第218話 ハズレvsタテトル
炎が燃え盛る大広間でハズレとタテトルは対峙していた。
「お前の顔は覚えているあの双剣使いと一緒にいたな」
タテトルが引っ込めていた首を出す。
「頃合いだあの男はどこにいる?」
タテトルが身体の側面に納めていた腕をズリュっと出す。
「無敵を誇った甲羅……この背の傷の汚名を返上する」
タテトルがズリュっと足を出す。
「オレを挑発したお前も同罪だ。ここで殺す。ヤツの居場所を教えるのなら……後回しにしてやる……その隙にどこへでも逃げてニ度とオレに会わないことだ貧弱者」
タテトルが立ち上がった。
「ロードの居場所を教えて逃げる? 違う……お前を倒してロードには会わせない」
ハズレが線を引くように剣を振ると、シラユリヒメからアカユリヒメに変わった。
「ならば」
タテトルが再び首、腕、足を仕舞い込んで、
「死ぬ頃にもう一度聞いてやる!!」
大甲弾という技で突撃してきた。アカユリヒメとの接触時ギィンという音が響く。
そしてタテトルは飛び出た尻尾によって軌道を変えハズレに大甲弾で飛び込んで行く。
ハズレはタテトルの飛び込んできた下をスライディングする形で避け、剣による攻撃も忘れない。その時、ギィンという音が響く。
「フン貧弱者な剣戟だ……」
シュルシュルシュルンと回るタテトル。
炎の剣で円を描きそれをタテトルに向けて飛ばすハズレ。ゴオオオオッとした豪火がタテトルを襲う。
「また炎か……大甲回!!」
高速なスピンによって弾かれる炎。そしてそのままハズレにタックルするタテトル。
バッと足で床を蹴って空中で側転するハズレ。何とかタックルは回避できた。しかし、ビタンとういう音がした。それはタテトルが尻尾で床を叩く音だった。
「――――!!」
タテトルが軌道を尻尾によって無理やり変え、宙にいるハズレにタックルした。ドッと腹に直撃するハズレ大広間の天井ごとタテトルと共に飛び出した。
「ぐう、うっ、だぁ!!」
ダッダッダッと屋根の上を弾むハズレ。
「寝ている暇はないぞ貧弱者!! 大甲転!!」
上から縦に横回転をするタテトルが迫っていた。
屋根の上で横回転を縦にして削っていくタテトル。
「外したか……致命傷は……」
元の状態に戻ったタテトル。
「ぐう……さすが皆が恐れていただけのことはある。常識を外れたゴリ押しの嵐……これが魔王の眷属使魔か……」
ハズレは左腕を抑えていたどうやら食らってしまったらしい。骨にひびが入っているような痛みに悩まされる。
「大甲弾!!」
ダッとハズレに高速でタックルして行くタテトル。
その時、偶然にも目の前にバカデカテが放った岩が落ちてきてタテトルが食らった。
「岩!!」
屋根は崩れ、ハズレの足場にもひびが入る。ドドドドドドドドドと屋根が崩れていった。
「バカデカテの奴! まだ岩を投げているのか!? いらぬ邪魔を!」
瓦礫の中からタテトルが顔を出す。
「頑丈な奴だ」
ハズレが屋根の上から見下ろす。
「大甲弾!!」
タテトルが屋根の上から顔を出すハズレを狙った。
ドーンと背後の城の壁に突撃する。
「外したか? 奴めどこへ行った?」
ハズレは屋根の上から姿を消した。しかし決して外してはいなかった。何故なら屋根に血が付着していたからだ。
「フン逃がさん……」
タテトルは壁から飛び降りた。
▼ ▼ ▼
息も絶え絶えのハズレが壁を背に休んでいた。
(どうする……ヤツはすぐ血を見つけて追ってくる……)
(時間があるうちに何か手を……)
(しかし炎も掻き消された。剣による攻撃も試みた。二回とも無力)
(飛来してきた大きな岩の直撃でも大したダメージにはなってはいない)
(頭が痛くなる奴だ)
はぁーーーーっと息を吐く。立ち上がるハズレ。そして走り出す。
(それでもやるしかない)
(ロードが勝てないと言ったんだ)
(引き合わせてはいけない)
大きな扉を超えると聖堂のような場所に出る。そして目の前にはタテトルがいた。
「いたな……寝ている暇なんてないぞウサギ」
「――来るなら来い」
ハズレは燃える剣、アカユリヒメを右手のみで構える。そして左手には火薬玉四つを指の間に仕込んだ。
「貧弱者はどいつもこいつも力の差が分からん奴らばかりだ! 大甲弾!!」
ハズレに向かって突撃してくるタテトル。
ハズレは火薬玉を前に投げた。そして燃える剣で斬る。すると大爆発を起こした。
(どうだ――利いたか)
「――利かぬわ!!」
タテトルの突撃をもろに食らうハズレだった。
「どうだ……」
シュルシュルと回るタテトル。そして石像へと吹っ飛ばされていくハズレ。羽根帽子が落とされた。
タッと立つハズレ。息は絶え絶え。口からは血反吐を出している。
しかしハズレは走り出してタテトルに接近戦を挑む。
「はああああああああああああああああ!!」
ガキキキキキキキキキキキキキキキキキンと、連続で炎の剣と相手の爪が、金属音を響かせ鳴らす。
(こんな化け物を相手にしているのに)
(こんなに追い詰められているのに)
(何故だろう)
(逃げないのは何故だろう)
ハズレは嬉しそうだった。




