第168話 ディホースと競争してみた
ロードはディホースを全速力で追いかけていた。
(速い速すぎるこれがレース用に調整された馬か)
(少しづつだけど段々と引き離されているのがわかる)
(しかしどうして逃げるんだろう、オレたちが何したって言うんだ?)
ディホースの進む道に川が見えて来た。
(そうか喉が渇いていたんだな。逃げていたんじゃなくて水を飲みに来ただけとか……)
(何を考えているんだ。オレは目の前で水を持って来る相談をスワンとしていたじゃないか)
(何にしても川だ。逃げるにしても時間が掛かる。よしここで一気に距離の差を縮める)
ディホースの足は川の前で止まるか、川にはまるかと見ていたのだが、なんとディホースは川をその脚力で文字通り飛び越えて行った。
(な、何ぃ!? 10メートルあるであろう川の幅を跳んでいったぞ!)
(今度はオレが川にはまる番か、仕方がないここは以前からストンヒュー王国で培ってきた脚力でオレも跳び越える)
(ここで振りきれると思うなよディホース、オレだって毎日ジョギングしていたんだからなそう簡単には撒かれないさ)
ロードは川の幅、10メートルを跳び越えて行った。
(ふぅ~~ギリギリクリアだ。さて追いかけっこを再開しようか)
(しかしどこに向かっているんだ。疲れも全く見えないしこのままではスワンたちと離れ離れになってしまう)
(故郷に向かっているって線はないだろうか? いや、あの走りは違う全速力だ。ここから逃げ出そうと全速力で逃げている)
森の木々を避けながらの追走は夕暮れまで続いていた。
(くっそ~~完全に夕方になってしまったじゃないか。このままでは体力の限界でへばってしまう)
(溜めておいた足だったが追いつくにはここしかない。このまま引き離されると完全に夜になって見失ってしまう)
(そうはさせるものか。オレの全力の走りはこんなものじゃないんだぞ)
その時、ロードは溜めていた力を一気に解放させた。それはあるいは道の秘宝玉の力だったのかもしれない。
「行くぞぉ!! ディホース!!」
「ヒヒ―ン!!」
足を溜めていたのはロードだけではなかった。ディホースも同じだった。
「待て、ディホースどうして逃げるんだ! ちゃんと話をしよう! これでも動物に伝わるらしいゼンワ語をマスターしている! お前の話声は聞けないがこちらから問うのことは出来るんだ!」
ロードの話し声に耳を傾けたのかディホースの疾走が少し緩やかになる。
「何か文句があったり、不満があるなら聞こう! こう見えても相談に乗るのはうまいと思っているんだ!」
少し走りが緩やかになったところで、ディホースのスピードがどんどん落ちているとこから見ると疲れがたまって来たのか……ロードの話に耳を向けようとしているのか分からない。
「スピードが落ちているぞ! もう限界か!?」
その声は届いた。ディホースの走りが元あったスピードに戻ったようだった。そこからするとロードの話を聞こうとしたわけではなく。ただ疲れが見えて来ただけだったと知る。
「それでいい! 全力で走れ! オレが必ず追いついて見せるから!」
いつの間にかロードとディホースは勝負をしていた。
「この道を全力で走る!」
その瞬間ロードの身体能力は脳にかかったリミッターを外すように速さがディホースの倍以上の速さで追いかけて行った。ダダダダダダダダダダだとそして――!
「射程圏内もらった!」
その時、ロードはディホースの手綱を握りしめ、乗り上がった。
「よしよし追いついたぞ勝負はオレの勝ちだ! さぁスワンたちの元へ戻ってもらおうか!」
しかし、ディホースという馬は暴れてロードを地面に振り落とした。
「ディホース……」
そのディホースが走り逃げるさまをロードは見守っていた。