第216話 魔軍の指揮官
メルクエム国とオーイワ国の国境・丘。
4500を超える魔物たちとアンダ隊1000人を超える人々が戦っていた。
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ』』』
もはや主戦場は阿鼻叫喚状態にあって、魔物狩りや戦士たち魔物も大声を上げていた。
「ぬん!!」
「オオオオオ!!」
アンダ戦士長が魔物を斬り伏せる。
「そこかタテトル!!」
そして目の前には会ったこともないが情報通りの亀のような姿をした魔物がいた。
アンダは武器を剣から鈍器に持ち替えた。
「ぶん!!」
アンダがタテトルを破壊した。
ガシャーンと砕けた殻は霧散化して消えていった。
「やった! アンダ隊長がタテトルの甲羅を割った!」「倒したんだ奴を!」「よし魔物どもを一掃しろ!」
戦士たちが騒ぎ士気が高まる。
「ひぃ――タテトル様が」「撤退撤退!」「嘘だぁ!」「逃げろーー!」
魔物たちは指揮官を失ったことで撤退していく。
「よくもタテトル様をおお!!」
エビとトカゲを足して尻尾をドリルの形にした魔物エビゾリルが戦士たちに反撃する。
「ぐあああ!!」「うわあああ!!」
ドリルのような尻尾が戦士たちに襲い掛かる。
「エビゾリルごときC級がぁ! 邪魔だ!」
巨大な斧を振りかぶり上から下へとズンと降ろしたのは、オニガワラという魔物狩りだった。エビゾリルは脳天をかち割られた。
「魔物狩りのオニガワラだ!」
戦士の一人がいち早く先頭に立つ魔物狩りを見てそう言った。
「魔物を逃がすなぁ!!」
オニガワラは吠えた。
引き下がる魔物の兵。それを追いかける戦士の軍勢。
「アンダ戦士長、我々も行きましょう」
戦士の一人が話しかける。
「違う……さっきの奴はタテトルではない情報からして、あんな程度の硬さではないはずだ。一体魔物たちは何のためにあんなニセモノを……」
「さっきほどの魔物がタテトルでないのなら一体誰が指揮を取って――」
その一言でアンダは気が付いた。この戦況が罠だということに……
「くそーー退けーー全員退けーー!!」
アンダが声を出したが誰も引き返さない。どころか止まりもしない。
「くそ――聞こえんか、止むおえん合図を出してあの作戦に着く」
「アンダ戦士長どういうことです?」
「奴らの罠だ! タテトルの奇襲に見せかけた! 奴らの――」
「見せかけ?」
「指揮を執っているのがタテトルでなければ誰になる!?」
「それは――――」
その時ズズズンと地震が起きた。いや違う何かが動いた振動が地面に伝わって来た。
「おお!」「何だ!?」「地面が盛り上がって……」「さ、下がれ!」
戦士たちが盛り上がる地面に動揺していた。そして――
「馬鹿……め……が……愚かな人間ども……タテトル様を倒し……逃げる我らに勝ったと思ったか……あのタテトル様は影武者……まんまとおびき出されたんだ……お前たちは……」
エビゾリルはそれだけ言うと霧散化して行った。
地面の盛り上がりの正体は250メートルの巨大土人形ドルグという眷属使魔だった。
「くっ――引――!?」
ドルグは追ってきた戦士たちに覆いかぶさるように倒れた。それだけで、50人近くの戦士が死んだ。
「なんてことだ――今までのタテトルの奇襲は、俺たちに常に奇襲がタテトルであることを思い込ませるためのものか!?」
アンダ戦士長が考察する。
「退け! 退けーー!!」「退けーー!」
戦士や魔物狩り達は退いていく。
「今度はこちらが追う番だ……行けドルグ隊!!」
眷属使魔ドルグが命令を出すと反撃する魔物たちだった。
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
「人間どもにゴワドーン様に立てつくことの愚かしさを思い知らせるのだ」
戦況は一気に激変した。優勢は魔軍だった。
◆ ◆ ◆ ◆
メルクエム国・中央地。
バカデカテが飛ばしているであろう大きな岩が、街や城を襲う。もう既に25個は降り注いだであろう。
「これが奴らの戦い方だというのか?」
ゲンガ戦士長は未だに振り続ける大きな岩を見てそう言った。
「これでは難攻不落と言われたオーイワ城も落とされたのも頷ける」
「ゲンガ戦士長! ミンド隊が街で魔物たちと遭遇、足止めを受けております!」
走ってくる戦士が言う。
「何ぃ!! くっ街も城も攻められるとあっては作戦どころではないか!? おまけに顔面が鉄に尖った魔物たちどうすれば――」
「ゲンガ戦士長! ブースタード副隊長からの伝達です! 壁の魔物は壁際へ引き付けて壁に突き刺さったところを背後より攻撃するのです!」
ブースタードに伝達を頼まれたマントの魔物狩りがそう言った。
「そうか! 急いで街にいるミンド隊にも知らせてくれ!」
「わかりました! それとお気お付けください! タテトルがこの城に侵入して来ました!」
「何ぃ!?」
ゲンガ戦士長は驚いたが、それだけ伝えるとマントの魔物狩りは街の方へと走って行った。




