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第255話 死体から物をあさる物色男

 森の中。

 スワンはドルフィーナに跨りつつも、ロードとハズレは荷船から降りていた。

 歩くこと数時間。


「ん? 人がいる、しかも一人だ」


 前方茂みの向こう側から、ハズレが人影を見つけた。


「危なそう?」


 スワンもドルフィーナから降りて確認する。


「オレが行って話しかけてくる。二人はここに居てくれ」


 名乗り出たのはロードだった。


「「分かった」」



 ▼ ▼ ▼



「ったく碌なものがねぇーー」


 何やら壊れた馬車を物色しているニット帽を被った怪しい男だった。


 ――ザッ――足音がした。


「誰だ!?」


 男はびっくりしてすぐさま振り返った。


「オレはロード……脅かして済まない少し話がしたい」


 ザッザッと雑草を踏み男に近づいていくロード。


「近づくな!! 止まれ!! 用ならそこで言え! 怪しい奴め!」


 突如、警戒する男。


「……………………――――!?」


 その時ロードは男が物色していた物を見て驚いた。


「その人は大丈夫か!?」


 何と剣の刺さった人間が腰を下ろしていたのだった。口からは血が垂れていた。


「みりゃわかるだろう……もう死んでる大丈夫も何もねぇさ……」


 再び死体から物色を始めるニット帽の男。


 ロード話あたりを見るともう二人くらいの死体を確認した。


「一体何が――アンタがこれをやったのか?」


「はぁ? やったのは盗賊かなんかだろう」


「とうぞく……」


「用がねぇならさっさとあっちへ行け! 邪魔だ!」


「いや待て! アンタは何をしている! その人たち埋葬してやらないのか?」


「ハァ! 俺は使えそうなもん集めてんだよ! そんなことするか! めんどくせー!」


「やめろ! 死者に対して盗みなんて、すぐにやめるんだ!」


「ジョーダンだろ! このご時世、生きてる他人から取らなきゃ生きて行けねぇ奴がごまんといるのに、死んだ奴からも取るなって! 何あまいこと抜かしてんだ!」


「あまい?」


「そうだ、おおあまだ! そんな考えじゃあ明日にでもくたばっちまうぞ! このガキィ! こっちも命がかかってんだ!」


 ロードを睨む物色男。


「……………………(命がけ)」


 何も言い返せないロードだった。


「ったく、やっぱ盗賊に取られつくした後だったか」


 物色男が死体から離れる。


 そしてロードの肩に手が置かれる。それはハズレの手だった。そしてスワンも側にいた。


「埋葬してやりたいんだろ?」


「うん」


 ロードは答えた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 数十分後、三者の死体を埋葬した。


「安らかに眠ってくれ」


 ロードとスワンは祈りをささげていた。


「待ったおっさん訊きたいことがある」


 ハズレが物色男に振り返り尋ねようとする。物色男の方はコソコソと退散できなかったので肩をびくっと振るわせた。


「な、なんだ! 俺から取ろうってのか! 言っておくが何も持ってねーぞ!」


「違う……あの人たちを殺したのは盗賊って言ってたな。そいつらに目星はついているのか?」


「――!! 言ったとしてどうするつもりだ?」


「二度とこんなことはさせない」


 ロードが立ち上がって宣言する。


「そう言うことだ教えてくれ」


「ハァ? バカ野郎どもが……殺されて身ぐるみ剥がされるのがオチだ」


 この時、

(だったらいっそう)

 物色男はある閃きをする。


「いや待てここらは魔物が出没する。もしかしたらそいつがやったのかもしれない」


「魔物だと(この世界にもやっぱり魔物はいるのか)」


 ロードは考える。


「怪しいな、そんなところを一人で歩いていたのか?」


 ハズレが不審がる。


「明らかに人が使ったと見受けられる武器で殺されていたけど?」


 スワンが痛い所をつく。


「うっ……こっちだってこうでもしなきゃ――生活できねーんだよ! 毎日が命がけなんだよ!」


「魔物か……色々引っ掛かるな……」


 ハズレが言う。


「別に信じなくていい……俺はもう行くからな!」


 物色男がその場から立ち去っていく。


「魔物か……どのみちいるのなら倒しておかないと……」


 ロードが呟く。


「分かったよ……おい! おっさん待ってくれ! その魔物がいるところは見当がついているのか?」


「ああ!」


「だったら近くまで俺たちを案内してくれないか……その後は逃げてくれていいから」


 ハズレが交渉を持ちかける。


「それくらいならやってもいい」


 この時、

(馬鹿どもめ)

 物色男はこう考えていた。


 そうしてスワンの荷船は森に隠されたまま、物色男について行き、三者は魔物狩りへと駆り出された。

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