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第173話 優勝宣言

 ヤマダシオ街・馬乗レース会場。

 ロード一行はついに会場の受付けまで来ていた。荷船を隠者の指輪で隠し会場内へといざ出陣する。


「ではこちらに出場者の名前と出場する馬の蹄を押してもらいます」


「えっと名前はロード・ストンヒューっと、ディホースここにお前の烙印を……」


 紙の上にディホースは蹄の後を押し付ける。


「はい登録完了いたしました――それでは出場者控室が入って右側にありますのでそちらにお進みください」


「わかりました」


 ロードは無事登録し終えたようだ。


「えっとハズレ・マスカレードっと……」


 反対側の受付ではハズレは馬を1頭レンタルしようとしていた。


「では、レンタル馬をお選びいただくために入ってすぐのレンタル場へとこの紙を持ってお進みください」


 ハズレ担当の受付嬢が手による仕草で優しく導いてくれる。


「はい――じゃあスワン、ロードまた後で」


 受付を済ませたハズレは一足先に会場内へと入って行った。


「ハズレって、レンタルした馬じゃあ乗り慣れていないから1位は無理だって言ってなかったっけ?」


 怪訝な顔を浮かべるスワンだった。


「言ってたな……それよりこれを見て見ろ優勝賞金1500枚金貨だってさ」


「えっすっごい大金、これに優勝すれば失った60枚金貨も取り戻せるって訳ね!」


「それだけじゃない。スワンの荷船の借金にも宛てが得る」


「ロード……いいの? 借金返済の為にそんな大金使って」


「当たり前だ。何せ今はスワンとオレの飲料店なんだからな」


「ロード……ありがとう、わたしはその気持ちだけで十分だから」


「いいや勝って賞金を手に入れる。なぁディホース」


「ヒヒ―ン」


「なんて言ってるの?」


「1位を取るだって……」


「まぁ頑張ってロード、それからディホース!」


「ヒヒ―ン」


 そうこうしている間に時間は11時45分を回っていた。



 ▼ ▼ ▼



 ヤマダシオ街・馬乗レース会場選手控室。

 控室内には35頭くらいの馬とその選手たちが控えていた。

 皆ニンジンを分け与えたり、馬を撫でたり、蹄鉄の最終調節をしているようだった。


「参加者も結構いるもんだなぁ」


「ブルル」


「いや、少ない方がいいとかじゃなくて、1頭3000枚金貨の馬なのに結構飼っている人がいるんだなぁと思ってさ……」


 ロードは自分の握りしめた手を見るいつの間にか手汗を掻いていた。


「何か緊張して来たなディホース」


「ブルルル……」


「勝負に出たら緊張もなくなる? そういうものなのかあ?」


「ヒヒ―ン!!」


「よしよし分かった。弱気になってはいけないな。一旦静かにしてみようか」


「む? その鳴き声どこかで聞いたと思ったら、商人に安値で売り出した使えん馬ではないか?」


 突然、声を掛けて来たのは知らない男性だった。


「誰ですか? あなたは……」


「私の名も知らないとはこの大会も落ちぶれた物だな」


「オレはロード・ストンヒュ―さて名前を利かせてもらいましょうか?」


「フン見たところ育ちは良さそうだが、その汚れた格好で話しかけてくれるなよ」


「オレに話しかけて来たのはそっちだろう?」


「まぁ足が偶然治ってレース場に冷やかしだろう私の視界に入らず後ろの方で楽しむんだな」


「ちょっと待て、足が治ったってどうしてディホースがケガをしていたのか知っているのか?」


「知っているも何もレース前までその馬に乗り込んでいたのは私だ」


「えっ!?」


「ふん、まぁいい、どうやって足を治したかは知らんが、その役立たずの馬でどこまでできるか見せてもらおうか」


「ちょっと待て、足を折った原因はアンタなのか?」


「何だ? 何か言いたいことでもあるのか? このレース王エレガーノ・シャンスープの息子、デリンシャス・シャンスープに対して……」


「――!? レース王だと!?」


「どうやら相当な田舎から出て来たらしいな、ゆめゆめ忘れるな我が名前を今年こそ私が勝つ」


「今年こそ? じゃあ優勝した回数は……無いんだな」


「いい度胸だ下民の分際で、名前と顔は覚えたからな」


 ギラリとした目を向ける


「シャンスープ郷、あまり騒がないでいた抱きたい。馬たちのストレスになってしまう」


 横から割って入って来たのは長身のさわやかな男性だった。


「フン、スライダー家か。まぁいいだろう精々思い出作りに精を出すことだな」


「待て、優勝するのはオレたちだ」


「フン……」


 それだけ言うとデリンシャス・シャンスープはその場から退散した。


「災難だったね、まぁ気にせずレースをするといいよ」


「あのお名前は……」


「レイアル・スライダー今年も一番を取るレース王の名前さ」


「レース王……ぜひ握手させてください」


「構わないよ」


 二人は握手を交わした。そしてレイアルはディホースの方へ歩み寄って行く。


「それにしてもどこか気品のあるいい馬を持っているな。これはレースが楽しみだ」


「はい! ありがとうございます!」


「ではまたレース場にて……」


 レイアル・スライダーはその場から去って行った。


「お待たせロード」


 背後からハズレの声がした。


「馬借りて来たのか?」


「ああ、勝てるかはもう賭けになるけど……とりあえずキミに触発されて借りてみた。優勝できるといいんだが」


「たぶん優勝は厳しいな……」


 ロードがレイアル・スライダーの方を見ながらポツリと呟いた。

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