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第219話 もう逃げない!!

 聖堂の中でハズレとタテトルが熾烈な戦いをしていた。

 一方は燃える剣で攻撃し、もう一方は鉄のように固い爪で攻撃している。

 ガキキキキキキキキキキキキキンと金属音がこすれる音が続く。


「無力な剣だ……貧弱者がぁ……」


 タテトルは不敵に笑っていた。


 ハズレはそれを隙と見た。ピンと左手で火薬玉を弾き、炎の剣によって撒きちらされた火の粉に当り、ジュッと音を鳴らして、


 ドオーーーーーーンと大爆発を起こした。


 ズザザザーーと爆風に吹き飛ばされるハズレだったが、彼も素人ではない受け身の姿勢は心得ていた。ダメージはない。しかし――


「貧弱者がぁ!! この程度で俺が倒されるものかぁぁ!!」


 両の掌を合わせて大きく振りかぶりハズレを思いっきり叩きつけた。


「がはっ!!」


 背中をぶたれたハズレが血を吐く。そしてタテトルにブンと投げ飛ばされた。その倒れた横にはハズレの羽根帽子が落ちていた。


「力の差はわかったな貧弱者」


「ううぅ……はぁ……はぁ……」


 仰向けに倒れるハズレは左手でお腹を押さえていた。


「最後にもう一度訊こう……あの男はどこだ?」


 天井を見ていたハズレは、


(あの男)

(なぜ逃げないんだ?)

(ブースタードさんたちと約束したからか?)

(このままじゃ死ぬぞ)

(何の意味もなく死ぬぞ)

(せっかくの命が意味もなく終わるぞ)

(まだ間に合う、身体は動く、逃げられる)

(逃げられる)


 ハズレは起き上がった。


(だがそれは……)

(一人だったころの話だ)


 ハズレが右腕の腕輪を見る。ロードとスワンを思い出させる指輪が取り付けられていた。


(ロード、スワン……オレは最後まで戦う)

(逃げない、これがオレの道だ!!)


 ハズレの表情が凛々しくなっていた。それから羽根帽子を頭に被せる。


「お前の答えはわかった……他のものに聞くとしよう……本物の突撃を見せてやる」


 タテトルがとどめの宣言をしてくる。


(感覚を研ぎ澄まさせろ)

(怯えるな怖がるな)

(目を開き目を逸らすな)

(絆を結んだ友の為に)

(絶対に逃げるな)


 ハズレの目がギンと猛烈な眼力を持った瞳に切り替わる。


「全身複雑骨折、躱せると思うなよ――死ね」


 まさに刹那の瞬間だった。タテトルの突撃は躱しようがないほど早かった。


(――逃げるな)


 目を見開いたままのハズレ。剣を前に突き出した。そして――


 ハズレとタテトルが接触した。両者がすれ違うようにもなった。


 結果はハズレが右腕を負傷し倒れ込んだ。そしてタテトルの方は――


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 右目に炎を纏った純銀の剣が突き刺さっていた。


 そうハズレはタテトルが突っ込んでくる直前まで目を離さなかったおかげで、タテトルの眼球に剣を突き刺すことに成功した。


「おおおおおおおおおおおおお!!」


 急いで剣を引き抜くタテトル。右目からは血がダラダラ零れ落ちていく


「おのれ~~よくも~~おおおお!!」


「――ハァ!!」


 左手で捨てられた剣を掴みタテトルに反撃しに行くハズレ。


「ぬう……」


 始めてタテトルが攻撃を躱した。バリンとガラスを割って外に出て、はるか下の階へ逃げていくのだった。


「待て!! くっそ――お前を逃がすわけにはいかない」


 ハズレが呼び止めたときにはもう遅かった。ハズレは割れた窓ガラスから飛び降りれそうな建物伝いに飛び乗って下の階を目指していく。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 メルクエム国・城下町。

 壁にめり込んだバリスガオ。

 ミンド隊の戦士たちが各々の剣で斬りつけて倒していた。


『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ』』』


「ミンド戦士長! 街に落ちたバリスガオは殲滅完了です!」


 一人の戦士が報告した。


「うむ」


「岩も魔物も降って来なくなりました」


「そのようだな……城はゲンガ殿、ブースタード殿に任せて、我らは当初の予定通りアンダ隊の元へ向かう! 急ぐぞ!」


『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ』』』



 ◆ ◆ ◆ ◆


 

 メルクエム国・森の中。

 魔物に進撃を許してしまったアンダ隊。

 火の矢を撃つことで草原や木々を燃やして、敵の進撃を阻む作戦に出た。

 辺り一面がメラメラと燃えている。


「くっそ――進めねぇ~~」「フン火などオレには意味がない」


 炎耐性のある魔物は進軍していた。


「……矛壁」


 その時、ドルグが背中の100メートルもある剣先のない土剣を取り、振り上げて森へと降ろす。そうすると木々を退かして道が出来た。


「進め奴らを逃がすな!」


 ドルグが命令する。


「進め!」「奴らを逃がすな!」「人間ども!」


 指揮も高まった魔物たちは進んで行く。


「火矢放て!!」


 ガガガガガガとあちこちに触れて火で燃やす火矢。


「小賢しい真似をこの程度の火で我らの歩みは止められない」


 ドルグが見ているのは遠くにあるであろうメルクエム城の方角だった。



 ▼ ▼ ▼



「ミンド隊は何をしている!」


 アンダ戦士長がイライラしていた。


「先ほど伝令でメルクエム城下町に奇襲があったため遅れると……」


「おのれ~~自国の民優先か!」


「アンダ戦士長奴らが近いです!」


「分かっている……火矢を撃ちながら退け! 少しでも足止めをさせろ!」


「第二地点までアンダ隊退け!!」


『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ』』』


 戦士たちが続々と退いていく。


「重い連中の集まりだから鈍足なのが幸いしておるが……作戦まで持つかどうか……?」


 丘や森がメラメラと燃える主戦場だった。


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