第228話 バカデカテの猛攻
スワンの前にバカデカテが立ちふさがった。
(しつこい……この状況でもわたしを狙ってくるなんて……)
フッと両腕を伸ばすバカデカテ。対抗するのは井戸から持って来た水の手。
ガシッとお互いを掴み合うヒトデの手と水の手。
(こいつ一体だけなら、わたしが倒す)
「やる気か? 俺が誰だか分かっていないな……」
「知ってる魔王の眷属使魔」
「ほう……答えを分かっておきながら、あえて難問に挑むか?」
バシャンバシャンと水の腕がヒトデの手によって握りつぶされた。
「勉強不足だ……愚か者」
バカデカテの腕がスワンを狙う。
「くっ!?」
すかさずダッと後へ下がっていくスワン。
そして屋根伝いにジャンプして登っていく。
「水霊の矢」
ビビビと水で作られた三本の矢がビュンとバカデカテを狙う。
「不正解……」
バカデカテが三本とも手の甲でバシャバシャバシャっと防ぐ。
そしてスワンがいた屋根をバカデカテは手を使って掴んだ。そのままの勢いでジャンプして、もう一方の手でスワンを狙う。
タタタッと逃げるスワン。屋根伝いに跳んでいき振り返る。今まで自分の走っていたところに手がドオンとぶつかった。
「水霊の槍!!」
下がりながら攻撃するスワン。
「不正解……」
バシンと手の甲できっちりガードする。
「水霊の三つ又の槍」
今度は三方向からの攻撃だった。
「――――!!」
バカデカテも驚いた。三つの方向から攻撃が来たのだ。そして水の槍が炸裂する。結果は、
「……応用は出来るようだが不正解だ」
バカデカテは自身を包み込むように大きな両手で身を守った。
(何その手、全然攻撃が通らない)
(そんなの効いてないんだけど)
「手撃……鷲掴み!!」
その時、スワンは見た。10メートルにまでなったバカデカテの手を、
ドオン!! とスワンの後ろの建物を鷲掴んだ。
(嘘でしょ……)
(手が肥大化した)
「手撃……」
バカデカテの猛攻はここからだった。
「はたきつぶし!!」
左手を構えてスワンに対して、攻撃を放った。その攻撃はスワンの立っていた屋根ごと叩き潰された。
「うっ……くっ……」
スワンは辛うじて避けることに成功した。しかし、先ほどの肥大化した手の鷲掴みが残っていた。そして――
バキキキキと建物をその握力で無理やり千切った。
「手撃……投げ飛ばし……」
右手で建物を持ち上げたバカデカテ。
「――ハァ!!!?」
その規格外の攻撃手段にスワンは思わず声を出した。
「死ぬなよ」
バカデカテがそう言った。そして建物をスワンに向けて投げ飛ばし、
ズドーーーーンという激しい音が、夜の城下町に響き渡った。
サッと回避したスワン。瓦礫も飛んでいるがそちらは当たらなかった。
(思っていた奴と全然違う)
(なにこれ、見た目と攻撃の凶暴さが一致しない)
「いたぞ!」「人間だ!」
その時、粘土人形のような魔物ドデグたちが現れた。
「こんな時に……」
スワンは手を包むような形にして、魔物たちを水で包み込む。
「このままアイツにぶつけてやる」
スワンは魔物を捕えた水の塊をバカデカテにぶつけようとした。
「不正解……」
仲間の命などなんとも思わないかのように右手で握りつぶされた。
「仲間ごと潰すなんてあんまりだ!!」
「黙れ何か問題でもあるのか!? 手撃鷲掴み!!」
地面に立っていたスワンを捕えようとしたが、サッとジャンプされて躱された。
「水霊の手!!」
手を前に突き出すような仕草をすると水の腕が現れた。それを手で掴むバカデカテ。
バシャンとすぐに水の腕は弾けだした。
「さっきと同じ手だと思った? 大間違い」
潰されて散らばった水が弾丸のようにバカデカテに襲い掛かる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドと攻撃がやっと当たった。
屋根の上に登るスワン。上からバカデカテを見下ろしていた。
(こいつの恐ろしさは十分に分かった)
(皆の所に連れて行ってしまったら、人がたくさん死ぬ)
(そうはさせない)
(わたしがここで倒すんだ)
(絶対に……)
固く誓うスワンだった。




