第198話 人間と魔物の戦に割って入ってみた
ジャリオスト・岩場。
そこでは今、人間と魔物の戦が行われていた。
それをロードたちは崖の上から見ていたのだが、
「加勢しよう」
ロードが呟く。
「あんなに魔物がいるのによく言った」
ハズレが賞賛する。
「私も遅れるかもしれないけど行くから」
スワンも賛成する。
「よし、行くぞ」
ロードが崖の上から滑り下る。ハズレもそれに続く。スワンはその場で腕を動かしていた。
▼ ▼ ▼
ある魔物が戦士隊の中へ突っ込んで行った。
「ああ!!」「うあ!!」「ぐお!!」
まるで砲弾のような勢いでぶつかって敵である人間を吹っ飛ばしていく。
「――邪魔だ貧弱な人間ども!!」
砲弾のように飛んだあと、グルグルグルと回転して敵陣営をめちゃくちゃに荒らしていく。
「「「うああああ!!」」」
ある魔物によって人間たちは吹っ飛ばされていった。
「ハァーーーー」
砲弾のような態勢を辞めて本来の立ち方をするある魔物がその名を口にする。
「このタテトルを前にして、おのれの無力を知るがいい」
三角形の飛び出した顔に、鎧のような体節の腕、さらに鋭い爪を三本づつ生やしたカメの様な魔物が敵陣の真ん中で堂々と立ち上がって宣言した。
「くっ!! 舐めるなぁ!!」
一人の戦士がタテトルに向かって剣による突きを放った。
タテトルは微動だにしない、避けられなかったわけではない。避ける必要がないのだ。
「――――!?」
バキンという音が響き渡った。それは剣による突きを放ったものによる響きだった。剣はタテトルの腹を正確に捉えたがその盾の様に固い腹によって剣が折れてしまった。
「無力……」
冷徹な声でタテトルが告げる。そして両腕を振り上げて文字通り叩き潰そうとして、
「あああ!!」
挑んできた戦士を叩き潰した。
「これが力の差だ!!」
敵陣の中で堂々と宣言する。まさに強者の風格。
「ああ!!」
丸い顔と胴体と翼のない鳥がタテトルにぶつかって来た。
「うっ……何のつもりだ貴様!!」
部下である魔物に怒りを表すタテトル。
「も、申し訳ありません!! タテトル様!! 敵に投げつけられてしまって――――ああ!!」
その時、翼のない丸い鳥は切られてしまい霧散した。
「貴様が切り込み隊長か? 我はジャリオスト国の戦士長ゲンガ!! 討たせてもらう!!」
名乗りを終えるとゲンガ戦士長はタテトルに剣を構えて突っ込んで行った。
「フン、討てはしない……」
その剣の突きに、受けて立つタテトルであった。
速度を持った剣の突きがタテトルを捕え、そして――
「おおおおおおおおおおお!!!!」
ザザザザザザザザザザザとタテトルをどんどん押し込んで行く。そして魔物の群れへと突き飛ばした。
「うあ!!」「ああ!!」「おう!!」
タテトルの吹き飛ばされた先の魔物たちは巻き込まれていく。
「畳みかけろ!! 投石!! 放て!!」
ある戦士長が言ったことで、戦士たちは投石をし始めた。数は50を超えている。
「「「ああああああああああああああああ!!」」」
50の投石を食らっていく魔物たち。
ヒューン……ヒューンと飛んでいく石の数々、しかし、魔物の群れから飛び出したタテトルが身を挺してその甲羅の身体で受け止めていく。別に魔物たちを守ったわけではない。やられてばかりでは士気に影響すると思ったからだ。
「タテトル様!!」「ええい人間どもめ!!」「かかれ!!」
魔物たちの士気は保たれた。
そして、ドーン!! と地面に降り立つタテトル。
「魔物め今一度貫いてくれる!!」
ゲンガ戦士長が宣言する。
「貧弱ものめ!! 突撃とはこうやるのだ!! 大甲弾!!」
タテトルは首を引っ込め、腕を身体の側面にしまい込み、突撃体制を示して突っ込んできた。
「――――!!」
数メートルから突撃されたゲンガ戦士長は、ドオン!! と後ろの岩柱へとを突き飛ばされた。
「――ゲンガ戦士長!!」
「うっ……なんの……これしき……」
岩柱にめり込んだ身体を起こして、フラフラになりがらも立ち上がるゲンガ戦士長。
「まだ息があるか!! ならば!! 今一度見せてやる!!」
大甲弾で突っ込んでくるタテトル。ゲンガ戦士長の命もここまでかに見えたが、
ガキン!! と二つの剣に阻まれて、ズザザザザザザザザザザ!! とゲンガ戦士長とタテトルの間に割って入った者を突き動かしたが、途中で停止し、ゲンガ戦士長は突撃を食らわなくて助かった。
「この俺を、大甲弾を止めただと!?」
その大甲弾を止めた者はロードだった。
「勇者ロード加勢に来た」
悠然と魔物の前に立つロードだった。