第241話 本気の魔王ゴワドーン
魔王ゴワドーンは姿を変えた。竜の様に突き出た顔。細腕に六角柱の破城槌。細足もガッチリしていて、腰も落としている。 長い尻尾の先には丸い鉄球が備え付けられている。身体の各所、顔、肩、背中、足、尻尾にはハンマーのような突起物が出来ていた。
「くっ……」
ロードはその魔王の姿を見上げていた。
(化け物め……)
(歴然とした力の差を感じる)
(さっきの攻撃でオレの体力は殆どない)
(それでも……)
眼前にいる魔王ゴワドーンの口が開く。
「その目に焼き付けたか……お前の常識を破壊した――この魔王の戦闘形態を、戦いで使うのはこれが初めてだ。光栄に思え。肉塊も肉片も残さん細胞の一つ一つまで潰し尽くす」
そして魔王ゴワドーンがダッと走り出す。そのスリムとなった巨体でダッと走り出す。
「壊れて消えろ!!」
両腕の破城槌を構えてロードめがけて一直線。
(それでも何してでも倒すんだ)
疲れ果てたロードも心に誓った。
「潰し合い!!」
魔王ゴワドーンの攻撃は両腕の破城槌を両側から潰し合わせる事だった。
ドドンと鐘の音のような響きがこだましたが、ロードはその攻撃を上に跳んで避けていた。
「頼むミチル!!」
青き剣を振り斬撃を飛ばすロード。
ズオンという音と攻撃が魔王の顔に炸裂したが無傷だった。
「無駄だぁ!!」
顔まで近づいてきたロードだったがそれは大きなミスだった。
何と魔王は顔のハンマーでロードを壊しに来た。
ドオン!! と下の床にぶつかる。そうするとその攻撃で破壊の効果が生まれてドドドドドドドドドドドドドンと床が崩れ始めた。
(――衝撃もさっきの比ではない)
顔への一撃を後ろへ下がり、ズザッと足でブレーキし回避したロードだった。
「破壊!!」
一気にゴワドーンに距離を詰められたロード。
ハンマーを当たるまでドカドカドカドカ振り回し前に前進、それに応じて床を叩き潰していく。
ロードはだんだんと後ろへ下がる速度が落ちてきていた。
「ミチル力を!!」
青き剣を振り斬撃を生み出すのだが……
「小賢しい」
振りきる前に魔王の攻撃の方が速かった。完全な撃ちミスをしてしまった。
それでも避けられたのは、やはりロードの身体能力の並外れたところだろう。
「うっ!!」
魔王の側面に急いで回避してきたが、魔王は標的を見失わなかった。
そして、身体を回すと同時に、遠心力によって引っ張られ、尻尾の先の大きな丸い鉄球が襲い掛かる。
ゴオン!! 鈍い音を炸裂させ近場の瓦礫へと激突するロード。
ガラガラと衝突時に瓦礫が破壊され共に落ちて来た。
「もはや、玉遊びか……」
ダンダンダンと近づいてくる魔王。
「あっ……がっ……」
今の一撃がだいぶ効いたのか、魔王が迫ってくるというのに立つことが出来なかった。
ダンダンダンと迫ってくる魔王ゴワドーン。
ロードは青き剣を構えて言う。
「オレを連れて行けミチル」
「逃がさん!!」
ゴワドーンは破城槌の攻撃を仕掛けたが、ロードは間一髪それを回避していった。
ドオンという音を奏で破城槌が床を崩す。
その時ギィンと魔王ゴワドーンの頬を青き剣が掠めた。もちろん傷はない。
「逃がさん? 何を言っている。お前は俺が倒す」
戻って来た精霊の剣を右手で掴む。既に赤き剣は鞘に納められていた。
「出来るものか!!」
魔王ゴワドーンが一気に距離を詰めてくる。
避けようとしたロード、その時、足がガクッと膝を曲げた。
(――足が動かない)
(剣は破壊させない)
ロードは青き剣でまた移動しようとしたが、そのとき手に力が入らず、ミチルだけ飛び去ってしまった。
(なら、腕の一本)
(――――!!)
その時、ロードは目にした。右手に掛けられた腕輪をそこにある指輪を――
(ダメだ右手は――左手でやり過ごす……)
「――――!!」
その時のロードの不可解な行動を見落とさないゴワドーンだった。
破城槌が迫りくる。その瞬間、左手を前に持って来る。
そして、ダッと破城槌の側面に手を付けて、上腕二頭筋にも力を入れて逸らすようにした。
その時、ミシッと左手は悲鳴を上げた。
「あぐっ!!」
(骨にひびが入ったか)
何とかロードは左手を犠牲にして破城槌の直撃を避けた。




