第250話 とても凄い異世界の境界
異世界の狭間。
ロードたちが立っていたのは、鏡のような円状の場所だった。
今まで渡って来た異世界の狭間と違い。
円状の盤があちこちに、それも上下左右に浮いていた。
「今通った扉が消えた」
ロードが背後を確認して言う。
「何だここは異世界なのか?」
ハズレは始めて見る光景に驚いていた。
「凄い……」
スワンが呟いた。
「スワン?」
ロードがスワンを見る。
「確かに現実離れして凄い」
ハズレはまだキョロキョロしていた。
「足元は何だ? 鏡? いや、星空が映っているが……」
「景色の話じゃないって――」
スワンが話しだす。
「この境界の安定感と正常状態の話……」
「境界……異世界の狭間のことか?」
ハズレが訊く。
「そう……わたしもこんな安定感のある異世界転移方を知らないけど……」
「オレが話に聞いていたのは……もっと歪んでいて雑に世界がぶつかり合って、人の認知では何もかもが混ざり合って見える混沌とした場所だって聞いたけど……この世界が正常に働いて、何の歪みもなく安定しているのか……?」
「異世界に行く方法が様々だから全て同じ場所を通るって訳ではないけど……ここは理想的」
「何故理想的なんだ?」
「足元を見て……」
全員足元に目を向ける。
「星空がどうかしたのか?」
「これは異世界を映す鏡盤。さっきまで私たちがいた異世界を映している。見てて……」
スワンが足でトンとつつくと、
「――――これはオーイワ城か!!」
「こうやってその異世界の見たいものを映すことが出来る。異世界がしっかり分けられているし、立つことも出来て、認識すらある。もっと凄いのはこの広い境界を維持し、安定させるだけの時間で使えること……」
「そんなに凄いのか?」
「ありえないくらい親切な造り、ロード……その鍵とんでもない価値がある。精霊の移動手段と比べられない程に」
「…………」
改めて鍵を見る。
(オレは一体この鍵をどこで手に入れたんだ?)
「わざわざ鍵で異世界から出てその後閉めさせて、やっと境界に出る……わたしたちどころか、あらゆる異世界に親切に徹底的に、歪まないようにしている」
「だったら後は行きたい異世界の鍵を開けて行った後閉めればいいのか?」
「これだけ親切なら、開ければ後は全部、自動で閉じてくれるかもしれないけど、そうした方がいいかな」
「向こうの方へ行くには――行きたいところに手を伸ばして――」
ロードは使ったこともないのにこの境界がどういう仕組みか分かっているようだった。
スッと手を上げるロード。
「うわっ動いた!」
ハズレが驚くのも無理はない。突然立っていた鏡盤がスーーーーっと動き出したのだ。
「風の抵抗も感じない。ホント親切な境界」
「空気がないということか? なくてもいいのも、親切なおかげか……」
ピタリと乗っていた鏡盤が止まる。
そして、近づいていた、別の鏡盤に乗り換える。
「ロードここに行くのか?」
「たくさんあるから見て回るよりしらみつぶし?」
「違う。この異世界から声が聞こえた」
「助けを呼ぶ声がか?」
「ああ」
ロードはその鏡盤の上で鍵を回す。ガチャリと音がして、ゴゴゴと開く扉が現れた。
「声の主を助けるのもいいけど、色々謎のままのことを解決しに行くためでもあるのだから、忘れないで……」
「分かってる」
「魔王の出現、秘宝玉の使い方、グッゴの人の焼け跡がなかった真相、何か一つでも分かるといいな」
ガコンと扉は全開に開いた。その先は光り輝いていた。
「手を繋いで行こう、何が起きるか分からない離れ離れにならないように念のため……」
「恥ずかしいけど、仕方ないか」
照れるハズレ。
「ドルちゃんの手綱も……持っておかなくちゃ」
ドルフィーナのことをスワンは忘れなかった。
そして三人一緒に光の向こう側へ行く。
境界から出た三人の後、扉がガッチリと閉まった。
スタスタスタンとその場に立つ三人。
「――着いた」
スワンが何の心配事もなく言う。
「皆、いるな」
手を繋いでる感触を確かめてロードが言う。
「何も起きなかったな、ただ出て来ただけみたいだ」
ハズレが羽根帽子を押さえてテレを隠すように言う。
「「「ここが新たな異世界」」」
皆で見果てぬ先まで更地となっている光景を見ていた。




