第207話 お披露目、精霊の術
「それでドルグの方は手はずどうりとしてタテトルはどうする? ヤツのあの硬さにどう対処するのだ」
アンダ戦士長が訊く。
「先日も我はそのせいで勝気を掴めず命を落とすところだった」
ゲンガ戦士長が言う。
「その件は専門家であるバスタード氏に相談したのだが何かいい方法は思いつきましたか?」
ミンド戦士長が訊く。
「炎の攻撃以外での方法という話なら、鈍器のたぐいで見た目からは判断がつかない――ヤツの硬さにもよるがかろうじて内部まで衝撃を与えることが出来るであろう。打ち続ければ表面上、そうは見えなくても奴自身のダメージにはつながる。上手くいけば奴の甲羅は砕けるかへこみを見せるだろう」
腕を組みながら対処法を説明するバスタード。
「なるほど」
ゲンガ戦士長が呟く。
「フンまぁその案は認めなくもない」
アンダ戦士長が両目をつぶる。
「では鈍器をあるだけ用意しなくては……」
ギンゴ戦士長が言う。
「それでオーイワへの奇襲はいかがいたします?」
縦に長い帽子を被った大臣が言う。
「そのバカデカテという魔物がいる限り、やはり正面から行くほかないでしょう」
もう一人の大臣が言う。
「それに関しましてこちらに案があります……」
「バスタード殿?」
大臣が首を傾げる。
「おお、その考えとやら、ぜひ聞かせて欲しい」
メルクエム王が食い付いた。
「それについてまず彼らを紹介しましょう。本日連合への参加が決まりました精霊の術を使うスワン・ブルースカイ。A級魔物を討ち取ったロード・ストンヒュー、魔物が近づくと探知する宝石を持つハズレ・マスカレード」
「精霊の術?」「A級の魔物を討ち取ったと?」「魔物を探知する宝石?」
ざわつく会議室。
「その娘と青年たちが?」「バスタード殿いくら何でも荒唐無稽すぎますぞ……?」
疑ってかかる大臣たち。
「まぁまぁ皆の者ではその精霊の術とやらを見せてもらおうではないか」
静まり返る会議室、テーブル卓の隅にいるロードたちに視線が向く。
その時、
(え~~~~見せるの~~聞いてないんだけど……)
スワンはそう思ってロードとハズレを見ていた。
コクリと頷くロードとハズレそれは見せた方がいいという知らせだった。
「時間の無駄です。娘つまらんよ器用など見せてくれるな」
アンダ戦士長がそう言う。
「……………………」
その一言にムカツキを覚えたスワンは、右手をメルクエム王の背後にある花瓶に向けてかざしていた。
その時誰にも気づかれず花瓶から水を取り出して、刹那の瞬間。
スゥーーーーっとメルクエム王の頭目がけて水が走る。
「――――ッ!?」
メルクエム王は驚いた。
「「「おお!?」」」
周囲の大臣も驚いた。
「メルクエム王!!」
側にいた兵士に駆け寄られるが、
「良い私ならば問題ない」
メルクエム王が兵士を制止させる。そして、
「戦士長さん達も大したことはない、みすみす魔王に王様の首を差し出す気?」
メルクエム王の冠をその手に持って、どうだ!! と言わんばかりに片眼を閉じ力を見せて来た。花瓶の水はまだ宙に浮いている。
「おのれ娘……馬鹿にしおって……」
ぼやいたのはアンダ戦士長。
「フフフ、ハハハいやはややられました。我々としたことが今のが魔物の仕業であったのなら王は死んでいた。ねーゲンガ殿」
ミンド戦士長は笑っていた。
「うむ、どのような者にも油断すべきではないと改めて実感し、痛感した」
ゲンガ戦士長は遠回しにスワンを褒めた。
「娘さんよ。我々にその命を預けてくれたのに、ぶしつけな質問であった許しておくれ」
冠もなくなったメルクエム王が言う。
「別に気にしていません」
傍に立っていた戦士に冠を要求されて手渡すスワン。その冠はメルクエム王の頭に戻された。
「大丈夫だってば……」
「そ、そうか?」
スワンの隣似たロードが今の行動に怪訝な顔をする。




