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第236話 魔王への宣戦布告

「こ、壊そうって、なんでそうなる……やめてくれ、オレには家族が必要で――」


「ここじゃないのか……? あなたの大切な家があった場所は……結局、思い出を取り戻しても家は返って来ない。家族も、それどころか、この地に魔王の像を建てたことに後悔する。そして、あなたはいつか自分の手で、家族と同じ場所へ行く」


「…………」


 顔を俯かせるダン。今度はロードが彼の身体にしがみつく。


「それではダメなんだ! 魔王に屈してはダメなんだ! 死の道を進んではいけない! 家族を思い出す道は一つじゃないはずだ! 他にも呪いを解く道! 家族を知る者と話して思い出す道! 魔王を倒せば思い出せるかもしれない! もっとあるはずだ別の道が!」


「別の道……そうかもしれない……奴が約束を守る保証はどこにもないしな……」


 激しかった雨がポツポツと降り出し、やがて止む。


 月の光が彼らを照らした。


「壊しちまってくれ、このデカブツ」


 魔王の支配に吹っ切れたダン。


「うん」


 頷くロード。


 その時オーイワ城の城のてっ辺で爆発が起きた。


「城が爆発した」


「あそこは魔王の玉座じゃないか! 誰か戦っているのか!?」


「お爺さん」


 ロードが呟いた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 爆発したオーイワ城。

 ボタタタタタと床に血を零す者がいた。


「魂を貫く一撃、だがその程度ではオレは倒せん! 一つ二つ魂が消えたところでオレは破壊できん!」


 最強の男グレイドの頭を掴んでいる魔王ゴワドーン。すでに勝敗は決していた。


 魔王はグレイドを頭から瓦礫へと投げつけた。


「フン死んだか脆弱な人間が! では貰おう……」


 ズンと近づいていく魔王だった。



 ◆ ◆ ◆ ◆


 

 ズズンと城内に響き渡る音。


「「「――!?」」」


 魔物たちと戦っていたクウエン達にも伝わっていた。


「何だ! この揺れは!?」


 驚く魔物狩り。


「まさか上で魔王が――!?」


 クウエンは直感した。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 城のてっ辺から落ちてくる瓦礫によって魔物たちが潰されていく。


「――!?」


 運よく瓦礫の下敷きにならないギンゴ隊だった。


「危ない瓦礫が降ってくる……皆の者、気を付けて下がるのだ!」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 また遠くからオーイワ城を見ている者がいた。


「グレイドさん」


 バスタードがその名を口にした。


 

 ◆ ◆ ◆ ◆



 そしてロードたちはというと、


「ど、どうなんだ? 倒せそうか? あんなもの魔王の実力の半分も出してはいないが……」


 ダンが尋ねてくる。


「厳しい戦いになるのは確かだ」


 ロードが告げる。


「もしもの時はどうすればいい」


「考えなくていい。全身全霊を賭して魔王を討つ!」


 そう心に誓った。


「ダンさん、オレに捕まってくれ、この像の首を斬る」


「分かった……そうだアンタ名前は?」


「ロード・ストンヒュー、勇者と名乗っている。では行くぞ」


 ロードは石像から下へ飛び降りた。


「うわぁ!!」


「しっかりつかまっていてくれ!!」


 この時、

(魔王の像の首を斬る)

(魔王への完全な宣戦布告)

(奴の怒りを買うのは明白だ)

(だが、同時に他の者へ向けられる怒りは和らぐ)

(負けたとしても俺たちは助かるかもしれない)

(だが確実にこの男は死ぬ)

(無残に今まで殺された誰よりも)

(それを分かっていながら)

(魔王さえ壊せないものを壊すということが分かっていながら)

(そのすべてを背負ってこの男は戦う道を行くのか……)

(なんて……なんて……勇ましい者なんだ)

 ダンは思っていた。


 タンと着地し作業現場の石像の首あたりまで来たロードたち。


「――!?」


「離れてくれダンさん」


 言われた通り離れる。


「ミチルお前は飛ぶ剣なんだな。だったらこんなことは出来ないか?」


 ロードは青き精霊の剣を振る構えを取った。ロードの目は真っ直ぐ目の前のものを見ていた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 オーイワ城の最上階。

 魔王は死んだ老人から何かを奪い取った。それは、


「これが、魂の秘宝玉……――!!」


 その時、魔王は敵意を感じた。


「この威圧感、何者だ? オレの像の方から……」


 その時、魔王の像の首に亀裂が生じた。そしてバカァーーンと斬り砕かれた。


「――――!?」


 自分の像の行く末を見た魔王だった。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「す、凄い……本当に切った」


「では行ってくる」


「ま、任せたぞ……魔王を倒してくれ!」


「ああ」


 石像の壊れた首の上に移動するロード。


「ミチルもうひと仕事だ。オレをあの城の最上階まで連れて行ってくれ」


 青き剣先が刺し示すのは煙が上がるオーイワ城だった。


 ビュンと青き剣に引かれて空を飛ぶロード。


 赤き竜封じの剣を左手に構えた。そして視界に入って来た。その巨体が……魔王ゴワドーンが、そして向こうも視界に入ったようだ。拳を握り迎え撃とうとする魔王。


 ガギィン!! 両者、甲高い音を鳴らせて相見舞った。


「来たぞ魔王」


「壊れないか、いい剣を持っている」


 そしてロードは横たわる最強の男グレイドさんを見た。


「お爺さん」


 息をしていないことに気が付いた。


 血反吐を吐いていたのか、口元は汚れていたが、どこか安らかな顔をしていた。


 ロードは始めてみた死者に涙を流す。


「オレの像の首を切り落としたのはお前だな! このゴワドーンの怒りをその肉体を持って思い知れ! 肉塊も肉片も残さず潰し尽くす!!」


「知るのはお前だ……オレの名は勇者ロード・ストンヒュー、お前たち魔の物から人々を救い生かす者――――そのオレの怒りを思い知れ……」


 魔王に青き剣の切っ先を突き付けるロード。


 そして魔王と対したロード、世界の命運を賭けた戦いが今始まる。


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