第222話 青き精霊の剣に能力をつけてみる
オーイワ国・森。
時刻は午後19時を回っていた。
裏切りの瞳を持つロード。その隣にスタンバイするスワン。
そして地面の隠し扉から覗くクウエン・リード。
「どうだい? 魔物の反応は……」
クウエンが地面の扉から覗くように訊いてくる。
「問題ない。そっちは?」
「こっちも隊の皆は待機に入った……突入前にそれぞれ鋭気を養っている。ロードもそろそろ中へ入ってくれ、見張りはもういいそうだ。少し休むといい」
「分かった……」
「スワンさん準備はいい……行ける?」
クウエンが訊いて来るが、
「……………………」
スワンは聞いていなかった。
「どうしたスワン、大丈夫か?」
「えっ! ああ、うん、大丈夫」
「緊張しているのか?」
「違う、どうしようかと思って……」
「何が?」
「ロード、精霊石の剣を持っているでしょう。その剣に能力をつけてあげるか迷っていて……」
「――!? スワンそれは一体どういうことだ?」
「あのね。教えていなかったけど精霊の剣に能力をつけるには精霊を宿さなくてはならないの。ロードなら精霊を大事にしてくれるのはわかるけど……命がけの戦いに精霊を出すべきかどうか……ううん。ここはロード生存の確率を上げるため精霊を宿すべきか……」
「精霊を宿すと能力が発揮されるのか……?」
「そう、出番だよミチル」
スワンの胸の宝石から優雅な青い鳥が出現した。
「あの青い剣に宿って――ミチル」
スワンの言う通りに青い剣に宿っていく青い鳥の精霊ミチル。
「これでロードは、その剣を持つと精霊の能力が発揮できるはず」
「どんな能力なんだ?」
「それは発動してみないとわからないけど……」
「オレもミチルって呼んでいいか?」
「うん、いいよ」
これでロードの精霊の剣には新たな能力が備わった。
「だが、心配なのはスワンの方だ。魔物の大群の中をたった一人で忍び込むんだ……とても危険だ……こんな土壇場で言うべきではないのかもしれないが……失敗すれば命はない。イヤなら今すぐやめていい……そうだ、オレが援護を、いや囮になればスワンはだいぶ安全に行動でき――」
「ストップ、それだとロードが危ない、なしなし、それにせっかくあげた精霊の力を使いこなす前に命を落すとわたし泣くよ。そんな無謀なことするくらいなら返してミチル」
スワンが珍しく不機嫌になる。
「悪かった……」
「まぁ、心配してくれるのは嬉しかった。ありがとう。けど大丈夫、上手く出し抜いてやるから私の成功を祈っていて……」
「成功よりも無事に帰ってくることを祈る……」
スワンはその一言でニコッと笑顔になった。
「そろそろ行ってくれるかいスワンさん」
クウエンが催促する。
「分かった……水雲鳥!」
スワンの身体が水の鳥のように変わった。
「それじゃあ行ってくる……信じて、わたしは大丈夫」
スワンの言葉を受けてコクンと頷くロードだった。
スゥーーーーーーっと森の上へ飛んでいくスワンだった。
「本当に鳥になって飛んでいった」
「クウエン……行こう」
「あ、ああ……」
地面の隠し扉の下に顔を引っ込めるクウエン。ロードは続いて梯子に足をかけ地面の下に潜り込んで行くのだった。




