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第174話 レース開始、振り下ろされた赤旗

 ヤマダシオ街・馬上レース会場。

 時刻は12時、続々と選手や馬たちが会場のざらついた芝生を、馬に乗って踏みながらスタート位置まで到達していた。

 

「オレが風よけ役になってお前をゴールまで引っ張ってやるから1位逃すんじゃないぞ」


 ハズレがロードに話を持ち寄る。


「風よけ役?」


「何だそんなことも知らないのか? いいかレースが始まりると馬は走り出すそうすると風の抵抗を感じることがある」


「ああ、馬で走ってるとよく身体のバランスが取りづらくなるあの感覚か」


「何だ知っているんじゃないか……いいかい、まずオレのすぐ後ろにつけそうすれば風の抵抗がなくなってスムーズに走れる」


「そんなことをしてどうするんだ?」


「馬の体力の温存さ、レースの最終局面で本気で走るための体力を確保しとけってこと、わかった」


「ハズレがその役を請け負ってくれるのか?」


「だからそう言ってるじゃん……じゃあ手筈どうり、レースが始まったらオレの後ろについて来いよ1位にしてやるから」


「そんなズルい行為で1位になっていいんだろうか……?」


「ズルくないズルくない、みんなやっていることだから……」


 そう言いながらハズレは自分のスタート位置に向かって行く。


「それでは位置についてください!」


 レースのスタッフさんが皆に指示を出していた。


(風よけからの本気はズルじゃないのか?)

(皆やっていること、皆事前に打ち合わせしているってことなのか?)

(あのレース王レイアルさんでもやることなのだろうか……?)

(とにかくディホースに訊いてみないと……)

「ディホースはどう思う? ハズレの作戦は……」


「ヒヒ―ン」


「風よけして体力を終盤まで温存しておくんだとさ」


「ヒヒ―ン!!」


「そうか、ディホースにはいい提案に聞こえるのか。分かったその作戦で行こう」


「そこいつまでも止まってないで動いてください」


 レースのスタッフさんに注意された。


 しばらくしてパンパンと小さな花火がいくつかレース会場に打ちあがる。


 会場のお客さんは満員の様だった。


「さぁ今年もやってまいりました第26回ヤマダシオレース杯、いよいよ開催です」


 大きな声の実況者の声などロードの耳には届いていなかった。


(皆は何が狙いで見に来ているんだろう。やっぱりレース王狙いで見に来ているんだろうか)


「位置について――――」


 その時レースのスタッフさんが赤旗を振り上げた。


(優勝したら1500枚金貨ハズレと山分けしても750枚金貨、スワンの荷船の借金返済の少しは助けになるだろう)


「よーい――――」


(待て待てディホースにも何か分け前をやらないとなぁ)


「――――――ドン!!」


 赤旗を振り下ろして各選手たちは一斉に駆けだして行った。


(何がいいだろうか……?)


「――――ロード何してるスタートだぞ!?」


 ハズレの声にも耳が入っていないようだった。


(ニンジンがいいだろうか? それとも新しい豪華な鞍かな?)


「おおっとこれはどうしたことか!? ロード選手と馬ディホースがスタートしていないぞ」


 実況者の声など耳にも届かない。


「ヒヒ―ン!!」


その時、ディホースがロードを振り下ろす勢いで2足歩行のように前足を上げ、身体の状態を起き上がらせた。


「な、どうしたんだディホース!!」


「ヒヒ―ン!!」


「何ぃ!? もうレースは始まった!?」


 ロードは辺りを見ると出場者の姿がどこにもないことを知った。


「すぐに追いかけるぞディホース!!」


「ヒヒ―ン!!」


 ロードを乗せるディホースが駆けだした。


「ロード選手で遅れた!! どうしたどうした緊張でもしていたか? けどまだ巻き返せます。という訳で実況はまいど同じくヤマダシオの悪い虫バッグが多送りいたします」


 実況者バッグの声をようやく確認したロードは自身の置かれた立ち位置を知った。


「最下位か……」


 ロードのレースは最悪の展開からスタートした。

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