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第202話 オーイワに集う3体の眷属使魔

 オーイワ国・城塞下町

 魔王に襲われた国である。

 その日の夜のことだった。

 

「うっ……」


 大きな岩を持ち上げる人がいた。それを台車に乗せて下から上へと運ばせる重労働だった。彼らはこの国の住人ではいるが今では魔王によって奴隷のように働かされていた。


「休むなよ!! お前たちの代わりはいくらでもいる!! 役に立たないのならばすぐに頭を勝ち割ってやるからな!!」


 顔から手足が生えた。現場監督の様な魔物がいた。


 坂道には何体もの粘土人形らしき魔物の姿がある。


「そこ!! あくびしたお前!! お仕置きだ!!」


 大きな声で叫ぶ現場監督の様な魔物。その背後の草むらに複数名の人々が集まっていた。


「うわ!! やめてくれ!!」


 小さな粘土形は槍をあくびした男に差し向けた。


 その時、

(――今だ!!)

 複数人の男が鈍器を現場監督の魔物に振り上げた。


「へへへ」


 下品にも魔物は笑い。


「――ごっ!!」


 背後から殴りつけられた。数十回の鈍機による殴打によって魔物は霧散化した。


「!? オオガさん」


 一体の粘土人形が現場監督の魔物の姿を坂の下から探す。しかし見当たらなくなった。そして、


「――オイ!! アレ!?」


 坂の上を見て荷台を運ぶ手を止める労働者たち。


「皆聞いてくれ!!」


 一人の男が現場監督の様な魔物の位置から宣言した。


「何だアイツは!?」「オオガさんはどうした!!」


 粘土人形らしき魔物たちが騒ぐ。しかし、


「このまま従っていても俺たちの未来は決まっている魔王に皆殺しにされる未来だ!! そうなる前に武器を持って戦おう俺たちの国を取り戻すんだ!!」


 男は坂の下の労働者に対して宣言した。


「よし戦おう!!」「こんな奴らの言いなりはもううんざりだ!!」「魔物たちから武器を奪え!!」


 男の発言にその気になる労働者たち。


「止まれ!!」「静まれ!!」「働け!!」


 粘土人形の武器である槍が奪われようとしていた。


「よしこれで戦える!!」


 坂の上の男は小さくガッツポーズを決めた。しかし、


 ズンと空の上から落ちて来た。あるいは遠くの見張り台から降りて来た。


「「「――――!!」」」


 崖の上の男たちが振り返る前に……


「問題を起こしたな」


 縦に見開かれた異形の目がぎょろりと周囲を見渡す。そして、


「うわあ――!!」「ぎゃあ――!!」


 と、襲撃者である新たな魔物の手に鷲掴みにされる男たち。


「なんだ」「どうしたんだ」


 グシャ、グシャっと崖の上にいた男たちが次々に握り潰されていく。そしてその男たちの血が降り注いでくる。


「わぁーー!!」「何だ!!」「うわああ!!」


 坂の下にいた者たちは血を浴びせられ恐怖していた。


「ひっ!!」「化け物め!!」


 崖の上の生き残りである男たちがその襲撃者に鈍器を持って襲い掛かる。だが、


「「「うあああああああああああああああああああああ!!」」」


 グシャグシャとした生々しい音が夜の坂道に響き渡る。


「――ドデグ共!!」


 男たちを皆殺しにした襲撃者が粘土人形の魔物に向かって言う。


「バカデカテさま」「助かりました」「オオガさんは?」


 粘土人形たちが坂の上の一体の魔物を見つめる。


「死んだ」


 襲撃してきたヒトデのような身体に二足歩行のおまけに大きな手のひらを持った魔物名をバカデカテという。


「それより、そいつらを拘束だ……全員見せしめに公開処刑にしてやれ」


 そいつはゴワドーン眷属使魔の一体バカデカテだった。


「「「はっ!!」」」


 上司の命令に忠実に守る粘土人形たちだった。


「う、嘘だ!」「やめろ!」「死にたくね!」「うわあーーイヤだ!」「頼む働くからーー!」


「さっさと歩け!」「バカデカテ様に逆らうな!」


 働いていた男たちは粘土人形に拘束され連行される。


「相変わらずの用心対応だな……バカデカテ……」


 誰かがバカデカテに話しかけて来た。


「当然だ……タテトル」


 冷徹な子供のような声をあげるバカデカテ。


「俺の接近に気づいていたか」


 タテトルは言う。


「当然だ、オレの警戒に抜かりはない。お前の足音などすぐわかる。そんなことより死者をかなり出したらしいな……ただの偵察で何たる失態だ」


「ちょいと手違いがあってな」


「手違いで兵が死なれては困る……!? お前なんだその傷は――!?」


 バカデカテは驚いた。


「手違いだ……こいつをつけられた奴に兵を25は持って行かれた」


 タテトルは忌々しい傷を見てそう言う。


「何ィ!! たった一人にか!? 当然殺したのだろうな!!」


 タテトルに大きな手で指を差すバカデカテ。


「まだだジャリオスト戦士に加え精霊の術を使う女がいた」


「精霊の術だと? 人間がか?」


「そうだ」


「ふむ、どうやら収穫はあったようだな」


「これからゴワドーン様にご報告に行く……お前も来るか?」


「当然……もちろんお前もご報告があるだろう?」


 バカデカテがチラリと振り返る。


「帰ったのかドルグ……北はどうだった?」


 崖の上より高い巨象をした土人形がそこには居た。


「ここで話す必要はない、まずはゴワドーン様へご報告だ」


 そいつは眷属使魔のドルグという魔物であった。


「ならば行くか、ご報告に……」


 タテトル、バカデカテ、ドルグは魔王ゴワドーンの元へ向かう。


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