第176話 出ましたレース王レイアル・スライダー
レース会場は熱気に包まれていた。
「さすがは、先代レース王のエレガーノ・シャンスープの息子!! その実力は本物だ!!」
実況のバッグが会場を盛り上げる。
この時、
(もう、ロードとハズレってば何してるの!? もう第二コーナーを曲がり切ったのにこのままだといいとこなしで終わるよ)
スワンはこう思っていた。
「デリンシャス・シャンスープ選手大会出場は今回で6回目ですがどの年も優勝を逃していますが、今年こそ念願の優勝はこのまま彼のものになるのか!!」
「さてどうだろうね。このままデリンシャスが勝つには厚い壁がいくつかあるが……」
スワンは近場の優男に耳を貸していた。
(そう、今年はロードとハズレが出ているんだものそう簡単に行きはしないでしょう……?)
「ほら来るぞ……」
優男が言う。
この時、
(――来たか)
デリンシャス・シャンスープはこれを予見していたかのように冷静沈着だった。
「来たぞ!!」「待ってました!!」「行けーーーー!!」
その白馬に乗った男に対して会場中がざわついた。
「来たーーーー!! 現レース王レイアル・スライダー選手だ!! まだこの男が残っていた!! 愛馬ギンガと共に走る姿はまさに名画に勝る美しさだ!!」
「溜めた足を全力解放、行けギンガ!!」
レイアル・スライダーの合図と共に全速力で固まりから抜けるように距離を離していった。
「行け!! このレースに負けたらお前は馬肉だ必死に走れ!!」
デリンシャス・シャンスープは厳しい言葉を投げかける。
「ヒヒ―ン!!」
鞭うたれる悲しい馬の悲鳴が微かに鳴いた。
しかし、現実はそう思うようにはいかない。
「皆さんご覧くださいトップを独走していたデリンシャス・シャンスープ選手とレイアル・スライダー選手の差がどんどん!! 見る見る縮まってゆく!!」
実況者バッグも手に汗握る瞬間が今か今かと迫って行った。
「何!? 会場のお客さんが待っていたのってあの人の事!? あんなスピード出されたらロードたち追いつけないじゃない!?」
会場で一人スワンが叫んでいた。
「デリンシャス・シャンスープ選手、現レース王の背後から迫るプレッシャーは相当なもの!! さぁ、耐えきれるのか!?」
直線状のコースで差がどんどん縮まっていく。
「デリンシャス・シャンスープ選手、前を何としても死守したいところ!!」
その時、レイアル・スライダーはピッタリとデリンシャス・シャンスープの後ろに付いた。そして外側から追い越そうとすると、デリンシャス・シャンスープは感で捉えたのか……コースの前を取らせないように馬を抜かせない為の位置取りをした。
しかし、それはレイアル・スライダーの仕掛けたフェイクでインから追い抜かそうと試みたのだが、すぐさまデリンシャス・シャンスープは元のインに馬を戻し全力で距離を開けようとする。
「レイアル・スライダー選手、デリンシャス・シャンスープ選手の壁をどうしても抜けきれないか!?」
この時、
(さすがエレガーノ・シャンスープの息子、親子ともども人間性の評判は若干悪いが腕は本物だ。相変わらずいい判断能力だ。それにいい馬を選んでいる。いいね)
レイアルはそんなことを思っていた。
「デリンシャス・シャンスープ選手、現レース王の攻めを死守している!! 今回こそ優勝となるのか!!」
会場内はとっくに、現レース王レイアル・スライダーとデリンシャス・シャンスープの一騎打ちの空気とかしていた。
そんな中やっと最後尾から脱して固まりに追いついたロードの姿があったそして隣には、
「ロード!! オレの後ろに付け!! 先頭まで追い付くぞ!!」
ハズレが帽子を頭に抑えながら言って来た。
「先頭は今どの辺りだ!!」
ロードが叫んだ。
「ここから約15メートルだ!! 追いつけない距離じゃない!! すぐに後ろに付いてくれ!! オレが風よけになるから!!」
「わかった!! 行くぞディホース!!」
「ヒヒ―ン!!」
静かに猛反撃に出るグループの存在を忘れてはならない。