第247話 生き残って食事をする者たち
ロードたちこの国で唯一営業再開していた飲食店に来ていた。
三人で昼食を取る。
食事はどろどろのスープと、かさばった野菜を乗せただけのサラダだった。
しかし、お値段なんと三人合わせて6枚銀貨だった。
「なんか……全体的に水分がなくない。野菜とかスープとか……」
スワンが味を見てそう言う。
「仕方ないさ。この前まで魔王の支配を受けていたんだ材料があるだけマシだろ……まぁ野菜はともかく、スープは少ないな」
ハズレが感想を漏らした。
「何でもいいだろ……食べられれば……」
何事もなくスプーンですくったスープを口に運ぶロード。
「えーわたしが取って来たキノコは捨てたのに?」
スワンが苦い顔をする。
「アレは食べてはいけないキノコだった」
「ホントにーー? 生命が危機を察知したーーとか分け分からなかったけど……」
「何だい? ロードを疑うのかいスワン?」
「そういう訳では……」
「信じてくれ、スワン……あのキノコは」
マジな顔をするロード。
「ごめんなさい話題間違えた。本当はキノコの件、感謝しています」
黙々と食事を進める。
「そ、そうだ今度ロードに釣りして欲しいなぁーー、わたし魚が大好きだから……」
「いいぞ……」
いい笑顔を向けて来た。
(よし、場の空気が楽しさに戻った!)
ぐっとガッツポーズを机の下で決めるスワン。
「ここの料理はまったく冷めないな……」
ハズレが話しかける。
「えっと小石焼きだっけ……熱した小石の中に食材を温めるって言ってたな」
ロードが答える。
「水分もなくなるわけだ」
「岩塩に関しては絶妙な味付け……さすがオーイワ……石の国」
「そうか? ちょっと濃くないか? ロードどう思う?」
「さぁ、食べられれば何でもいい」
「許容範囲ってことか? って何かかけはじめてるし……」
ロードからスワンに目を移したハズレが言っていた。
「深刻な水不足」
どうやらスープに水をかけるらしい。
「そのどろどろの料理はそれでいいんだよ。ってロード……それは何だ?」
「アオマツリ……身体にいいと聞いた。病の予防とか」
「フーン……ちょっともらうぞ――」
口に運ぶハズレ。
「うぎっ……」
(この世のありとあらゆる苦みを詰め合わせた逸品だ。使っているの食材じゃなくて薬草だろコレは)
苦みを我慢しながら咀嚼するハズレ。
「うぎっ……」
スワンがハズレの真似をした。
「食べさすよ」
「ロードの食べるもの全部変なものだからイヤ」
「味覚の世界が広がるぞ」
「そんな世界広げたくない」
「身体にいいぞ」
「セクハラ……」
「違うって!!」
二人の会話を聞かずロードは黙々と食事をしていた。
「むっ……キミたち……目を覚ましたのか?」
その時、一人の大男が通りかかった
「あっ」
「ギンゴおじさん」
▼ ▼ ▼
外では壊れた家を治す者たち、昼食を取る者たちがいた。
なんだかガヤガヤと騒がしかった。
そして食事を済ませたロードたちは外へ出た。
「無事目覚めてよかった……実は君たちのような子が戦場に駆り出されることが不憫で仕方なかった」
「おじさんやめて……これでも覚悟を決めて潜入したから一人の戦士として扱って……」
「そうだな……キミの働きぶりは見事だった。ありがとう」
半袖姿のギンゴおじさんが頭を下げる。
「そんな改まって、おじさんの説明がわかりやすかったこともあるから……」
「ギンゴさん……これからオーイワはどうなるんだ?」
「うむ、今回の魔王の一件でオーイワは共に戦ってくれた国々、ジャリオスト、メルクエム、ガンダイルとの協定を結ぶことになった。我が国はグッゴでの海賊たちとの戦いで長年、閉鎖的になっていた。皆今回の件で他国の協力に感謝して、考えを改めた。これから忙しくなるが、いい関係性を築いて行けるだろう」
「共通の敵が国々を一つに結ぶか……魔王さまさまだな……」
「………………」
沈黙するロード。
「ハズレ不謹慎!!」
スワンが注意する。
「おっと、そうだな、済まない」
「いや、実際魔王が出なければ今も我々は他国とは関わり合いを持たなかっただろう。厳しいが犠牲無くして、人は学ばない」
「………………」
「難しいことはさておき、今は国全体で復興作業を行っている、いずれ元の街、いや……それ以上の街となるだろう。それでひと段落すれば、ロード、キミたち魔王の立役者の石像が建てられる」
「……そうか」
どこか寂しそうに息を吐くロードだった。
▼ ▼ ▼
オーイワ国・墓地。
岩でできた墓が大量に並んでいた。
それだけ魔王たちとの戦いが熾烈を極めたものだったと知る。
ロードたちとギンゴは拳を作り胸に当て、目をつむり死者たちに黙祷を捧げていた。
「…………」
ロードたちは目を開ける。その先には墓岩に石像彫りのダンここに眠る。と、最強の魔物狩りグレイドここに眠る。と書かれていた。もちろんロードには読めない文字だった。
「さて、キミたちはどうする。クウエン君たちのように、直ぐ出発するのか?」
ギンゴのおじさんが訊いてくる。
「どうするって、わたしは飲料店の仕事をするだけ」
「けど、魔王を倒してしまったから旅の目的はなくなってしまったな」
「これでお別れとか言い出さないでよ」
「オレ……行きたい場所があるんだ」
ロードがそう言う。
「ん? あるのか?」
「どこぉ? ロード……」
「魔王の出現した地……グッゴだ」
キリリとした涼しい顔で言い切ったロードだった。




