第199話 突撃対決
ロードが両手に持った剣でタテトルの突撃を抑えた。
がキキン!! 竜封じの剣と精霊の剣によってそのまま弾き飛ばされるタテトル。
「邪魔しおって人間め!!」
突撃体制のタテトルがあるべき姿に戻る。
「いいところで間に合っただろう?」
剣を構えるゲンガ戦士長の間へに立つロード。
「見るからに貧弱そうなやつが……」
その言葉はタテトルの油断だった。
一瞬だった。ザンッとロードは一瞬でタテトルとの間合いを詰め、両手に持った赤き剣と青き剣を左右に振りかぶり、
「――――!?」
そこからのロードの剣捌きは高速だった。右手の赤き剣、左手の青き剣でタテトルをどんどん押し込んで行く。
「ぬううううううううううううううう!!」
ロードは前へ詰め、タテトルは下がらざる負えないほどの剣の猛攻だった。
「小賢しい!! 甲鎧体!!」
タテトルは首を引っ込め腕をしまい完全防御の態勢を取る。
(硬い!!)
ロードの手がわずかに緩んだのをこのタテトルという魔物は見逃さなかった。
「ダア!!」
しまい込んだ右手の爪でロードに反撃をしてきたが、察知され躱された。そしてロードとタテトルの間に数メートルの間合いが出来た。
「身の程を知ったか? 貧弱者……動くなすぐ楽にしてやる」
タテトルは余裕の表情を浮かべロードに貧弱者と言った。
「どこのだれか分からないが……青年よ! 下がれ! 助けなど不要!」
ゲンガ戦士長がロードの前へ出ようとしたが、
「下がるのはあなたのほうです……巻き込まれるますよ……」
ロードは前へ出すまいとゲンガ戦士長を止める。
「何をバカな……」
ゲンガ戦士長は呟いたが実際助かっていた。それ程にこのタテトルという魔物は恐ろしかった。
「見ろ! 若造! これが本物の突撃だ!!」
右手の腕をしまい込み完全防御のタテトルがロードめがけて突撃してきた。
その刹那の瞬間ロードは左手の青き剣を鞘に納め、右手の赤き剣に自分の全生命力を上乗せする。その光の剣は40メートルにまでの伸びて行った。
「最初の一撃!!」
振り下ろされた40メートルの大剣がズドンと岩場に響き渡り、タテトルを含めた魔物たちを襲う。
「「「ああああああああああああああああああああ!!」」」
複数の魔物の断末魔が聞こえて来た。そして25体ほどの魔物が霧散していった。
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
味方陣営の士気がこの一撃でいっそう。
「うっ……うぅ……」「ううぅ……」「お、おのれ~~」
土煙の向こうから魔物たちの声が聞こえて来た。
「はぁ……はぁ……魔物は、どうなった」
ロードは直感的に悟っていた。
(今のカメが魔物を束ねているボスだと踏んで乗り込んできたが……倒せたか?)
息も絶え絶え、今持つ全生命力を使ったのだから、疲れ果てても無理はない。
この時ゲンガ戦士長は、
(この青年は一体?)
そう思っていた。
――ヒューーーーン!! カランカラン!! カメの様な魔物がその場に振り落ちて来た。
そして、隠していた腕を飛びだたせ、顔もニュッと突き出させた。
「貴様!! この俺に傷をつけたな!! この消えぬ傷をつけたな!! 許さん!! 許さんぞ!!」
タテトルは健在だった。ロード渾身の切り札たる最初の一撃でさえ、あの硬い甲羅に焦げ目をつける程度だった。
(――ッ!? 俺の最大火力である最初の一撃があの程度の傷にしかならないだと!? なんて硬い奴なんだ!?)
その時ロードは背筋に悪寒が走った。
(逃げなくては殺され――!?)
ロードが思案している隙に、
「貴様はここで殺す!! 大甲弾!!」
再び両腕をしまい顔を引っ込めたタテトルがフラフラなロードに突撃を仕掛けた。
その時、スワシッと突撃するタテトルを正確に掴み取った水の腕が現れた。
「水霊の手!!」
スワンが加勢に来てくれたのだった。四本の指からなる水霊の手は、捉えたタテトルを決して逃がしはしなかった。