第232話 最強の男グレイドの力
オーイワ城・地下牢獄。
檻の中から出てくる人々、この人たちは全員魔王たちに捕らえられている人だ。
碌に水と食料も与えられていない為か。
どこか顔色が悪い人が多い。
「ギンゴ戦士長殿。アサヒ偵察隊長がまだ魔物たちには気づかれていないと」
「うむ、皆を逃がすため、くれぐれも静かにことを進めるのだ」
「はい」
おぎゃーーーー!! おぎゃ――――!! と鳴き叫ぶ赤子。
「よしよし静かに……静かにね……」
赤子をあやす母親の姿があった。
「ご婦人……」
話しかけるギンゴ戦士長。
「すみません。すぐあやしますので――」
「いや……これを……」
ギンゴ戦士長が赤子に石彫りの犬人形を渡す。そうすると赤子は泣き叫ぶのを止めた。
「あ、ありがとうございます」
「ギンゴさん!!」
武器を持った男性の一般市民たちが話かけて来た。
「お前たち頼むから静かにしてくれ」
「はいそうなんですが……」「俺たちにも戦わせてくれ!!」「兄弟の仇を!!」「息子の仇を取らせてくれ!!」
「分かった、皆武器を取れ!!」
ギンゴ戦士長が彼らをかった。
「「「おおう!!」」」
◆ ◆ ◆ ◆
オーイワ城内。
魔物狩り達が大勢の魔物と戦っていた。
わーーーー!! わーーーー!! と向かう魔物狩り達。
ぎゃーーーー!! ぎゃーーーー!! と叫ぶ魔物たち。
その中で一階のエントランスで戦う魔物狩りたちがいた。
クウエン・リードたちである。キントンテンという名剣を突き立て息を整えている。
槍を構えて息を整える魔物狩りがいる。
ハンマーを肩に担いで膝を落とす魔物狩りがいる。
剣と盾を構えて息を整える魔物狩りがいる。
この人らがクウエンパーティーメンバーだった。
そして彼らの前に魔物がいた。
「ムムム……ゴワドーン様の四番手、城守りの魔物、このバンゾウの敵ではない」
その姿を言い表せば、石板盤に埋め込まれた人間のような中央に目と口が付き、さらに四本な鈍器のような腕を持っていた。体長およそ4メートル。
「ああ!!」
魔物狩りの槍の攻撃を腕で弾くバンゾウ。
「鉄球のような四本の腕、身体も岩ほどの硬さがある……何て強さだ」
はぁ……はぁ……と息を漏らすクウエン。
「肩慣らしには丁度良さそうだ」
ザッザッと歩いてくる魔物狩りがいた。その男の名は最強の男グレイド。
「若者どもこいつはオレがもらっていくぞ」
「グレイドさん……」
クウエンが口に出す。
「ダメです奴には剣は利きませんもの凄く硬い」
槍使いが言う。
「俺たちも一緒に――」
ハンマー使いも言う。
「お前たち待て、この人は強いここは任せよう」
クウエンが提案してきた。
バンゾウの前に立つグレイド。
「何だ老いぼれ墓石が欲しければ他を当たれ……でなければ死期が早まるぞ……」
「お前さんのがか?」
挑発するグレイド。
「言ってくれるな――老いぼれ!」
その一言をきっかけに勝負を挑むバンゾウ、その攻撃方法は四本の腕で猛烈なラッシュ攻撃をするものだった。
「うおおおおおおおおおお!! くたばれえええ!!」
ドドドドドドドドドドドド!! と鉄球のような腕の壁が迫りくる。
グレイドは剣を構えたそしてその剣は青色に輝きだした。
「一撃入魂」
バンゾウの腕のラッシュを完全に見切ったグレイドはその隙をついて、バンゾウに剣を突き立てた。すると木っ端みじんに顔が割れた。
断末魔も言う暇もなく砕けたバンゾウは霧散化していった。
「お前さんの墓標、無くなっちまったな……まぁ魂が死んだ奴には必要ないか……」
霧散化する魔物を見てそう言った
「S級を相手に一瞬で……何て強さだ。これがダイヤモンド三ツ星の力……」
剣と盾を構える魔物狩り。
「何で倒すことが出来たんだ?」
問いかける槍の魔物狩り。
「あの剣相当な物なのか?」
ハンマーを降ろした魔物狩りが言う。
「イヤそんなレベルのモノなじゃない」
クウエンは最強の男を見ながら語る。
「グレイドさんは魂をかけて戦う――その剣で相手を貫くとその身体がどんなに強靭でも、魂に死傷を与えて相手を倒すことが出来る特別な力を持っている」
「オイ、ここは頼んだぞ」
「――は、はい」
クウエンが反応した。
「――グレイドさんは?」
槍使いの魔物狩りが訊いていた。
「オレは魔王に謁見を申し入れる」
グレイドが一歩一歩、エントランスの階段を登って行く。




