第237話 誰もが注目するオーイワ城
オーイワの建設作業場に取り残されていたダンは、
(と……飛んで行っちまったよ)
(な……何者なんだ)
(あの人なら、もしかして魔王を倒せるのか)
(だとしたら、オレの思い出も戻って来るのか?)
(いやダメだ)
(人にばかり任せてたら、オレも何か……)
(――!? ま、待てよ)
(奴の呪い……もしかすると)
(こうしちゃいられない急ごう)
像の建設現場から急いで立ち去ろうとするダンであった。
◆ ◆ ◆ ◆
クウエンは天井を見上げていた。
ギンゴは崩落したオーイワ城を見ていた。
魔物たちも魔王の姿は拝見したことがないのに見ていた。
バスタードも煙を上げるオーイワ城を見ていた。
◆ ◆ ◆ ◆
バシャバシャと誰かがオーイワの国を走っていた。
オーイワ城から噴く煙に気づ立ち止まったのはハズレだった。
(魔王はあそこか)
その時、近場に在った井戸からボシューーーーと大量に水が噴出した。そして何かが飛び出す。
「――!! な、何だ!?」
剣を構えるハズレだったが、
「こんばんは……」
飛び出して挨拶を交わしたのはスワンだった。
「スワン!!」
「痛った……」
スワンが足を抑えた。
「大丈夫か? 怪我だらけじゃないか?」
「何とか大丈夫」
「何かと戦っていたのか?」
「うん、魔王の眷属使魔バカデカテ」
「眷属使魔だって! そんな危ない奴と戦ってはいけません!」
「何ソレ、死に物狂いで戦ったのに……」
スワンは本当に頑張ったので非難されて悲しくなる。
「まぁ、キミが生きているからいいけどさ……」
スワンの様子を見て気を遣うハズレ。
「えっ?」
「だから……オレたちの約束、生きてまた会えたからもういいよ」
「……そっか」
今度は笑顔になった。
「……と言うことは、雨の作戦でドルグを倒したはずでオレがタテトルを倒した……これで残る山場は魔王だけか」
「えっ!! ハズレ、あのロードが勝てないって言ってたヤツに勝ったの!?」
「まぁな……死にそうだったけど……」
「――どうしてそんな危ない奴と戦った! 死んだらどうするつもり!!」
怒ったスワンは指を差した。
「あーーーーうん、おあいこってことで許してくれないか……」
やれやれとそっぽを向くハズレだった。
「まぁいいけど、どうしてここにいるの?」
「そうだ魔王だ――ロードはどこだ!?」
「ロードは私を逃がすために一人で魔物たちと戦って……違う、彼なら絶対魔王の元に行く。
「不味い、行こう」
「えっ……う、うん」
「怖いなら遠くに行ってもいいぞ!」
ザッとハズレが走り出した。
「行かない! 二人の側の方がいい!」
スワンも続けて走り出した。
二人は魔王がいると思われるオーイワ城を目指した。




