第193話 ディホースの力で戦ってみた
ロードはディホースの馬刺しを食べて体力を回復していた。
「ロードォ!?」
ハズレは驚いていた。先ほどまでフラフラに立っていた人間がきちんと起立していたからだ。
「ん? お兄ちゃんアイツがまた現れたよ!」
ハズレからの剣を回避したフレアザーズ弟が言う。
「何!? 致命傷にはなっていないかもしれないが、ファイアーブレスを二発も喰らったんだぞ!! それにさっきの動き、流石にガタが来てもおかしくないはずだ!」
壁に張り付いたまま驚きを隠せないフレアザーズ兄。
「はぁ……はぁ……ディホースは……?」
聞くのも野暮だと思っていても訊いてしまうハズレ。
「大丈夫だ。オレの中で生き続ける」
ロードはハズレの傍まで行って竜封じの剣を構える。
「だ、大丈夫か? はぁ……はぁ……休んで、いなくて……」
ハズレの息も限界が近いようだった。
「大丈夫だ。ディホースが最後に力を託してくれた」
ロードの全身がが光る。
「ま、眩しいお兄ちゃん、これは何!?」
「分からんが油断するなよ、弟よ!!」
フレアザーズ兄弟が壁に張り付きながら会話していた。
「はああああああああああああああああああああああ!!」
ロードは全身の光を頭から胴体へ、足から胴体へ、胴体から両腕へ、両腕から両手に流し込んで行き、最後には竜封じの剣に宿らせて光の剣を作り出した。その長さは30メートルもある。
道に沿って真っすぐ伸びるいい光の剣だった。
「――――なっ!?」
フレアザーズ弟が驚いた。
「バカな!? こんな武器が合ってたまるか!?」
続いてフレアザーズ兄も驚いた。
「はぁ……はぁ……さっきの7メートルほどの剣と違う、ロードこれがキミの秘宝玉の力なのかい?」
息を整えながらハズレが問いただしてくる。
「そのようだ」
「さっきと長さが違うのは体力的な違いで大きさが変わるということか?」
「さぁどうだろうな……」
ロードは自分の光の剣を見つめていた。
「初めて見たそんな美しい光の剣」
ハズレが感想を漏らした。
「最初で最後の一撃と言うんだ。この技は……」
「誰が付けたんだそんな名前の技……」
「オレとディホースだよ」
ロードは満面の笑みでハズレに返した。
「下がるぞ弟よ!! アレは不味い!! 距離なんてどうにでも出来てしまう武器だ!!」
「分かったよ! お兄ちゃん!!」
全速力で壁を疾走し続けるフレアザーズ兄弟。
酒のことなどよりも命優先で逃げていくのであった。
「速い! あんなの追いつけるかロード!」
「心配するな、ディホースの力がある余裕で追いつく」
それはまさに馬のごときスピード感のある走りだった。
光の剣を振りかぶるとその辺りの民家に傷が出来たが、ロードはそんなことに構いはしなかった。
下がるフレアザーズも逃げるだけではない。ファイアーブレスを吐いて攻撃の姿勢を見せる依然自分たちの優位性を見せつけるかのように……しかし、
剣を突き出した。ただそれだけで光の効果なのか分からないがフレアザーズの攻撃が灰燼ときした。
「はあああああああああああああああああああ!!」
そして、まずロードが狙ったフレアザーズ兄弟はディホースの仇である弟の方だった。
そして、30メートルもある光の剣が振り斬りされる。
「うっうわあああああああああああああああああああああ!!」
ディホースを食べた口から絶叫が飛び出した。
「お、弟!?」
「ごめん、お兄ちゃん……」
斬られたフレアザーズ弟は魔物特有の霧散化をして消えていった。
「あ、お、弟よ!!」
狼狽えるフレアザーズ兄。しかし、弟の死をきっかけにロードへの逃走から逆襲に身を転じた。
「よくも弟を!!」
ファイアーブレスを吐き出した。それはロードに届く前に光の剣の突きでかき消えた。
しかし、フレアザーズの狙いはそこではない。
「ファイアージェット!!」
尻尾から噴出された炎がブースターの役割を持ってロードに突撃の姿勢を見せる、その速さは馬にも劣らない程だ。大口を開けて、ロードを食い殺す気でいた。しかしロードは動じない。両手に構えた剣を翻すだけでフレアザーズ兄は一刀両断された。
「ぐ、ぐああああああああああああああああああああああああ!!」
光の剣によりロードはフレアザーズ兄を霧散化させた。
長い長い夜の決着がようやく着いた。
ロードは走るのをやめて、剣を一薙ぎして30メートルもあった光の剣を元の竜封じの剣に戻していた。
「はぁ……はぁ……よくやったロード」
ハズレは痛む傷を抑えながらロードを称賛した。
「終わったよディホース……」
それは戦いの終わりのようにディホースへのお別れのように聞こえがいい話し方だった。