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第256話 魔物ベアラベとの交戦

 森の中。

 物色男に案内されてやって来たのは、何やら遺跡の入り口みたいな場所だった。


「ここだ……」


 物色男がそう言う。


「「「――!!」」」


 その誰かの手によってつくられたかのような入り口に三者は驚いた。


「なんだ……ここは……?」


 ロードが呟く。


「ここはって……どこからどう見てもダンジョンだろ? 知らねーのか?」


「ダンジョン?」


 スワンが問い返す。


「ダンジョンつーのは地下深くに続く迷宮のことだ。様々な仕掛けが施してあったり、いくつもの部屋があったり、危険があったり、そして最後、最奥まで辿り着き得られる宝がある……それがダンジョンだ」


「宝か……」


 ハズレが不敵に笑う。


「金銀財宝さえ手に入れば借金返済も早くなる」


 スワンがワクワクしている。


「案内はしたからな! 俺はもう行く」


 物色男が立ち去ろうとする。


「ああ、案内感謝する」


 ロードの感謝の言葉を聞くと、物色男はしてやったりという顔を見せる。とてつもない悪顔は3人には見えない。


 ロードは右手に裏切りの瞳という宝石をぶら下げてダンジョン入り口にまで進んで行く。


「居るな……」


 カァーーっと裏切りの瞳が黒く輝きだす。魔物がいるのだ。


「ダンジョンか……こんなところに住み付く魔物なら想像豊富だ。何がいるのやら……」


 ロードがダンジョンの入り口に手を掛ける。高さ4メートル、横幅4メートルくらいの入り口だ。


「どうするスワン! 荷船に戻って待っているか!?」


 入り口にあった岩の山を登りながら進みゆくハズレ。


「見くびらないで……わたしだって戦える。行く」


 スワンも二人の後に続き、ダンジョン内へと入って行く。



 ▼ ▼ ▼



 ダンジョン内部。

 どこまでも続く階段、穴の開いた床、岩場の地下水を抜けて、最奥へとたどり着く。

 ここまで魔物と出会わなかったが、大きな入り口に達すると、入り口を背にロードがその内部を見やる。

 中には魔物がいた。それはグーーグーー寝息を立てている大きなクマのような魔物だった。


「ベアラベ」


 ロードがその姿を確認して言う。


「何ソレ……?」


 スワンは初めて聞く名前だったようだ。


「動く者を無差別に襲う魔物さ、夜行性でたいてい昼間は寝床で眠っている」


 ハズレが解説する。


「凶暴な魔物だ……死人が出るのも無理はないが……ベアラベに会ってあの程度の傷で済むはずがない。さっきの死者たちは盗賊とやらの仕業だったみたいだ」


 ロードが分析する。


「そもそもお腹に剣が刺さってたしね」


 ロードは右腰に携えた青き剣を抜剣し、ベアラベに向ける。


「オレが牽制する後に続いてくれ……」


「オーケー分かった」


「任せてロード」


「行くぞ、ミチル!」


 青き剣に宿った精霊ミチルはロードの声に答え、ロードをその身体ごとギュンと運び飛んで行く。狙うはベアラベ。


 ズバッと寝ているベアラベの右腕を剣が掠めた。


「グオオ……」


 その一撃でベアラベは目を覚まし襲撃者を確認する。ロードは矢のように飛んで行ったまま態勢を整え大広間内に降り立った。


「グウウウ……」


 ズズンとロードの方に右手爪を伸ばすベアラベ。


「こっちだ!」


 その隙に炎の剣を構えて走り出して来たハズレがベアラベの左腕を突き刺す。


「グオオ……」


 ベアラベはすぐに突き刺さった剣をハズレごと振り払った。ハズレは薙ぎ払われたが、余裕で床に着地した。


 今度は竜封じの剣を抜剣したロードが双剣流で走り出す。そして――


「グオオオオ――」


 ベアラベを連続で斬りつけていく。


「決める」


 ハズレはというとベアラベの腕に残った僅かな炎目がけて火薬玉を投げ込んだ。


 ドゴーーーーンと勢いよく爆発しベアラベにダメージを与える。


 しかし、今の爆発で完全に目を覚ましたベアラベは上に跳んで爆発の中からハズレに向かう。


「水霊の手!」


 スワンが右手を構えると水で出来た4本指の水の腕がベアラベを抑える。


「水をかき集めてたら出遅れた――ごめんなさい」


「いやナイスだ。そのままアイツを抑えてくれ」


「ハズレやるぞ!」


「ロードの誘いは断れないな!」


 水の腕に捕らえられたベアラベが両サイドのロードとハズレによって斬りつけられていく。


「グオオオオオオオ!!」


「二人共離れて、もう無理!!」


 スワンの顔が引きつった。


「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「「――――!?」」


 水の腕の呪縛からベアラベは解かれた。そして真っ先に反撃に移る。ロードは双剣でベアラベの爪を受け止める。


 しかし、ベアラベにはもう一方の腕があるそれがスワンに向けられていた。


「――――!?」


 避ける隙が無かったが、ハズレが咄嗟に庇いに来て二人して倒れ込む。そしてハズレは立ち上がり、


「そのまま伏せていろ! アイツは動いている奴を狙う!」


「う、うん!」


「オイこっちだ!」


 ハズレがベアラベを誘い込む。


「グオオオオ」


 動く者に目を移したが、その隙をついてロードは右手を押し返した。


 ブオッと炎を飛ばすハズレ、双剣流で斬りつけるロード、倒れていても指で水を操って撹乱するスワン。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 そうして何分か経過したところで、


「ちょっと待って! こいついつになったら倒せるの! もう30分ぐらいは戦っているんだけど!」


「ベアラベはタフなんだ! 時間はかかる!」


「効いていないように見えても確実にダメージは蓄積されている。心配はいらない」


 ダンと足音を鳴らしてベアラベがロードに向かって飛び出した。


「ロード!」


「決めてくれ!」


「グオオオオオオオ!!」


「道は開かれる」


 ロードは剣身に生命力を注ぎ込み15メートルの長剣を作ってベアラベに食らわせた。


「グオアアアアアーーーーーー!!」


 ズズンと背中からベアラベは倒れていく。それを見てロードは剣を納めた。


「倒したか……ロード身体は大丈夫か?」


 ハズレが気遣う。


「さっきのは生命力を使う技だったはず」


 スワンが言う。


「ああ、だけどある程度は調整できるようになったんだ……それでも疲れるのに変わりはないが……これでここは安全だ」


 疲れを見せてはいたが、涼しい顔で言い放った。


 そして、入り口付近では戦いの一部始終を見ていた男がいた。


 そいつは物色男だった。恐らく何かを企んでいる。

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