第210話 ハズレからの贈り物
メルクエム国・城の庭園内。
作戦会議も終わり、時刻は夕刻へと差し掛かった。
ロード、スワン、ハズレは一緒にいた。
「はぁ~~脱出口の説明長かった」
スワンが疲れを吐き出した。
「ハズレと俺たちはわかれてしまったな」
ロードが呟いた。
「私なんて途中から敵国に入って単独行動なんだけど、流石に不安になる」
「スワン、だが……」
「わかってる重要な役回りってことは、それよりハズレのほうは何とかならない?」
「それに関しては日頃の行いとしか言えないな……いざ奇襲に行っても命欲しさに逃げ出すようならいらないからな。オレが後ろで出番があるかも分からない、待機にさせられるのはわかるさ」
「何ソレ! ハズレは逃げ出したりしない! 抗議して来る!」
スワンが声を張り上げた。
「ありがとうスワン。けどいいさ。以前のオレは自分ひとりで生きていた。金にならないような仕事は何一つしなかったからさ……追い出されなかっただけましさ」
「何だそれは、以前のハズレは知らないが今のハズレは違う! この前のフレアザーズ戦では命がけで戦った! 抗議して来る!」
「私もあの人たちにハッキリ言う!」
「ああ、ハズレはオレたちと一緒にオーイワの国を救うんだ」
(ロード、スワン)
ハズレは思うところがあったようで黙っていた。だが、踵を返したロードとスワンを見て我に返った。
「いいんだ二人共……」
「「――!!」」
「ハズレ」
スワンが振り返る。
「良くないハズレはもう昔のハズレではない……勘違いしている人たちの誤解を解かなくては……」
ロードは下がらない。
「ロード、その気持ちだけで十分だ、だから――」
「何を言っているお前は臆病者と思われて黙っていられるわけがない……お前はオレが認めた立派な救世主だ」
「――――!!」
ハズレは目を見開いた。
「行こうスワン」
「うん」
「違うさロード」
「――!?」
「オレがここで待機するのはキミ達の為でもある。考えて見ろよ。もしオーイワで奇襲部隊……ロードやスワンの身に何かあったら誰が助けに行く? つまりオレさ……キミ達が窮地に陥った時、颯爽と駆けつけるのがオレの役目……待機ってのは戦いが佳境に入ったとき出番が来る。ときが来たらキミたちを必ず助けに行くよ」
ハズレは嘘を盛り込みながら真実を話した。
「そうなのか?」
「そうさ」
「まぁそう言うことならいいんだ……」
スワンとロードは落ち着いた。
(ありがとう……ロード、スワン、キミたちなら信じられる)
ハズレはこんなことを思っていた。
「あっそうだこの裏切りの瞳、お前にあげるよ」
首にかけていた裏切りの瞳の宝石をロードに渡した。
「借りるじゃなく、くれるのか?」
「ああ、キミは危なっかしいからね。あげるよ」
「ありがとう」
「じゃあわたしからはこれを……」
スワンが中指の指輪を外してハズレに渡した。
「くれるの? ドルちゃん」
「違う私は貸すだけ戦いが終わったら返してもらうから……それと……二人とも手を出して」
「「――?」」
二人はきょとんとした。
「早くして……」
ロードとハズレは右手を出した。
スワンはそれぞれの手にあるモノを握らせる。
「黄色い宝石?」
手のひらに収まるくらいの宝石を渡してもらった。
「換金してほしいのか?」
ハズレの方は赤い宝石だった。
「――違う!! いいからしかり握りしめてて……」
スワンが人差し指を光らせて宝石に光を当てていく。
「――――!!」
そうするとそれぞれの色、黄色と赤色に宝石は光輝いた。
「二人共、その宝石を返して……」
「?」
ロードはスワンの右手に黄色い宝石を返す。
「今の何だい?」
ハズレはスワンの左手に赤色の宝石を返す。
「まだ、ないしょ……」
スワンが宝石を受け取って走り出す。
「二人共、少し遅くなるから先に戻っていて……」
そうしてスワンは駆け足で去って行った。
「スワン……」
ロードがポツリと呟く。
「どこに行くのさ……!」
ハズレが訊く。
「ないしょーー!!」
「どうするハズレ……?」
「行かせてあげよう女の子に秘密はつきものさ」
「そうか……」
その時、一人の若者が二人の前にやって来た。
「やぁ、キミたち」
「「――!!」」
「まだ城の中に居たんだね、良かった話して見たくて探していたんだよ」
さわやか系金髪の青年だった。ロードたちには見覚えある人物だった。
「クウエン・リード」




