」

「それなりの罰を持ってな……借りは返さねーとなー」

「行くところのないこいつの面倒を見たら、恩をあだで返しやがった」

「だったらオレたちもあだをあだで返してやらねーと収まりがつかねーんだ」


 不敵に口角を吊り上げる団長。しかし――


「返す返さない以前の問題だ」

「盗むな取るな奪うな」

「財宝も食料も元は誰かの物だったんだろう?」

「お前たち盗賊にグラスを罰していい理由はない」

「因果応報、恩もあだもないグラスを返せ」


 ロードは険しい顔で教えを説く。


「このやろー」「舐めやがって」「かんけーねーぜ」「やっちまうぞ」


 外野の盗賊が騒ぐ。


「言うじゃねーかおまけの分際で、だが、そいつはお前のルールだ」

「この町のオレたちのルールとは違う」

「ここでは、この場所では通用しない言い分だ」

「そんなにこいつが欲しければ力づくで奪えばいい」

「それがこの世界だ」

「まっ奪えればだがな……」


 団長という男の目つきが変わる。


「力づくは好きではないけど、それで納得するなら仕方がない」


 ロードは拳を構える。


「どうした、その剣は飾りか? 抜けよ」


「人を斬るための剣じゃない。救うための剣だ。使わない」


「変わった奴だフセル遊んでやれ……」


 顎である男を突き出す。


「おお団長! オイ生意気なオマケ! オレはツルバシセン団一パワーを持つフセル様だ。オレのギャラは高い!

お前の身に着けているもんは全部ひん剥いて貰っていくからな! 覚悟しろ」


 牛がらの服を着た左右の髪が角のようになった男フセルが現れた。ロードの倍以上の身長だ。


「ダメだ。大切なモノは特にダメだ」


 ロードは絆結びの腕輪を思い出す。


「それを奪うのが盗賊なんだよ!! オマケヤローー!!」


 拳を振るうフセル。しかしロードは片手で受け止めた。


 そしてぐいっと腕をひねって大男を転ばせた。


「でででで」


「――!!」


 団長が目を見開いた。


「な、なんだ?」「どうしたフセルさん」「ドジだなぁ転んじゃってあはは」


 外野は何も気づいていなかった。ロードとフセルの力の差に。


「テ、テメーー」


「グラス、返してくれないか?」


 ロードは訊いてみる。


「――ぶちのめす!!」


 フセルという大男は今度は肩でタックルに出た。しかしロードはその腹を蹴って吹っ飛ばす。


「――うっ!!」


「うわぁ!」「ぎゃあ」「ごへ!」


 外野の元まで吹き飛ばされるフセル。


「グラスを返せ」


 ロードの言うことはただ一つになった。


「団長耳を貸せ」


 その時、黒マスクの女が団長に報告する。


「何だよマテヨ」


 ヒソヒソと話す。


「小僧!! 調子に乗んなぁーー!!」


 フセルが起き上がり大きな一歩を踏み出す。


「待てフセル!」


「――――!!」


 団長からの待ったがあり止まるフセル。


「何だよ団長!! 止めんなよ!!」


「落ち着け、事情が変わったこいつに訊きたいことが出来た……」


「だったら早く済ませてくれ! こいつを今すぐぶっ飛ばして―!」


 フセルを抑える団長。そして――


「おいオマケ、そのバッチをどこで手に入れた」


 団長が目を凝らして見ていたのはロードの胸元に着けられた錆びたバッチだった。


「――!」


「あれは!?」「何であのヤローが持ってる」


 外野は騒ぎだす。


 この時、

(こいつらもバッチの意味を知っているのか)

(けど、前の様な手を使える雰囲気ではなさそうだな)

 ハズレはそう思っていた。


「エミさんから貰った」


『『『――――!?』』』


 ロードの一言に50人以上の盗賊が驚いた。ざわめき出す盗賊たち。バッチの意味がついに判明する。

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