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第211話 話しかけてくる魔物狩り達

「クウエン・リード……」


 ハズレがその名を呼んだ。


「何か?」


 ロードが尋ねる。


「特に用って訳じゃないんだ。ホラここは年配たちばかりで若手はオレやパーティーメンバーくらいで、話し相手がいないんだ」


「なるほど……確かにおじさん達ばかりだ」


 ハズレは同意した。


「キミはキンさんの純銀の剣を持っていると聞いた」


「ああ、シラユリヒメか、キミもキンさんと面識があるのか?」


「ああ、キンさんの最後の名剣キントンテンを授かった……あの人には色々と教えてもらった」


 クウエンは金色に輝く剣を見せてくる。


「ところでロードくんと言ったかな? ハズレさんが言っていた若手ナンバーワン……」


「ナンバーワン? 何の数字だ?」


「強さの序列さ、一度に25体の魔物を葬ったことは凄いけどキミの名前は聞いたことが無いんだよな。これでも結構遠出まで旅しているのに……」


「問題ないよ、オレやバスタードさん、グレイドさんもロードのことを知らないし、ギルドにすら所属していない」


「そうなのか?」


 クウエンが訊いてくる。


「まぁ魔物狩りではなく厳密にいえば勇者なんだが……」


「勇者?」


「まぁ何でもいいじゃないか、ロードはあのフレアザーズを一人で仕留めたんだ」


「えっ!? あのA級の魔物、二頭一対のフレアザーズを一人で? そいつは凄い」


「まぁ、キミも奇襲部隊所属だろ。強さに関しては明日……嫌でもわかるさ……オレも散々驚いた。」


「そうか、ハズレさんが驚くぐらいなら期待が持てそうだ」


 クウエンの胸にはハズレと同じくプラチナ一つ星のメダルが飾られている。


「剣が二本、ひょっとして双剣使いか? 珍しいな……」


「そうなのか?」


「ああ、普通は片手で剣を持つと重くてうまくバランスが取れないんだが……それにスピードも体力の減少速度も力も激減する。――!? その鞘とつばは金閣寺の……」


 クウエンが青き剣を見て推理する。


「これは精霊石でトンさん、テンさん、カンさん達が作ってくれたものだ」


「え!! カンさんまで!! あの人立ち直ったのか!?」


「ああ、ロードが相談を受けてさ」


「そうかキミのおかげで、いつかまた顔を見に行こうかな……」


「オイ! クウエンそろそろ行こう!」


 その時クウエンの仲間らしき人物の声が上がった。


「いつまーで話しこんでーんだ!」


 もう一人の仲間も声を掛ける。パーティーメンバーらしい三人が呼んでいた。


「仕方ない。じゃあ明日は共に魔王打倒のため力を尽くそう」


 手を振りながら退散していくクウエン・リードだった。


「ああ」


 ロードも手を振り返してあげた。


「さてオレたちも行こう」


「夕食はどうする? スワンを待つか?」


「若造共がオレも昔を思い出す……」


 ザッと足音を鳴らせてやって来たのは最強の男グレイドだった。


「グレイドさん」


 ハズレはそう呼び。


「お爺さん」


 ロードはそう呼ぶ。


「ああ、初老のお爺さんだ」


「てっきり会議の後の最終決議にも出るものかと……」


「ちょっとこっちの金髪の坊主に用があってな……」


「用とは?」


「お前さん手の平サイズの丸くて大きな宝石を持っていないか?」


「持っていない」


「そうかオレの勘違いか」


(大きな宝石ってまさか……)

 ハズレは思い至った。


「グレイドさんはもしかして秘宝玉のことを言っているんじゃないですか?」


「ん? 秘宝玉?」


「今言った丸くて大きな宝石のことですよ」


「ああ、こいつは秘宝玉って言うのか……」


 荷物の中から秘宝玉を取り出して見せる。丸くて大きな宝石だった。


「やっぱり持っていたんですね」


「まぁな」


「凄い綺麗だ」


「坊主はこれと同じものを持っていたりするのか?」


「いやオレの持っている秘宝玉は……」


 手のひらを水平にして質量を持たない秘宝玉を表した。


「オレのとは違うな、ただ輝いている丸い物体か……」


「一体なぜオレの秘宝玉は他の人と違うのでしょう」


「ん? 他にも見たことがあるのか?」


「はい真っ黒い秘宝玉を二つほど……」


「そうか、坊主の秘宝玉が何故その形なのかは知らないが、持っているのならそれでいい。明日の活躍期待してるぞ」


「はい」


「それとな坊主……先に命を散らすのはオレだ。お前はその後でいい」


 去り際に放った言葉だった。


「魔王は俺に任せな」


 背を向ける最強の男グレイドだった。


「…………」


 呆然と立ち尽くすロード。


「さすがに今回はロードの出番はなさそうだな」


「だといいが、魔王は一筋縄ではいかない」


 ロードは去って行く初老の男の背中を見続けていた。

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