第184話 フレアザーズの襲撃
ルール―の街中に魔物フレアザーズの一体が現れた。
赤いその姿は尻尾の方から炎が噴き出していた。
「コラーー降りてこい!!」「俺たちが相手をしてやるぜ!!」「こちとら酒を飲んで調子がいいんだ帰るか倒されるかの二択しかないぞ」
(フレアザーズか……確か火を吐く魔物)
(ここにいる皆に言っておくべきか、それとも経験豊富な皆に合わせて立ちまわるか)
ロードが考えている時、
「皆!! アイツはフレアザーズだ、強力な炎を吐いて来るから注意するんだ!!」
ハズレが的確に答える。
「プラチナ一つ星の人!?」「ハズレくんか!!」「そうかこいつが噂のA級魔物フレアザーズか」
「いつ火を吐いて来るか分からない!! 弓の武器使いを中心に路地裏や遮蔽物を盾にしながら炎をやり過ごすんだ!!」
「おうよ!!」「よし弓使いの援護に回るぞ!!」「炎を吐いて来るんだな気をつけないと……」
ハズレは見事その並外れた経験の差から数十人もいた魔物狩りの統率をしていた。
「それからヤツは二頭一対の魔物だ!! まだ他に仲間がいるはずだそっちにも気を配っておけよ!!」
ハズレはロードが忘れかけていた情報をくれた。
(そうだったヤツは二頭一対の魔物って大図鑑に書かれていたんだった)
戦力はロード、ハズレを含め全員で27人、そしてその内の弓使いは5人ほどだった。
(胸に飾られたシルバー色のメダルを見ると皆シルバーランクなんだな星一つや二つが多い)
「行きますよ!!」「当たってくれよ!!」「オレたちでA級を倒して昇格するぞ!!」
5人の弓使いが一斉にフレアザーズめがけて矢を放った。
「面倒な弓使いどもめ!!」
フレアザーズが炎を吐いて弓から放った矢を消し炭にした。
「なんて火力だ!」「落ち着け隙を見て今度は狙おう」「うん!!」
その時――ダンとフレアザーズが地盤に降りて来た。
「聞けぇ!! 人間ども俺たちは酒が欲しくてこの街に入った!! 別に命を取りに来たわけではない!! 大人しく言われた通りの量の酒を持って来てくれたら俺たちは撤収する!! わかったらとっとと酒を持って来い!!」
フレアザーズは目的の品を要求する。
「地面に降りて来た」「今がチャンスだ」「剣士の意地を見せてやる」
フレアザーズが降りてきたことでチャンスと見て取った若い魔物狩りたちが攻撃していく。
「馬鹿め!!」
フレアザーズはその場で前足を起点としぐるりと回転する。そうすることで炎の尻尾をチラつかせ迂闊に近づけないことを悟らせた。
「こいつ」「尻尾からも炎を出せるのか!!」「これじゃあ迂闊に近づけない」
飛び掛かった若い魔物狩りが一歩一歩たじろいで行く。
「そこの魔物狩りさんたち!! 地面に伏せてくれ!!」
声を張り上げたのはハズレだった。
その一言を受け魔物狩りたちは地面に伏す、そしてハズレが投げたと思われる丸くて黒い玉がフレアザーズに向かって行った。
「何だこれはぐわっ!!」
目の前に来た黒い玉をフレアザーズは炎を吐くことで燃やした。しかし、
「火薬玉だよ」
ドカーーーーン!! と一発、火薬玉が炸裂した。
「ぼさっとするな弓矢の魔物狩り構えて爆炎の中に矢を打ち込め!!」
ハズレの的確な指示に従う魔物狩りたちだった。
「よし行け!!」「今度こそ当たれ!!」「この一本が重要か!!」
5人の弓使いがそれぞれ矢を放った。
しかし、矢は当たらなかった。フレアザーズがカエルのように爆炎の中から跳び越えて、ハズレの目の前までやって来たからだ。
「お前か今攻撃してきたのは!?」
その時ハズレは、
(さすがA級の魔物、それもオレと同じ炎使いさすがに分が悪いか……?)
そう思い、咄嗟に距離を取って、先ほどの尻尾の回転の届かない距離まで後方へ移動した。
「はあああああああああああああああああ!!」
この時、フレアザーズに接近する者がいた。誰もが危ない行動だと思った。
「馬鹿が!!」
フレアザーズはその場で回転し襲撃者に対して、そいつの頬にやけどの傷をつけた。
「くっ、チャンスだと思ったのに……」
ロードは竜封じの剣を構え直す。
「お前は?」
フレアザーズが尋ねて来た。
「オレは勇者ロード!!」
ロードはやけどの傷もお構いなしにフレアザーズに向かって飛び出した。