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第274話 フォックスグリードの不法入国は処刑対象

 情報収集をしていたハズレが二人も元へ戻って来た。


「ハズレ」


 スワンが呼ぶ。


「ここがどういう場所か分かったか?」


 ロードが率直に訊く。


「ここは大国フォックスグリードに入るための国境、西の橋らしい」


 ハズレは話す。


「橋?」


「なんでも、底さえ見えない崖があって、その崖を越える為の巨大な橋があるそうだ」

「昔からフォックスグリードという大国は周囲を底なしの崖に囲まれた国らしい」

「下は真っ暗闇……どこまで続いているのかすら知る者はいないらしい」


 ハズレは持ち帰った情報を語る。


「地割れの影響とかで崖が出来たとか……?」


 スワンが前髪を払いながら言う。


「フォックスグリードの国境全域だぞ。そんな偶然の呼び起こした地割れがあるとは思えない」


「人為的なものなのか?」


 ロードが訊いてみる。


「分からない……が、その崖を通り抜けるための橋がここ、そしてその橋を渡るためには金銭がかかるらしい」

「フォックスグリードはここに比べて魔物も少なく盗賊も一部を除いていないらしい」


「それで皆安全な向こう側へ行きたいわけか」


 スワンが呟く。


「金銭、その為に皆、お金を貸してほしいと言っていたわけか」


「貸しても返って来ないだろうけどね……」


「それとフォックスグリードにはアリバレーという岩穴があるそうだ」


「アリバレーか……」


 ロードが考える。


「行くんでしょロード……?」


「まぁな、しかし……」


 その時――


「ホラ立て!」「お前たち難民もどけ!」「ちれちれ!」


 役人らしき男たちが、先ほど橋に向かって走って行った男を捕えていた。


「やめろ! 離せよ!」


 男は数人の役人らしき人物たちに無理矢理歩かされていた。


「何だ……?」


 ロードが訝しむ。


「もしかしてさっきの騒ぎの人?」


 散り散りになる難民たちの隙間からその姿を確認したスワンが言う。


「ああ、フォックスグリードに不法入国しようとしてたらしいな」


 ハズレも見物する。


「ひぃぃぃぃぃーーーー!! た、助けてくれ!!」


 その男には喉元に剣が突きつけられていた。


「この男は不法入国を試みた……よってフォックスグリードはこの男を敵と認識、これより処刑する」


『『『――――!!』』』


 周りの傍観者たちがざわつく。


「貴様らもこの男のようになりたくなくば、しかとその最後を目に焼き付けよ!」


「バ、馬鹿! やめろーー頼む! 命だけはーーーー!!」


 剣が上に振り上げられて、その首を切り落とさんと振り下ろされていく。


「うわあああああああああああああああああああああ!!」


 その時、剣は空を切った。捕えられていた男が突然消えたのだ。


「――――!!」


 驚く役人たち。


「オイ、居ないぞ!」「お前どこへやった!」「知らねーオレのせいじゃ」


 役人たちはもめだした。


「あそこだーー!!」


 男が消えた原因はロードにあった。ロードがその男を抱えている。振り下ろされる剣から助け出したのだった。


「お前の仕業かそいつを引き渡せ!」


「流石に処刑されるようなことはしていないだろう。許してやってくれないか?」


 ぱっと抱えていた男を解放する。


「何を! できるかそんなこと!」「さてはお前そいつの仲間だな!」「俺達を舐めやがってまとめて処刑だ」


「こいつで勘弁してくれないか?」


 ロードは懐から金貨を一枚取り出した。


「ちっ、仕方ない……」「今回だけだぞ」


 タタタタタタタタと足音を鳴らせて引き上げていく役人たち。


「何とか治まってくれたな」


 ハズレが出てきて言う。


「ロードまた人助け? 成功したんだ」


「ああ、この世界はどうやら金銭が大事みたいだから、金銭をあげれば手を引いてくれると思ったんだ」


「ふ~~ん、ちゃんと考えての行動だったんだ」


 スワンが感心する。


「ああ、それで大丈夫か?」


 助け出した男に向かって言い放つ。


「くっそーーーー! 助けなんて呼んでねーからな! 恩なんて微塵も感じねーからな! お前が勝手にやったことだ! 何もやらねーからな! あばよ!」


 男は走って去って行ってしまった。


「なっ! ありがとうくらい言えないのか!」


 スワンが怒った。


「スワンいいんだ」


「だってロードがまるでお礼目的で助けたみたいに言うから――!」


「いいんだ。あの人が無事命を散らせなかっただけで、俺は十分だ」


「ブレないなぁ……」


 スワンの表情が呆れに変わる。


「しかし、不法入国しようとしただけで処刑も異常な話だ」


 ハズレも胸を撫でおろす。


「ちっ」


 癪に触ることでもあったのかグラスは舌打ちした。

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