第195話 旅はまだ続いていく
ラナの街・近隣の丘。
フレアザーズを倒した翌日。
新しい服を着たロードはスワンとハズレを連れて旅だった。
竜封じの剣をアカの姿にして朝一で飛んできた。
移動中に数日の間に何があったかを説明した。精霊石を手に入れたこと、馬を買ったこと、レースに出たこと、フレアザーズの襲撃があったこと、買った馬が死んでしまったことを話した。
アカは動物を食べたことを納得してくれた。
ロードももう動物を食べることを許さないとは言えなくなった。
「では、我はまた剣の姿に戻るとしよう。終わったら呼んでくれ今日は調子が良さそうだ。まだまだ飛べるぞ」
アカはロードたちに言った。
「それは良かった。この後も用事があるんだ。アカにしかできないことだ」
ロードはアカにそう告げた。
「分かった。では、いったん眠るとしよう」
アカは元の竜封じの剣へと戻って行った。そしてロードは竜封じの剣を鞘に納める。
「行こう……」「ああ」「ええ」
ロード、ハズレ、スワンはラナの街へと入って行く。
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ラナの街・金閣寺前
「ごめんくださーい」
ロードが挨拶をした。
「いらっしゃい、ってロードさんじゃないっスか! それにハズレさんも!」
鍛冶職人のテンさんが店の奥から出てきていた。
「やぁテンさん、おはよう」
ハズレも挨拶をした。
「………………」
スワンは何も言わなかった。相変わらず知り合い以外には不器用な人間だった。
「待っててくだせーー!! 今トンの兄貴を呼んで来るでさぁ!!」
テンは慌てて店の奥へと入って行った。
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数分後のことだった。
「ホラよロードの坊主、約束の品だ。こいつが俺たちの最高傑作、青き精霊の剣だ。今までにねーほどの力作だ。キン師匠に見せられなかったのが残念だったがな」
店の奥からロードへの報酬を渡しに来たトンさんだった。
「こいつは凄いぞロード」
ハズレが目を輝かせていた。
「………………」
精霊石に詳しそうなスワンもちょっとだけ見入っていた。
「この精霊の剣、精霊が宿れば何かしらの力が働くはずだ。ここから先は作った俺たちでも分からねー未知の領域だ。だが、お前ほどの剣士ならいつの日かその力を加えて戦うことになるだろう」
トンはロードに青き精霊の剣を渡した。
「ありがとう」
ロードは礼儀正しいお辞儀をしながら感謝の意を示した。
「止してくれ、礼を言うのは俺たちの方さ……カンの奴を立ち直らせてくれて礼を言うぜ」
「でさぁ」
トンさんとテンさんがお礼を言う。
「それでお前たちはこれからどうする?」
「オーイワという国へ向かい魔王という者と戦ってきます」
「そうか、魔王か噂には聞いたがかなりの難敵だと思うぞ、それでも行くのか?」
トンさんの問にロードは頷いた。
「そうか、命大事にしろよ」
「それはもちろんです」
「それじゃトンさん俺たちはこれで……」
ハズレが別れの挨拶を口にした。
「おう! 武器のことでまた用があったら来てくれよ! 坊主たち!」
「はい必ず……」
ロードはそう言い、ハズレとスワンは店を出た。
「そうだカンさんはどうしてます?」
「ああ、アイツなら寝ているよ。何度も何度も精霊石の剣を打ち続けてな。まぁいくつか失敗もしたが無事完成した。俺たちも寝ろと言ったが聞かなくてな。よっぽど疲れたんだろう」
「じゃあカンさんに伝言をお願いできますか?」
「いいぞ。なんて言っておけばいい」
「良い夢を見てください」
◆ ◆ ◆ ◆
鍛冶場でスース―と寝息を立てて眠り呆けているカンさんであった。
◆ ◆ ◆ ◆
キワジ港・近隣の丘。
「この辺りでよいか?」
「ああ、助かったよアカ、これで船の出向までは間に合いそうだ」
「海などひとっ飛びで越えてやろうか?」
「やめてくれ、途中で時間制限が来たら、皆海に落ちて溺れ死ぬ」
「そうだな。ここまで来るのにまただいぶ力を使った。次の眠りは長くなるかもしれん。それでも魔王を倒しに行くか?」
「旅に行く前に言っただろ。その道を進むって」
「そうだったな…………ハズレ! スワン!」
「「はい!!」」
まだ慣れないのか赤い竜にビビりまくりの二人が声をそろえた。
「ロードを頼んだぞ……」
「分かった」「うん」
「良い返事だ。では我は剣の姿に戻るとしよう」
赤い竜の姿から竜封じの剣へと戻ったアカは、再び鞘へと収まっていった。
「さぁ行こうキワジ村に……」
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キワジ港村。
大型船がいくつもある漁業も行う港村だった。
その中の一船に向かっ歩み続けるロードたち。
ひと際大きな船が見えて来た。
それはオーイワ近隣の国へと向かう船。
ロードたちはそれに船上しようとしていた。
金貨三枚で三人と荷船を乗せてくれる船長。
昼過ぎに出港した船の上で串魚を食べている三人は優雅に旅を楽しんでいた。
そこで三人は話をしていた。
「オレが手伝っている飲料水は、フルーツジュースなんだ」
ロードはそう言った。
「フルーツジュースじゃここでは売れないな。ちょっと甘すぎる」
ハズレはそう言った。
「だったらおいしい水は大正解でしょここ酔っ払いたちばっかり見たい出し新しい国でも売れるはずでしょ」
スワンはそう言った。
「オレだったらもっと売れる商品を出すけどな」
ハズレはそう言った。
「水より売れるものって何?」
「ワインさ」
波風に揺れる船の上でハズレは笑って見せた。