表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/890

第182話 酒場の光景

 ルール―街・酒場。

 ロード、スワン、ハズレは顔見知りのマスターのいる酒場に来ていた。

 ドルちゃんを指輪に戻したスワンとディホースにニンジンの束を檻の中へ置いておいて、こちらはこちらで楽しくやるつもりでいたようだ。

 酒場は、夜のせいもあってか活気づいている。ハズレはワインを注文していたが、もちろんロードとスワンは甘酒でよろしくやっている。

 三人ともカウンターの席に着き、酒場のマスターと話をしながら飲み食いしている。


「マスター!! もう一本ワインの瓶を開けよう!!」


「おおう? 何だハズレ今日はやけに上機嫌じゃないか?」


「だって見てごらんよこの表彰状、レンタル馬で表彰台に立てるなんて思ってなかったからさぁ」


 少しだけ顔を赤らめたハズレが言う。


「レースは誰が優勝したんだ?」


「そりゃもちろんロードだよ」


「あっ! ハズレが嘘ついてる!」


「嘘じゃない。あそこで気絶して落馬さえしなかったらって言う世界があるとするとまんざら嘘でもなくなるんだよ」


「何を言っているのか、分からないんだけど……」


「勉強しなさいスワンお嬢さん」


「何それ! 嘘は嘘でしょ!!」


 スワンが癪にさわったのかそっちの意味で顔を真っ赤にしていた。


「それでレースの方は結局どうなったんだ? ロードの坊主?」


 目の前に焼きトウモロコシを出しながら質問して来る酒場のマスターだった。


「序盤のスタートが悪かったです。スタートと同時に緊張のあまり動けなかった」


「スタートが出遅れたってことか?」


「はい……その後何とか固まりまで追い付いて、ハズレと合流しました。そこから先はハズレのレンタル馬が風よけになってくれて、ディホースの足を溜めることが出来ました」


「ディホースってのは何なんだ? 坊主の馬の名前か?」


「そうです」


「この短期間の間に馬を買えるだけの額を用意したってのか? そいつはスゲェ」


「違う違う、マスター馬の金額が金貨3000枚だと思ってるでしょう?」


 ハズレが会話に割って入った。


「違うってじゃあどうやって馬を手に入れたんだよ……まさか野生で取っつかまえて来たとか言い出さないよな……」


 度肝を抜かれたマスターだった。


「違います違います。たまたま小金額の競り合いに出されていた馬を買ったんです」


 否定するロード。


「いくらで買い取った?」


「60枚金貨です」


「安すぎないか?」


「足の骨を折っていた馬だったんです。それをオレが治療して出場できるくらい回復させました」


「どうやって回復させたんだよ」


「まぁいいじゃないですか! 惜しくも一位は逃したけど頑張ったで賞が取れた。それだけでも出た甲斐があった。マスターも今度ヤマダシオ街に行ってみると良い、記念館にはロードの名前と自画像絵とトロフィーが飾ってあるはずだからさぁ」


「分かった機会があったら行こう……それで一位は誰だったんだ?」


「レイアル・スライダーさんです」


 トウモロコシにかじりつきながらロードが呟く。


「ああ、噂に名高いレース王か……そりゃ勝てないわな」


「はい、あの人は早かったです」


 ロードはちびちびと甘酒を喉に滑り込ませていく。


「焼き魚一丁上がりました!!」


 店の奥から声が聞こえた。


「おおよ!!」


 声を出したその人からマスターが焼き魚を受け取るとスワンの前へと持って行った。


「来た、いただきま~~す」


 スワンが礼節を持って焼き魚を食べ始めた。


(スワン、お魚さんを食べるのか……あんなに焼かれてしまって……)


 ロードは心の奥底で何とも言い難い無力感を覚えていた。


「それで、精霊石は見つかったって話だけど……実際はどうだったんだよ」


 興味深げのマスターが訊いてきた。


「ああ、精霊石は凄くキラキラしていた鉱石でしたよ。洞窟の中で異色なオーラを身に纏っていたから見た瞬間、アレが精霊石かってすぐにわかりました」


「そうか何か魔物とか出なかったのか? ガンガバレーは危険地帯ともよくうわさは聞いていたが……」


「ええっと、パワーゴリラが一匹出ましたが問題なく倒しました」


 ロードがさらりと言う。


「パワーゴリラを坊主たちで倒したのか?」


「違う違う、マスター驚くべきことに、パワーゴリラはロード一人で倒されちゃったんだよ」


 ワインを片手に自慢げに語るハズレだった。


「何ぃ!? ベテランの魔物狩りでも手を焼く、あのパワーゴリラをたった一人で倒したのか!? やるじゃないか坊主!!」


「はい、特に苦戦もせず倒せました」


 ロードが焼きトウモロコシにかじりつく。


「魔物狩りみたいな職業だって言ってたな? ハズレ、この坊主の腕前どこまで行ってるかわかるか?」


「まぁオレと同格のプラチナ星一つは確実にいっているだろうな」


「いや、ロードはパワーゴリラなんて目じゃないもの倒してるから……もっと上の実力だと思うけど……」


 スワンが横から口を割って入ってくる。


「例えば何を?」


 ハズレは聞いてきた。


「昨日話したじゃない」


「ああ、あの件か……」


「スワン一体ハズレと何を話したんだ?」


「魔王フォッテイルのことをちょっとね」


 スワンはマスターに聞こえないような声で言った。


「まぁ何にしてもこうして無事戻ってきたんだ!! 今日は目出てぇ!! おごってやりたいが!! うちも経営難!! 飲み食いした分は払ってもらうからな!!」


「マスターのけち」


 ハズレはブー垂れた。


 その時――――


「――マスター大変だ!!」


 若い魔物狩りが店内に慌ただしく入って来た。


「どうしたんだ! そんなに慌てて!」

 

 マスターが尋ねる。


「――魔物が、魔物が街の中へ入って来た!!」


 一波乱ロードたちは起きる気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ