第242話 ロードを援護する者たち
左手の骨にひびが入った。それは魔王の破城槌を避けたときに出来た。
それは高速で振り被られた破城槌を強引に逸らしたからであった。
ダッと走り出すロード。それに合わせて走り出す魔王ゴワドーンは一気に距離を詰めて来た。
「わざわざ右手を庇ったな。さぞかしその腕輪が大事と見た」
「くっ、だからどうした!!」
「破壊する!! 人間の大事なものすべて!!」
ダーーンとロードを足で踏みつける魔王だった。
「うあああっ!!」
腰から下を踏みつけられて叫ぶロード。動けない状態でいた。
「その腕輪に込められたのは、思い出か、魂か、絆か、何が壊れるか見せてみろ」
万事休すその言葉が似あう光景だった。下半身は抑えられ破城槌が腕輪に迫りくる。
しかし、その刹那の瞬間――ミチルの剣は戻ってきて、ロードは右手で掴み取り、その場から飛んで魔王との距離を引き離した。
「おのれ!! またあの剣か!!」
魔王は叫んだ。
「はぁ……はぁ……」
そんな、空に飛んでいる時だった。赤き竜封じの剣が輝いた。
「――――オイ!! 何の騒ぎだ!!」
その時、剣から声を出したのは赤き竜アカだった。
「今絶賛、魔王と戦闘中だ……」
「――魔王と戦闘!? オイ勝てそうか!?」
「いや、何としても勝つ……痛た」
「怪我をしたのか!? どこだ!?」
「下半身を抑えつけられた所と、肩に瓦礫が当たった所と、背中を強く打ち付けられた所と、左手の骨にひびが入った所ぐらいかな……」
「待て……我にも戦わせよ」
「いいけるのか?」
「無論だ。いつでも行ける」
「なら行ってこいアカ!!」
ロードがひびの入った手を辛うじて動かし鞘から剣を引き抜いた――そして落とすと竜封じの剣はアカの姿に変貌した。
「アレか!! 魔王というのは!!」
「何!? ――竜が出て来ただと!?」
魔王は驚いた。
喰らえと言わんばかりに炎を吐くアカ。それを破城槌を振ることでその衝撃波がアカの炎を弾けさせる。
今度は爪の攻撃を試していた。しかし、魔王の硬い身体には通らなかった。
さらに魔王を持ち上げてみようとしたが、こちらも重すぎてなかなか上手くいかない。
それも破城槌を打ち付けてきてアカが攻撃を食らった。
「なるほど、これは手こずるわけだ」
アカは翼を広げて飛びだった。そしてロードの方はというと青き剣に宿ったミチルが力を使い果たして行っているのか……徐々にその高度を低くして行き、ロードは床に足をつけた。
「ミチルご苦労様……」
「――破壊する!!」
その時、ゴワドーンはアカに向かって飛んで行った。そして必殺の破城槌をドオーーーーンと打ち付けた。
「グオオオオオオオオオオオオ!!」
アカでさえやられてしまう。だがただで殴られただけに終わらなかった。アカはゼロ距離から炎を吐き続けた。
「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
今度はゴワドーンが叫びを上げた。戦闘形態になってから初めて効いた攻撃だった。
「破壊――――」
魔王はそれでもひるまない。その時、真横から水の腕による攻撃がやって来た。
「――うむっ!! 何だ!!」
それからバサッと顔面に炎で焼かれたマントのようなものが被せられた。
それから火薬玉がいくつかマントに触れて大爆発を引き起こした。
「――――ぬおっ!!」
ズズズズンと後ろへ倒れるゴワドーンだった。
「スワン!! ハズ――――」
二人を目にしたロードが叫ぼうとしたが、途中で意識がなくなった。
「スワン!! 退くぞ!!」
ハズレはロードを抱えた。
「ロードは!?」
「気を失ってるだけだ!!」
「魔王はどうするの!?」
「アカに任せておけ、そう簡単にやられたりしないはずだ」
「分かった」
二人はロードを連れてその場を後にした。
「おのれーーーー!!」
攻撃してきた狼藉者たちをみすみす逃がすゴワドーンではない。
「――壊す全て!!」
そのまま追いかけて行った。
二人が飛び降りた先に向かってゴワドーンも飛び降りた。ズズンと着地したその時、
「――――――!!」
「撃てぇ!!」
ギンゴ戦士長が塀の上から号令を出して、複数の砲台から砲弾を発射させ爆発させた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドウン!! と真夜中の空気が揺れる。
「やったか」
ギンゴ戦士長が確認すると――
「――くだらん!!」
大いに焼け焦げたゴワドーンが爆炎の中から姿を現した。




