第179話 馬乗レース大会決着
レイアル・スライダー、デリンシャス・シャンスープ、ハズレ・マスカレード。
馬乗レースの行方はこの三者のトップに委ねられていると誰もが思っていた。
しかし、実際にはもう一人食らいつこうとしている男がいた。それがロード・ストンヒュー。
「誰だ!? アレは!?」「す、すっげートップ層に食らいついている」「またダークホースか」
観客席の方も気が付いたようで、ロードの方に目を運ばせる者もいた。
「おおっと!! これはどうしたことか!? いつのまにやら最初に最下位だったロード・ストンヒュー選手が4位にまで繰り上がっているぞ!! しかももの凄い速さで1位を狙っている!! 何者なんだこの黒馬の剣士は!?」
「スタート後は止まってたよな?」「ああ、覚えがあるぞ」「後続たちをいつの間にか追い越して来たのか!?」
観客席はロード・ストンヒューを称えていた。
「ロードも頑張って!!」
スワンも声援が届くように願いを込める。
「ディホース!! 行けるか!!」
ロードは第4コーナーを超えた後すぐにディホースに確認を取る。
「ヒヒ―ン!!」
トップ層の三者を2メートル圏内に納めたディホースが産声を上げる。
「頑張ってトップ層に食い込こむか……わかった!! 頑張れディホース!!」
力強く手綱を握るロード。
「黒馬の剣士ロード・ストンヒュー選手、もの凄い追い上げだ!! しかし、レイアル・スライダー選手、デリンシャス・シャンスープ選手、ハズレ・マスカレード選手がいる!! この三者の壁を超えることが出来るのか!! いや超えられないわたくしの長年の実況としての感がそう告げている!! やはりゴール争いはこの三者!! ゴールはもう目前まで迫っています!!」
「行け!! レイアル・スライダー!!」「ダークホースのハズレさんも頑張れ!!」「今年こそ優勝だぞデリンシャス・シャンスープ!!」
それぞれに声援が投げかけられる。だが、
「もう無理そうだなぁ~~よく頑張ったよお前は……」
「おおっとハズレ・マスカレード選手!! 徐々に馬のスピードが落ちていく!! そしてロード選手の隣にまで来てしまった」
実況者は不測の事態ととらえたようだが、これもハズレの作戦の内である。
「ロード道は作った!! あとは優勝頼んだぞ!!」
隣に来たハズレにそう言われ、
「ああ、ここまで連れてきてくれてありがとう」
とロードは残しハズレを抜いて走り去っていった。
ロードの目の前には今、レイアル・スライダーとデリンシャス・シャンスープが壁となって抜かれないようにしている。どちらも一位を目指して一歩も譲る気がないのが伝わって来た。しかし、
「ディホース!! お前の10メートル越えのジャンプ力を見せてやれ!!」
「ヒヒ―ン!!」
そうそれは二日前に見せた幅10メートルの川を跳び越えたジャンプ力。
「――行け!! ディホース!!」
その時、奇跡が起きた。
「ヒヒ―ン!!」
二つの壁をそのジャンプ力でディホースは乗り越えたのである。
「「――――!?」」
二つの壁は突然上空を跳び越えて来たロードに驚いた。
「行ったああああああああああああ!! 黒馬の剣士!! 二人の壁を跳び越えた!!」
実況者バッグが立ち上がった。
「はぁ、はぁ、はぁ、よく、跳び越えたぞ、ディホース」
息も絶え絶えなロードではあったが何とか一位をものにした。
「こんなパフォーマンスは見たことが無い!! ここに来てまさかのダークホースの登場です!! 観客席も興奮を隠せない!! これは新たなレース王の誕生か!!」
実況者バッグは称えていた。
「ギンガ!!」
レイアル・スライダーが愛馬の名を呼ぶと、
「おっと!! レイアル・スライダー選手!! ここに来てロード・ストンヒュー選手に追いついた!! ゴール前の為に愛馬ギンガの溜めていた足をここで使った!! あくまで一位を狙うレース王の意地を見せる!! もう勝負はレイアル・スライダー選手かロード・ストンヒュー選手の二択に絞られた!! 結果はどうなる!! どうなってしまうのか!?」
実況者バッグも固唾を飲む。
「ロード・ストンヒューまた会ったね。キミがここまで登り詰めたことには正直驚いたが、ここまでだ優勝は僕の手に――――!?」
すぐさま追いついてきたレイアル・スライダーは驚いた。何とロードは、馬に乗りながら気絶していた。
その後すぐに落馬し地面に激突した。
「楽しかったよ――ロードくん」
去り際のその時、レース王レイアル・スライダーがゴールの門をくぐった。
「決まったあああああああああ!! 一位はやはりこの男!! 我らがレース王レイアル・スライダー選手だ!! 今回も王者の座を守り抜いた!!」
怒涛のレース大会は一位レイアル・スライダーで決着した。