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第172話 ディホースの為だけのニンジン

 ヤマダシオ街。

 馬乗レース当日。

 ロードたち一行は街へと入って行くのであった。

 スワンはドルちゃんの上に跨り、ハズレは荷船の上でくつろぎ、その横をロードを乗せたディホースが通る。

 

「本当に何も食べなくていいの? いくらロードでも倒れちゃうんじゃない?」


 心配そうにスワンが尋ねて来た。


「しかし食べ物がないんだろう? 買いに行くのも飲食店で腹ごなしをしていると、レースのは間に合わないかもしれないし」


「じゃあ生のニンジンを食べればいいじゃないか……ディホース用に買って来たんだろう」


 ハズレが提案してみる。


「ディホース用のニンジンをオレが食べてどうするんだ……アレは全てディホースの為に買ったものだぞ?」


「スワンからは水を貰うのに自分で買ってきたディホース用のニンジンは食べないって矛盾していないか?」


 ハズレが反論して来る。


「ヒヒ―ン!!」


 ディホースも主を気遣う。


「僕のことはいいですから食べてくださいか……わかった食べるよハズレ荷船からニンジンを取り出してくれ」


「わかったよ。えっとどこにいったっけ……」


 ハズレは荷船内にある食糧庫を物色し始める。


 ロードはこの時、直感的にいやな予感がした。


 ニンジンを食べたしまえばロードの体力は多少なりとも回復するだろう。しかしロードは感じ取ってしまった。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 それはまだディホースを買ったばかりの頃だった。

 一人で八百屋の出店に向かうロードそこに用があった。


「おじさんそこのニンジンあるだけください」


「何だい若いのキミもレースに出場するのかい?」


「はい」


「じゃあ馬を大切にしなよ」


「はい……大切に育てて見せます」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 荷船内を散策していたハズレがニンジンを片手に戻って来た。


「よし見つかった。ホラ一本だけ食べろ」


 ロードがニンジンを手にしようとした瞬間だった――ハズレから受け取るはずのニンジンがロードの手では掴めなかった。


「何だどうした!? 身体が光り輝いているぞ?」


「そうか……ディホース用に買ったんだった。その道は曲げられないってことか」


「ん? もしかして秘宝玉に見透かされているんじゃない? この行動はいけませんよ~~とか……」


 スワンが分析する。


「そんな効果も秘宝玉ってのにはあるのか?」


 ハズレが不思議そうに手に持ったニンジンを見た。


「とにかく食べられないんだな……ならばディホースに食べさせる場合はどうなる?」


 ロードはハズレからニンジンを掴むことが出来た。その手でディホースの顔の方にニンジンを持って行く。


「ほら、ディホースニンジンだぞ食べないか?」


「ヒヒ―ン」


「オレはどうやら食べられそうにないんだ。遠慮するなよ……」


「ヒヒ―ン、シャキシャキ……」


 ロードのニンジンを遠慮なく食べていくディホース。


「とにかくぶっ倒れるんじゃないぞ……途中で落馬したら大怪我だからな」


「わかってる。ちゃんと意識はあるよ。それよりニンジンがダメならおいしい水の一杯でもくれないか?」


「スワンいいよな。あげても……」


「いいよ」


 スワンの了解を貰ったハズレは急いで荷船の奥へ行き、おいしい水を用意する。


「ほら水だ、また欲しければ言ってくれ……」


「ありがとうハズレ、スワン」


「何言ってるの? ただじゃないんだから、その分今度は一生懸命働いてもらうんだから」


「わかった……」


 そうして甘くておいしい水がロードの口から喉にかけて滑るように降りていく。


「さぁて馬乗レース会場が見えて来たぞ」


 ハズレが興奮を抑えきれずに言って来た。


「どの辺りが入り口なの、ハズレ分かる?」


 先頭を行くのはいいが、目的地である会場受付所へどう行けばいいのか迷っていたスワンだった。


「そのまま真っ直ぐだ大きな門が見えてくるからそこが受付になっている」


「ハズレは見に来たことがあるのか?」


「まぁな、よし! せっかくだしオレも参加しようかなぁ」


 ハズレはそんなことを息巻いていた。


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