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第270話 その名前はグラス

 名前のない村。

 家屋には人っ子一人いないらしい。襲撃者の山嵐という家を投げつけるという技に巻き込まれなかった家にロードたちは入り込む。

 そして、緑色の襲撃者は拘束されていた。腕を背中側に回すようにして手首と、胴体と腕が密着するように縛られていた。


「――――!!」


 緑色の襲撃者は目を覚ました。ロードにぶっ飛ばされて気絶してからそう時間は経ってなかった。


「起きたか……」


 ロードがあぐらをかいて座り込む襲撃者の前に立つ。


「悪いがしばらく縛らせてもらう……もう戦いたくない、話をしよう」


 ハズレを背に立つロードはまるで暴れる動物を落ち着けるような話し方をした。


「ざっけんなぁ!! 今すぐほどけ!! 今度こそ殺す!! 絶対に殺す!!」


 襲撃者はロードを睨みつけてくる。


「オイ! 女ぁ!!」


 入り口付近にいたスワンに話しかけた。


「――――!?」


 大声にビックリするスワン。


「死にたくなかったら言う通りにしろ! こいつをほどけ!!」


「誰がお前の言うことなんか聞くか!!」


 スワンも負けず言い返した。


「死因を作ったな女!!」


 ギロリとにらみつけ、足を立てる襲撃者。この時足も拘束しておかなかったのはロードたちの甘い所だった。


 太ももを持ち上げ膝を縦にし、足を使ってダンと踏み込みスワンに向かって襲い掛かっていく。口を大きく開いて噛み殺す勢いだ。そして――


「おぐっ!!」


 そこをロードによって頭を掴まれる襲撃者。取り押さえられた。


「やろーーーー」


 取り押さえられてなおじたばたする襲撃者。


「ハズレ、スワン外へ出ろ!」


「行くぞスワン」


「う、うん」


 二人して家屋から出て行った。


「テメーーーー!! 殺す!! 離せ!! ほどけ!!」


「今のお前は人々にとって危険だ。解放は出来ない」


 それを聞いた襲撃者はさっきより暴れ出した。



 ▼ ▼ ▼



 うおおおおおおおおおおおおおおお!! という襲撃者の声が外まで響いてくる。


「「――――!!」」


 ドタバタガドゴドともの凄い物音も聞こえて来た。


「大丈夫か?」


「怖い……」


 ハズレとスワンが呟く。


 その時、彼らの背後に音もなく近づく者がいた。



 ▼ ▼ ▼



 ダンと襲撃者の背中を壁に抑え込み、喉を腕で押し付けたロード。


 そうしてようやく暴れるのを辞めた襲撃者。


「何のつもりだ……さっさと逃げれば、オレに二度と会うこともないだろーが」


「それでは他の物がお前の被害に遭う……このまま放ってはおけない」


「なら殺すんだな!! 今すぐに!!」


「殺さない! オレは人を殺さない!」


 言い合う二人。そして――


「ならば、今すぐ人を殺せるオレの出番か……」


 背後から何者かの声がした。


「――――!! 何だお前は(魔物……瞳の輝きに気が付かなかった)」


 裏切りの瞳を見ると黒く輝いていた。家に入って来たのはロードくらいの身長を持つ魔物だった。


「魔物の為の殺し屋シャリー」


 口元がタコのように飛び出した仮面をつけた。両腕が鎌状の魔物が現れた。


「お前、外の二人はどうした!!」


 襲撃者を離して剣に手を添えるロード。


「安心しろ殺害対象以外は殺さない。外の二人には気絶してもらった……用はないのでな。オレの仕事はそこにいるグラスが狙いだ」


 シャリーはグラスという名を口にした。


「テメーーなんでオレの名を!!」


「依頼人はとても協力的でなその程度のことを調べることは造作もない」


「ちっあの魔王フリフライとか言うヤツか」


(魔王フリフライだと――)


「依頼者の話はしないただ黙って殺されろ……そこの無関係な人間。外へ出ろさすれば命は保証しよう」


 魔物シャリーが入り口を開ける。


 この時、

(さっさと行けやかかし……テメーがヤツに近づいた瞬間まとめて十六本目の刃の餌食にしてやる)

 グラスはそう考えていたのだった。


「オレは殺させない」


 キリッと表情を変えるロード。


「ハァーーーー!?」


 舌を出しながらありえないものを見るかのような表情をするグラス。


「バカか! オレを助けて、テメーに何の得があるんだ! そんなにオレに殺して欲しいか! ああ!」


「黙っていろ」


「いやその男グラスが正しい……人間さえもそいつを殺したい奴は山程いるだろう。それ程の悪名、生まれながらの罪人と聞く。生きていても人にあだなす人、グラス」


「ちっ!」


「お前は全く正しくないな」


 ロードがグラスに言い放つ。


「――!!」


「殺されていい人間など、どこにもいない」


「……………………」


 グラスは目を見開いた。


「奪い合う人間がよく言ったものだ……よもや自ら命を差し出すとは……では仲良く逝くがいい」


 魔物シャリーは両腕の鎌を構えた。ロードもそれに合わせて二本の剣に手を添え抜剣の準備をする。


 勝負は一瞬。


 グラスは冷や汗をかき。ロードは瞬きすらしない。魔物シャリーは時が来るまで動かない。


 そして木の葉が数枚家の中に入って来た。


 ズバン!! ロードとシャリーが交わった。


 斬られた方は魔物シャリーだった。断末魔さえ上げずに霧散化していく。


 チャキッと二本の剣を鞘に納めていく。


「テメーーーー」


「――!」


「ふざけんなあ!! さっきから何なんだぁ! 恩を売ったつもりか!! 助けたつもりか!! このオレをどうするつもりだ!!」


「グラスという名前だそうだな……」


 ロードは狂犬のような男に近づいていく。


「オレの旅について来い」


 ロードは驚きの提案をした。


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