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第278話 ダンジョンの宝の行くえ

 スワンは魔物の餌役になることを堂々と宣言した。


「――!! 待てスワン危険だ! 別の手を――」


「構えてロード、アイツがいつ来てもいいように……」


 スワンがなるべく洞窟の中央の方に移動する。


「スワン!!」


「大丈夫、上手くいく。私たちのコンビネーションは誰にも負けない。何の心配もいらない」


「……………………」


 ロードは何も言い返さなくなった。


「それにあなたが必ず守ってくれる」


 顔だけ振り向いて、ロードに指を差す。


 コクンと頷くロードだった。


 そしてニコッと笑顔を作り、オーケーサインを送るスワンだった。


 そして空洞の中央で大の字になって寝転ぶスワン。


「さぁ! 私はおいしい美しい麗しい珍しいお魚だぁ! 私は最上級品の魚肉だぁ! 食べられるモノなら食べてみろぉ!」


 フッと目を閉じ抜剣の構えを取るロード。


(待つ……静かに、ただ待つ)


 辺りはしーんと静まり返った。


 この時、隙だらけのスワンは、

(長い)

(動きがない)

(早くしろ)

(今なら食べ放題なんだぞ)

 そう思って目を閉じていた。


 しかしゆっくりと天井から垂れ下がってくる魔物。


 対してスワンは、

(やっぱり私に隙なんて無いんだ……)

 そう思っていた。


 そして魔物が口を開こうとした時――


「最初の一撃!!」


 ロードは抜剣した剣に道の秘宝玉の力を与えて、10メートルの長剣にし、伸縮自在の尻尾を斬り裂いた。


「動けスワン!!」


 その声にスワンは目を開けて、両手をすぐさま首付近の地面につけ、両足を上げて、逆上がりをするように宙へあがる。そしてうまく立ち上がった。


「ギョーーーーーー!!」


 ズズンと落ちてくる魔物。


「ロード!!」


「とどめだ!!」


 ロードは10メートルの剣を上から振り下ろして、魔物を一刀両断にして着地した。


「ギョーーーーワーーーーン!!」


 最後の断末魔を上げる魔物が霧散化していった。


「上手くいったな。スワンも怪我がなくてよかった」


「ロードとハズレがいる限り、私に隙はないも同然」


「日頃の信頼の成果だな……」


 ロードが手を出す。


「当然! 何時もロードのこと信じてるから……」


 その手をパチンと叩くスワンだった。


「さて宝を探そう……」


 松明を手にロードが行く。


「うん……向こうに道が続いているみたい……行こう」



 ▼ ▼ ▼



 ダンジョンの最奥。

 洞窟の行き止まりまで来たロードとスワンは宝とやらを探していた。そして――


「やっぱりない?」


「ああ、魔物に食われたかもしれない」


「そうかなぁ~~、あの穴見える?」


 スワンが上の方にあった洞穴を指さす。


「ん? 別の道か?」


「誰かが別の道を使って、私たちを魔物の餌にして、その隙に宝を持ち去ったのかも……例えば、あのモタナイって人とか……」


 スワンは余裕の表情を浮かべた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 森の中。

 タタタっと山を登っていくモタナイさん。その背中には大きな荷物を背負っていた。


「早く、橋へ戻らないと……」


 息を切らしながら両足で戻っていく。

 その影から精霊のジャブちゃんが行動を開始する。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 洞窟前。

 ハズレとグラスがそれぞれ木を背におとなしくしている。


「ハズレ~~~~!」


 洞窟から出て来たスワンが手を振る。そしてロードも洞窟から出てくる。


「やぁお二人さん……デートは楽しめたかい?」


「バ、バカ! やめてよハズレ」


「デート? スワンなんだそれは? 楽しかったのか?」


「聞かないでよ! デートじゃないから!」


「それでスワンどうだった?」


 ハズレが本題に入る。


「ハズレの言った通りだった……言われた通り手は打った」


「ご苦労様」


 ねぎらいの言葉をかけるハズレ。


 そこへ――


「離せーー離せーー!! 誰か! 助けてくれ!」


 モタナイさんの声がした。


「あっ来た来た」


 そこには太った大男に見える水の精霊ジャブちゃんの姿があった。肩に担がれているのはモタナイさんだった。


「ジャブ~~~~~~」


「離せーーーー!!」


「あれはジャブちゃんか?」


「そう私の守護精霊力持ちのジャブちゃんとこっちがお友達のシーちゃん」


 スワンはいつの間にか抱いていたしずく型の精霊を紹介していた。


「痛った!」


 乱暴に木に投げ捨てられたモタナイさん。


「モタナイさん?」


 ロードが確認する。


「オ、オマエら生きてたのか!?」


「ん~~~~生きてたって何かな?」


 怖い顔でモタナイさんを覗き込むスワン。


「ジャブジャブ」


「――しまった!」


 急いで口を覆い隠すモタナイさん。そして大きな袋に入った荷物を落とすジャブちゃん。その後はチョウチョを追いかけていた。


「ハズレの推測通りの男だったという訳か……」


 スワンが言う。


「――――!?」


 ロードはモタナイさんの姿を見た。するとなかったはずの手や足が今はあった。


 ことの真相が今明かされる。

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