第175話 デリンシャス・シャンスープの勝つための執念
ロードは最下位という最悪の事態に陥っていた。
「とにかくあの固まりに追いつくぞ」
ディホースに乗るロードが芝生の上を駆け抜ける。
(ロードの奴、何をしてるんだか……?)
一方固まりで期を窺っていハズレが思う。
(ロードってば何やってるの? これじゃあいい笑いものじゃない)
スワンの方にも心想うところがあったようだ。
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「おお、先頭に躍り出たのは、かの有名なデリンシャス・シャンスープ、かつてのレース王の実の息子だ!! 幸先のいい滑り出しです」
実況者バッグが場を盛り上げようと実況する。
「ハァ!!」
自分の乗る馬に一括入れながら後ろの塊から徐々に差を開いていくデリンシャス。
「くっそー親の七光り目!!」
「どうせ今年も負けるんだ!! 大人しくしてりゃ恥かかねーのよぉ!!」
その二人もデリンシャス・シャンスープに続いて塊から一歩リードして追いつかんとしていた。
しかし、
「痛った!!」「うげっ!!」
デリンシャスにヤジを飛ばしていた二人が失速した。
「おおっと先頭を追いかけていた。レフト選手、ライト選手ともに失速!! 一体どうしたんでしょう!!」
この時デリンシャス・シャンスープは、
(フンこの愚か者どもめ走りながら戯言をほざけば当然舌を噛む)
と思っていた。
「などと言っている間に第一コーナです!! 参加者26名このままシャンスープ選手逃げ切れるか!?」
まずデリンシャスシャンスープが第一コーナーを抜ける。次に先ほどの野次たちが、それから固まりで動く馬たちが続き、最後に遅れを取り戻そうとするロードが続いていく。
「しかしここでストガス・クシー選手!! 飛び出してデリンシャスシャンスープに張り付いた!! ストガス・クシー選手のお決まりが来るのか!!」
「ベイカー仕掛けるぞ!!」
「バヒヒ―ン!!」
相棒のベイカーに乗り仕掛けようとするストガス・クシー選手だった。
「クシー選手ぴったりとデリンシャス・シャンスープに追いついた、加速して追い越す体勢だ!! 決まるのか!?」
徐々に実況も興奮していくバッグ。
その時、デリンシャス・シャンスープは、
(愚か者め)
手綱で馬を叩き抜かせないように指示をだす。
「うおっ!!」「バ、バヒン!!」
デリンシャス・シャンスープは追い抜こうとしたストガス・クシ―選手の前を陣取る形で、追いつけないように阻害していた。
「デリンシャス・シャンスープ選手抜かせない!!」
この時、ストガス・クシーは、
(へっ、狙い通りコーナーのインが開いた!! 加速だベイカー)
と思ってインから差してきた。
「出たーー!! クシー選手の2段構えダブルアクセル!!」
「馬肉!!」
そのデリンシャス・シャンスープの一声でインサイドへと戻ってくる馬。
「ヒヒ―ン」
元気はないが確実に仕事はこなしていた。
「お、おう?」
インから差そうとしていたストガス・クシー選手は一歩後ろへ下がらなくてはならなかった。
「素晴らしい!! なんて反応なのでしょうストガス・クシー選手のダブルアクセルを凌ぎ切った!」
「く、くっそーー」
得意の戦法を阻止されたストガス・クシーは外に回ろうとしていた。
「バカ前に走れ!!」
「――――なっ!?」
その時、同じく外から回ろうとしていたフウン選手とコースが被ってしまい、
「なんとストガス・クシー選手と後続のフウン選手の馬が衝突!! ともに落馬してしまった!」
実況を耳にしていたデリンシャス・シャンスープは「フン」と鼻で一息ついていた。
この時、ハズレは
(あのシャンスープとか言うヤツ狙ってやったな。上手い場数慣れしている)
と思っていた。
そして、スワンは、
(私も出ればよかったかな優勝賞金150枚金貨、ハズレみたいにレンタルしてロードたちのアシストに徹すればあるいは……なんて夢みたいなこと思わない!!)
そう思っていた。
「さて、第二コーナーを曲がり切った頃合いです!! 先頭にデリンシャス・シャンスープ!! 続く二番三番、ライト選手、レフト選手、その後続々と後続が追いかけていきます!! そして最後にはロード選手今一歩のところで固まりに追いつけない」
「ディホース、第二コーナーまで通過したら即ハズレの元まで追いつくぞ!!」
ロードがディホースに作戦を伝える。
「ヒヒ―ン!!」
振り落とされまいと上半身をディホースへ傾けて第二コーナーを後にする。
(さて、ここから逆転成るかどうか……)