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第167話 黒馬ディホース

 ロードにより右前足の完治した馬はディホースと名付けられた。


「ヒヒ―ン」


 自分の足が完治したか確かめるようにトントンと右前足の音を鳴らす。


「ロード! ハイリンゴジュースを作って来た!」


 スワンがジュースを作って戻って来た。


「あ、ありがとう……ゴクゴク」


 すぐさま飲み干しただいぶ疲れていたのだろう。


「ハズレ、馬乗レースにはどうやったら出られるんだ?」


「ん? まずは会場に行って申し込みをしないとそれから出場者と馬を登録して、ってまさか出場する気かい!?」


「そのつもりだ。せっかく馬を買ったんだ。レースでその速さを試してみたい」


 フラフラだったロードは、リンゴジュースで力をある程度取り戻し、しっかりと二本の足で立ち上がった。


「レースに出られるの? さっきまで足の骨が折れていたんでしょう? ロードあなた何をしたの?」


 スワンが心配そうに聞いてくる。


「道の秘宝玉の力を使った。オレの生命力を分け与えて治療したんだ」


「前に言っていた、アカっていう竜を生かした力の事?」


「ああ、けどそれだけじゃない。オレは負ってしまった傷を治癒する力を持っているらしいんだ。だから試しにやってみたら成功した」


「秘宝玉だって? ロード、キミは秘宝玉所有者だったのか?」


「秘宝玉を知っているのかハズレ」


「まぁ噂くらいしか聞いたことが無いが……」


「スワン、とにかく水をくんで来よう。ディホースを少しでも回復させないと……ハズレは馬の様子を見ていてくれ」


 スワンと共に移動しようとしたが、


「レースに出すか……見たところ蹄に付いた蹄鉄と、手綱が掛けられているところを見ると、レース用に調整した馬に見える」


「それじゃあレースに出しても問題はなさそうだな」


「あの格安だぞ、足が折れた程度で60枚金貨で買えたのがそもそもおかしい。何か裏があるはずだ」


「じゃあ馬に聞いてみよう」


 仕方なくロードが手綱を握った瞬間だった。


「――――ヒヒーン!?」


 その時ディホースと名付けた馬がロードとハズレをすり抜けてそのまま籠の中から逃げだした。ロードの手からあっさりと手綱は滑り離された。


「……アレ?」


 ロードがポカーンとしていたが、


「――おい馬が逃げたぞ追いかけろ!」


 ハズレがロードの目を覚まさせた。


「――――――っ!? 逃げるならせめてレース後にしてくれ!」


 ロードは走ってディホースを追いかけて行った。


「スワン、オレたちは水をくんで来よう彼ならきっと戻ってくる」


「いいけど、あの馬きっと逃げられるよ」


「さーーて普通の人間が相手なら逃げられるだろうさ……けど、秘宝玉所有者ならあるいは追いつけるかもしれない」


「まぁロードの身体能力はずば抜けてるしね。じゃあ一緒に水汲みに行く」


「ああ、疲れ果てて帰って来たアイツらの為にもな」


 スワンは辺りを見た。辺りは一面広々とした丘の上だった。その丘には馬に乗った人たちが複数人いた。彼らは2日後の馬乗レースの出場者で今馬の調整をしているところなのだろう。なので荷船を置いて行っても何かを盗まれる心配はないと見た。


「ドルちゃん。わたしたち水を汲みに行ってくるから荷物番お願いね」


 それから一応としてドルちゃんを見張りにつけた。スワンとハズレはバケツを持って水汲みに行ってくる。



 ▼ ▼ ▼



 ヤマダシオ・近隣の森


「ヒヒーン」


 さすがに馬の速さを追い越せる力はロードにはなかった。


(速い速すぎる。故郷でも馬さん達とレースしたことはあったがここまで速くはなかった)

(これがレース用に調整された馬なのか)

(体力もないだろうに良く走る)

(まぁオレも完全に体力が回復したわけではないからお互い様か)


 走っているディホースをそれでもロードは、その姿をギリギリ見失わないでいた。


(いざとなったらアカに捕まえてみるよう頼んでみるか?)

(いや、そんな捕まえ方では、馬を売り出していた商人たちと同じになってしまうじゃないか)

(ここはあくまで正々堂々、走りだけで勝負に挑む)

(たとえ見失っても、足場には蹄鉄の跡がある必ず自力で捕まえてやるからな覚悟しろよ、ディホース)


 ロードはその黒馬との競争をどこか楽しんでいた。

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