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第188話 二対一の恐ろしさ

 フレアザーズ兄が酒の入った樽を全て地面に置いていく。


 その隙をついたハズレは屋根の上から思いっきり飛び、炎の剣アカユリヒメで串刺しにしようとしていた。


「ブースト発射!!」


 フレアザーズ兄は尻尾の炎でブーストし、ハズレに向かって思いっきりタックルを打ち付けた。


「――――ぐっ――がはっ!!」


 ハズレは思いっきり吹き飛ばされ、地面をゴロンゴロンと転がっていく。


「さぁ、弟よ!! 存分に仕返ししてやろうじゃないか!」


「うん、お兄ちゃん!」


 フレアザーズ兄弟がロードの目の前に立ちふさがる。


「お前も人間を食べたことがあるのか?」


 息を整え終わったロードがフレアザーズ兄に聞く。


「そうだが、それがどうした?」


「一体何人くらい食って来たんだ?」


 今にも食い掛らん表情をしたロードが質問する。


「数えたこともないなぁ……弟よお前は?」


「俺もさっき同じ質問をされて覚えてないって答えたよ」


「ますます許せない!」


「なーーにバカなこと言ってやがる! じゃあ人間は豚や牛を食べてもいいのかよ!」


「良くない!」


 声高らかにロードが叫ぶ。


「変わった魔物狩りだ。まぁどのみちこの問答に意味などない。お前は俺たちの手にかかって死ぬ」


 その時ハズレが動いた。火薬玉をふたつ取り出して、フレアザーズ兄弟の炎で揺らめく尻尾めがけて投げ出したのだった。


 火薬玉は熱すれば大爆発を起こす普通の魔物なら大ダメージは必至だったのだが、今回は相手が悪すぎた。


 ドッカーーーーーーーーン!!!! フレアザーズ両者は大きく吹き飛ばされていった。


「決ま――――!?」


 ハズレの誤算だったフレアザーズは炎系統の攻撃が全く通用しないのだ。かくして爆発の爆風で吹き飛ばされはしたものの炎系のダメージなので大した傷は作れなかった。さらに爆風により投げ出されたフレアザーズの兄が空中で強引に向きを変えハズレめがけて突撃の態勢を取る。


「意外としぶとい男だったか……」


 フレアザーズ兄が尻尾の炎を爆発させて、ブースターの役割を持たせ直進した。


「――――なっ!?」


 そしてハズレの身体に激突する。


「――――がはっ!?」


 しかしハズレは吹っ飛ばされたには変わりないが、しっかりと剣を構えて受け身の姿勢を作り最小限のダメージに抑えた。


「そこで大人しくしていれば命までは取らん」


 剣を地面に突き立てて片膝を落とすハズレ。息も絶え絶えだった。


「さて弟よ! 思う存分仕返しをしてやるといい!」


「分かってるよ! お兄ちゃん!」


 フレアザーズ弟がファイアーブレスを吐いた。


「そんなものが今さら当たるとでも――――っ!?」


 その時、ロードは二対一の恐ろしさを知った。


「くだらん! 跳んでいるだけじゃないか!」


 もう一体のフレアザーズ兄がファイアーブレスを放って来た。


「――――!?」


 ロードは空中に浮いているため自由に移動が出来ない。これは炎攻撃を躱すうえでの最大の弱点というものだった。


「ぐっあああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ロードは、魔王アグロ―ニ戦、魔王フォッテイル戦では見せなかった、その時、始めての大ダメージを受けた。


 身体は炎により熱されていく、服も焼けこげ剣を盾に縋るしかない。


「くうう、よくも……」


 全身で炎を受けながらも構えを解くことのないロード。


 その時、

(直撃したのか? 死んでないよなロード)

 ハズレはそう願っていた。


 ロードの目はまだ死んではいなかった。目の前の強敵を前に一歩も譲らない気でいた。


「驚いたまだ動けるのか? 何者だ? お前は……?」


 素直にフレアザーズ兄が賞賛した。


「だから、勇者ロードと何度も言っている!」


 ロードは走りだした。フレアザーズの兄か弟か狙っているのはどちらか分からない。


「壁にへばりつくぞ弟よ!」


「おうよ! お兄ちゃん!」


 フレアザーズ兄弟はそれぞれ民家の壁に張り付いてロードから距離を取った。


 それでもロードは走るのを辞めない。それどころかどんどん加速して壁面を走っていた。狙いはフレアザーズ弟。


「弱そうな方を狙ったか!? 悪いがそうはさせん! 行くぞ弟!」


「いいぞ! お兄ちゃん!」


 その時ハズレは知った。

(こいつらの狙いは――――)


「ロード! 今すぐその弟から離れろ!」


 ハズレは叫んだが、ロードは聞く耳を持たなかった。


 そして思い知る。並みの魔物にはなかった連携パターンを……


「バハァーーーー!!」


 フレアザーズ兄がファイアーブレスを向けた先は何と、フレアザーズ弟だった。


 もちろんフレアザーズ弟に向けて足を運んでいたロードは兄の方に意識を向けている余裕はない。目の前の敵を斬ることで手いっぱいだった。


 そして、剣がフレアザーズ弟に届く前にファイアーブレスが弟諸共ロードに直撃した。


「フハハハ、俺たちは炎に耐性がある! しかし、人間には炎の耐性はない! これで勝ちだ!」


「ロードォ!!」


 ハズレは動く身体で走った。


 そしてロードは弟諸共食らった炎の中から地面に落ちて来た。


「――ぐっうう!!」


 熱さの痛みで少々立つのに時間がかかった。


「何!? あれだけ食らってまだ立てるのか!?」


 驚いたのはフレアザーズ兄だった。


「言っただろう。オレは魔物を討つ者、勇者ロードと、こんなところで魔物に負けやしないのさ」


 ボロボロの格好になりながらも、そこに歴然と立つ勇者の姿があった。

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