第197話 魔王の影響力
「キャーーーーーーーー!!」「助けてーーーーーー!!」
2体の魔物たちに襲われる母と娘がいた。
その時、
「ガァーーーーーーーー!!」「ギャーーーーーーー!!
青き精霊の剣を構えたロードが2体の魔物をズババっと斬り伏せて霧散化させた。
「ギッ!?」「ガギィ!」「ガカッ!!」
そして民家の屋根に上ったり、男性に襲い掛かっていたり、ボーっと突っ立っていたカニのような頭をした人型の魔物に気づかれた。
ロードの方も全てを把握し、剣を構えて走り出す。
「ギィー!!」「ギィー!!」
倒すことの躊躇いのない目を、魔物に向けるロードだった。
青き精霊の剣を振ると挟みのような手に当りガキンという金属音にも似た音を響きかせる。しかし一度防御されたもののロードの切り返しで腹を斬られて霧散化した魔物、そしてもう一匹も腹を刺されたことにより霧散化し、屋根から飛び降りてきた魔物も難なく斬り伏せた。ズバン、ブス、ズバババンという鈍い音を響かせて、
「「…………」」
助けられた母と小さな娘は無言でその光景を見ていた。
「大丈夫ですか!? 動けますか!? さぁ早く安全な所へ!」
駆け寄ったのはスワンだった。
「あ……はい!」
そう言って小さな女の子を抱いた母親がその場を離れた。
「ギィア!!」
ハズレが剣を一振りして一体の魔物を霧散化させ一人の老人を助け出した。
その時、
(この魔物、ザコガニンか、確かE級の魔物この程度ならすぐに終わる……)
ハズレはそう思っていた。
ロードは多すぎるザコガニンを前にもう一本の竜封じの剣を鞘から引き抜いた。そして双剣使いのように振り回し一瞬にして三体のザコガニンを切り払った。そしてまた襲われそうになっている人の所へ駆けつけて、
「ガギィアーー!!」「ギイヤーー!!」
ズババっと斬り伏せて霧散化させた。そうして襲われそうになっていた人は助かった。
「ガギィーー」「ギィーー」
戦闘能力の差を知ったのかザコガニンの生き残りが逃げていくところだった。
「逃がさない」
しかしロードは両手に持った2本の剣を背後へと振りかぶり思いっ切り投げ放った。
「ガギーーーー!!」「ガァーーーー!!」
2体のザコガニンはガシャンとズシャンと倒れ霧散化した。
村を襲っていたザコガニンの群れはロードとハズレの手によって全滅させられた。
▼ ▼ ▼
「村を救っていただきありがとうございます」
村長さんらしき人物にロード一行は挨拶された。村長さんの背後には傷に苦しむ人が多勢いた。涙を流している人もいた。
「いいえ、間に合ってよかったです」
ロードがそう言った。
「しかしザコガニンが海の釣り人を襲っても、こんな山の村まで来るなんて……」
ハズレが疑問を口にした。
「きっと魔王の影響でしょうね。近頃はオーイワを目指す魔物が増えていると聞いています」
無傷の男性が答えた。
「早くオーイワへ向かわないと……」
ロードが呟いた
「確かに――行こう」
スワンが賛成の意を示した。
「オ、オーイワへ!?」
村長が驚いた。
「ああ……オレたちは魔王を討ちに行く」
集まった村の住人はざわついた。
「ん? この騒ぎ何か不味いことでも?」
ハズレが村人たちに尋ねた。
「いえ、ただ……行かれるのでしたらぜひメルクエム国の魔王討伐隊に参加されては?」
答えてくれたのはやっぱり村長だった。
「魔王討伐隊?」
「各地より集まった魔物狩りを束ねて魔王と戦っておられる方がいます。名をバスタード、近々の大戦の為にさらなる戦力を求めているとかで……」
「バスタードさんのこと!?」
「ハズレ知っているのか?」
「知ってるも何も魔物狩りの間では知らない人は珍しいくらい有名な魔物狩りさ」
「へ~~~~」
スワンが普通に聞く。
「魔物狩りの数が多いに越したことはない。この前のフレアザーズ戦でそれがわかった。とりあえずメルクエム国へ行ってみよう」
「分かった」
ロードの判断にハズレが同意した。
「あの~~ところで食料とか売ってたりしませんか?」
「ごめんねーー村がこのありさまじゃ俺たちの分も切り詰めなくちゃいけなくて、分けてあげたいんだけど量がね」
「そ、そんな~~」
スワンはその場にへたり込んだがロードとハズレは村を後にしようとしていた。
「またトカゲの尻尾だ」
ロードがからかった。
「絶対イヤ!!」
スワンが叫んだ。
◆ ◆ ◆ ◆
ジャリオスト・岩場。
馬に乗って駆けだす軍勢があった。
「ゲンガ戦士長!! 大変です!!」
馬に乗った戦士が声を掛けていた。
「大変とは?」
ゲンガと名乗る男が尋ねた。
「この先より魔王軍が進軍してまいります!!」
「何だと!?」
「戦士長いかがなさいますか?」
「論じる必要はない! 我が軍はこれより魔王軍と衝突する! 全員我に続け!」
『『『オオオオオオオオオオオ!!』』』
ジャリオスト国が用いる戦士隊。ゲンガ戦士長が率いる軍勢が魔物の軍勢とぶつかる時が来る。
◆ ◆ ◆ ◆
ジャリオスト国・岩場。
相変わらずドルちゃんに乗るスワンと荷船に乗るロードとハズレが移動しながら話していた。
「キミ双剣使いだったんだな」
ハズレがぼやいた。
「この方がバランスの取れた戦闘が出来る感じがする」
ロードは答える。
「ハズレ! ここはどの辺り?」
スワンが訊いてきた。
「――もうここはジャリオストに入っているはずだ!」
「ジャリオスト? メルクエムではないのか?」
ロードが尋ねる。
「迂回しないと通れない地形になっているんだ気にするな。すぐ着くさ……」
「分かったが、ハズレまた裏切りの瞳が輝いているぞ!?」
「何!? ホントだ!」
胸に飾っていた裏切りの瞳が黒く輝いていた。
「またザコガニン?」
スワンが尋ねて来た。
「違う、先ほどとは比較にならないくらい強い反応だ。この先で何かが起きている」
「もしかして魔王か!?」
ロードが腰に携えた剣を構える姿勢を取る。
「分からないが反応は……あの岩山の向こうだ! 皆覚悟を決めろよ!」
ハズレが二人を鼓舞する。
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
「何か聞こえてくる」
ロードたちは声と呼ぶにはあまりに入り混じった声が聞こえて来た。
「こ、これは」
ロードたちは崖の上からその光景を見てしまった。
「戦」
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
千をも超える人と魔物の大群と戦士の大群の戦が開戦していた。
3人はその光景を見るのが初めてではなかった。