第276話 ロードとスワンの二人っきりの冒険
暗がりの洞窟。
モタナイさんについて行くと、蝋燭で囲まれた階段があった。
「ここから先がダンジョンだ。オイラはここまでだ。くれぐれも気を付けてく」
モタナイさんが杖を置いて座り込む。
「分かった」
ロードは階段へと近づいていく。
「そこの蝋の火で松明を作るといい、階段の底は暗いそれに思っているよりも広い空間のはずだ。いつ魔物に襲われるか分からない」
(魔物か……裏切りの瞳が輝きだしたな)
「おや? 明かりを持っているのか?」
裏切りの瞳を見たモタナイさんが訊いてきた。
「いや、松明で行く」
ロードは周囲に落ちていた木の枝を束にして、蝋燭の火に近づける。すると木の枝は燃え上がった。
「よし行ってくる」
「頼んだぞ、必ず魔物を倒して宝を取って来てくれ」
モタナイさんが階段を下るロードを見守る。
その時、バシャーーバシャーーっと地面に水を巻き散らせていたスワン。
「スワン何をしている? 行こう」
ロードが振り返る。
「あっ、今行く。ジャブちゃん後はお願いね」
今しがた水を巻き散らしていた方向に手を振るスワンだった。
「シーー」「ジャブ~~」
水がプクリと膨張し、精霊のシーちゃんとジャブちゃんが顔を出した。
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階段から降りた先。
真っ暗闇の洞窟の中をロードとスワンは二人で進んで行く。
パチパチと松明の焼ける音と微かな足音が洞窟内に響き渡る。
「静かだ……裏切りの瞳が光っていなければ、魔物がいないと思い込んでしまいそうだ」
「こういう所は声が響くから叫びたくなる」
いたずら心を振るわせるスワン。
「やめてくれ」
止めるロード。
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段々と洞窟の幅も広くなっていく。それに合わせて天井も広くなっていく。
「スワンはこういう暗いところは平気か?」
「暗いだけなら一人でも大丈夫。けど、この先の道は不安になる。魔物がいるとなるととくに……今はロードと一緒だから全然平気」
「そうか……スワンは平気か」
「ロードは苦手なの?」
「一度、こんな感じの洞窟に入って道に迷って出られなくなったことがある」
「えっ! それでどうしたの?」
「外から友達のオオカミの声に導かれて何とか脱出できた。あの時は怖かった」
「そうなんだ。良かったね友達が外に居て……」
「そうだな」
「ところでどんな魔物がいると思う?」
「さぁな、けど何があろうとオレはスワンを必ず守る」
その時ロードの首筋に手を伸ばすスワン。
「――――――!?」
ピトっと冷たい手がロードの首を刺激した。
何が起きたか分からずあたふたするロード。
「どうだ……冷たいだろう私の手は……」
スワンがいたずらを仕掛けたのだった。
「ジョーダンもほどほどにしてくれ……スワンの手でよかった。魔物かと思った」
「今のはロードが悪いと思う」
くるりと背を向け髪を揺らすスワン。
「何の話だ?」
「別に……」
「オレが何かしたならごめん」
「………………(必ず守る。そう言う意味じゃない。そう言う意味じゃないんだ)」
スワンは首をブンブン振って火照った顔を冷ます。
「あーーーーもうーーーーいいから行こ!」
両手でロードの背中を押して進ませるスワン。
「なぁ、許してくれるのか?」
「いいよ、許す!」
そこでスワンはあることに気づく。
「アレ? ロードの筋肉凄くない?」
「やめろ……その触り方」
「くすぐったいか? ロードの弱点だ覚えておこう」
「とうとう知られたか、まずいな」
「そうだ! 私に逆らうと怖いからな、覚えておけよ」
二人はふざけ合いながら道を進んだ。
▼ ▼ ▼
ダンジョン内。
洞窟の奥へ到達したロードとスワン。
そこは高さがわからなくて、空間の広さも松明程度では把握しきれない場所だった。
ロードが松明を前に掲げる。しかし辺りは真っ暗闇のままだった。圧倒的に光量が足りてない。
「広い場所に出た。天井も見えないほど高い」
ロードの言葉を受け、スワンは頭上を見上げた。
「スワンはここにいてくれ、先へ進む方向を探してみる」
タタタとロードが歩いていく。
(広さ的には100メートル以上もある。天井は10メートル以上か? 壁際に沿って道を探した方が良さそうだ)
その時、何かを踏みつけた。見てみると――
(これは人骨か?)
三人分の人骨を発見した。
(魔物の仕業か? 気配はないが近いようだ)
「――――!!」
その時スワンは見た、ロードの頭上から何かが降りてくるのを――
「――後ろだ!!」
とっさに叫んだスワン。そこでロードは振り向いて見た魔物の姿を――




