第231話 スワンを追う為に……
オーイワ国・城下町。
時刻は21時を回ろうとしていた。
あらゆる場所で戦乱が開かれていた。
ワーーーー、ワーーーー、という絶叫や雄叫びが聞こえてくる。
戦士たちや魔物狩り達の必死の攻防である。
その中でも人一倍頑張って魔物を撃破していく者がいた。
「うわあああーー!!」「ああああああーー!!」
二本の剣を持つロードが魔物たちに対してその本領を発揮していた。
「うおおおお!!」「よくもやったな!!」「大人しく死ね!!」
あらゆる異形の姿をした魔物たちが言って来る。その数何と数百体。
ズバッ、ズバッと二本の剣で魔物を斬っていく。
(くっ数が多すぎる)
(これでは、いつまで経っても)
(スワンの所へ行けやしない)
(前も後ろも右も左も上も魔物だらけとは――)
(あのオモシって魔物とシェードガイって魔物をどうにかすれば)
(魔物の統率はなくなるかもしれないが――)
オモシとはやせ細った魔物にハンマーのある者。シェードガイとは貝殻で全身を鎧化した者。
そして、ロードの背後から魔物たちな断末魔が聞こえた。
「――――!?」
そちらを向くロードと魔物たち。
「手間取っているか? ロード」
そこに立っていたのは全身鎧姿の者だった。
「えっ誰?」
「オレだバスタードだ」
「魔物みたいな格好ですね。間違えて斬りそう」
「今からその口を黙らせてやる。見てろ」
ザッと魔物たちに向かって走り出すバスタード。
「ああああああ!!」「うわあああああ!!」
早速、数体の魔物を仕留めたバスタード。
膝の棘で魔物を突き刺し霧散化させ、肘の棘で魔物を突き刺し霧散化させていく。
(的確に相手の急所を突いている)
(やはり千体切りは伊達ではない)
そんな時、別の魔物狩り達もこちらに到着していた。
「オラァー、敵がわんさか居やがるぞ!」「片っ端から片付けろ!」「オオオオ!」「邪魔だどけー!」「魔物を蹴散らせ!」
「ギャア……ア」「ウワァ」
魔物たちが倒されていく。
「ロード今の内にオモシとシェードガイをやれ!」
バスタードがそう言って来た。
「――――分かりました」
ロードは他の魔物には目もくれず突っ込んで行く。
「来るぞ! シェードガイ」
「ああ、こいつは強い舐めてかかるな!」
ロードはまず左手の赤き剣でシェードガイを狙った。
ガァン! と腕の貝殻の鎧で防ぐシェードガイ。
「ぬおう!!」
シェードガイからの拳を右手の青き剣で防ぐ
「ラァタァーーーー!!」
真上からオモシが両腕のハンマーを振り被って襲い掛かって来た。
とっさに右足を上げるロードは、オモシの顎に蹴りを放ってその場で前転する。そうするとオモシの頭が蹴りを入れられたまま地面に激突する。
「ふん!!」
前転で背中を見せた際、シェードガイは拳を振るってきたが、ロードは攻撃を見落とさない。
ブンと剣を振り、横一閃に薙いだ。
しかしその剣はシェードガイには当たらない。まるで軟体生物のように背中を後ろへ反らす。
しかし、それを隙と見たロードはもう一方の剣でシェードガイの下半身を狙うが、
ブンと振られる横一閃を柔らかい下半身を引っ込めて攻撃を躱す。
「これしきーー!」
オモシが態勢を整えた。そしてハンマーのような手で襲い掛かる。
ドオーーーーンと音を地面に鳴らせたが、ロードには当たらなかった。
しかし後ろに下がったことでシェードガイの間合いに入り、
「軟体ホールド」
軟体動物のような手足が、ロードの手足に絡みついてきた。
「オモシやってしまえ!!」
完全に動けずにいるロード、ガッチリと身体が硬められていた。
「でかしたぞ! シェードガイ!」
ハンマーのような両腕を振り被っていくオモシ。
「ナックルハンマー!!」
「お前の力を見せてみろミチル」
ピンチにも関わらず青き剣の能力に縋った。
その時、青き精霊の剣がロードの手元を離れて、シェードガイの横腹へと勝手に突き刺さった。
「――――っ!!」
その攻撃に耐えかねたシェードガイは、ガッチリホールドを解いてしまう。
シュルシュルと手足が解放されたロードは、手元から離れた青き剣を掴み取り、引き抜いてオモシを一閃に切り裂いた。
「おっ?」
腕や首が切断されていく。そしてオモシは霧散化していった。
その場でぐるりと回り、ロードはシェードガイを狙う。
「このインチキヤローがあああ!!」
ズイッと立ち向かうシェードガイだが、二本の剣を持つロードは、貝殻の鎧で覆われていない部位を切断され、
「おおおおああああああ!!」
霧散化していくシェードガイだった。
「…………」
終わった戦いを後に魔物狩り達の方を見るロード。
「ロードこっちは俺たちに任せろ!」
バスタードさんが近づいてきた。
「オモシにシェードガイ、B級か、かなりの大物を一人で仕留めたか……」
「バスタードさん、スワンを見かけませんでしたか? そちらの方へ向かったはずなんですが……」
「見ていない、不味いなこんなとこで一人で迷うのは……」
「オレはスワンを探します」
「お前なら一人でも大丈夫か……分かったこっちも見かけたら保護する」
「助かります。では――――」
ロードはスワンの走って行った方向へと目指していくのであった。




