第233話 主戦場の勝敗
メルクエム国・丘。
主戦場は今、雨が降り続けていた。
ザザーーーーーー!! 強く雨が降っている。
『『『ワーーーーーーーーーーー!!』』』
戦士たちと魔物たちの唸り声が響き渡る。
倒された戦士は崩れて、倒された魔物は霧散化していく。
「ドルグ様、もう雨が降り続けて一時も経っています」
「このままではあなた様のお身体が……」
「今はまだ優勢です退きましょう」
魔物たちがドルグを心配して申し上げる。
「それは出来ない。優勢であるからこそ、この勢いは保つ! 雨程度で我が土の身体は崩れない! 火は消えたんだタテトルも援軍を足止めしている。奴らに味方はもういない! ここで決戦だ!!」
「ドルグ様――アレをご覧ください」
空飛ぶ魔物がドルグの250メートルの身体に目線を合わせて言う。
「――――!! アレは!? 投擲機!?」
ドルグは丘の上にずらりと並んだそれを見て驚いていた。
パーパーパパーとある戦士がラッパで味方に報せる。
「合図だ!」「ミンド隊後退!」「急げ!」
戦っていたミンド隊が魔軍から退いていく。
「ドルグ軍は鈍足。よし!! 十分退いて来たな。 アンダ隊――投擲用意!!
戦士たちが全ての投擲の岩を乗せていた。
「発射!!」
一斉に岩が投擲される数にして30はある。
気づいたドルグは早速盾を前に岩の攻撃を防ぐのだが――
「ムッ!?」
大きな岩が土で出来た盾をドオーンと破壊した。そして魔物たちを潰していく。
この時、
(くっ盾壁が……やむおえん……)
ドルグは大勢が決したとみて決断した。
「――ドルグ隊退け!! 撤退だ!!」
「撤退?」「ドルグ様の盾が」「退けーー!!」
ワーーーー!! と退いていく魔物たち。投擲による岩は未だに落ちてくる。
「ドルグ様!! 後方に敵です!!」
飛んできた魔物が報告した。
「ムッ!?」
矛壁を手に構えるドルグ。
ドルグ軍の後方に一つの戦士隊が、いつの間にか陣取っていた。
「ゲンガ隊、投擲用意!!」
数十個の岩を投擲機に乗せていく戦士たち。
「――撃て!!」
大きな岩がドルグに対して飛んで来る。
「ぐおっ!!」
岩の当たったドルグの腕にひびが入った。
「ドルグ様!!」
いつのまにやら前方と後方に挟まれたドルグ隊は投擲機による攻撃を受けていた。
「挟まれた!!」「ドルグ様! どうします!」「くっそ人間どもめ!」
大きな岩に押しつぶされていく魔物たち。
その時ドルグの頭に大きな岩が当たってひびを入れられた。
「「「ドルグ様!!」」」
魔物たちが心配する。
(ぬう……さらなる援軍)
(タテトルは何をしている)
(人間どもめ、後方に回り込み、前方と挟み撃ち)
(あらかじめ投擲機を用意していた?)
(そんなバカな)
(雨さえなければ……)
(今、我が体の土は……水を吸い取り崩れやすくなっている)
(雨の日を狙っていた?)
(どうやってそれを知った)
ドルグは考えに考えた。
アンダとミンドは丘の上で合流していた。
「終わりだ」
アンダが言った。
「アンダ殿の火矢での火事の働きが功を成した。大量の火によって上昇気流が天で雨雲を呼び、雨を降らせる。雨の水を長時間吸い続けたドルグの身体は、岩による衝撃で砕かれていく。持久戦に自信のあるやつは、雨の中でも退くことはない。例え自らの弱点でも……」
ミンドが言う。
「うむ、敵ながらその心意気には賞賛に値するところがあるがな……人間を甘く見すぎた」
アンダが宣告する。
ドルグは頭を砕かれ、胴体を砕かれ、腕を砕かれていった。
そしてとうとう顔面に大きな岩を食らい魔物たちの上に倒れ込んだ。
『『『ドルグ様ーーーー!!』』』
魔物たちが叫ぶ。ドルグは霧散化を始めた。
「うわぁーーーー!!」「ドルグ様がーー!!」「バ、馬鹿な!!」「逃げろ!!」「どこでもいいからここから逃げろ!!」
岩の降る中、わーーーーと騒いで逃げまどう魔物たちだった。
「撃ち方やめ!!」
ゲンガ戦士長が止めた。魔物たちとの大戦その大勢が決した。
「勝どきを上げよ!!」
アンダ戦士長が声を上げた。
「我々の勝利だ!!」
ミンド戦士長も発言する。
「勝利だ!!」
ゲンガ戦士長が腕を上げる。
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
ザーーーーーー!! と雨が降り続ける中、勝利した戦士軍だった。




